?話✧猫械




その感覚に困惑していた直後、パッと目の前の景色が変わったのだ。そこは彼らにとっては見慣れない景色。コンクリートの地面と、コンクリートの塀。見たこともない素材で作られた家たち。

今更ながら、猫の鳴き声では伝わるものも伝わらないので、以降は翻訳していきます。

『な、なんだここは!!??』

一番先に声を上げたのは、青のマントをまとった猫だった。その言葉に他の猫たちも次々と反応する。

『ボクたちにとっては未来やけど、さっきの時代からしたら過去ってことやろ?ややこしぃなぁ……

猫達は辺りをキョロキョロと見渡していた。そもそも平和を壊すと言っても何をすればいいのか12時間で何ができるのか。猫達は頭をひねらせた。

『そうだ、みなさん自己紹介をしませんか?ここまで来てまだでしたよね。』

先ほどから毛並みを気にしていた猫が言う。その言葉に他の猫たちもうなずき、同意した。

『ならまずは俺から名乗ろう!俺はグラ猫だ!』
青のマントを付けた猫が名乗り、それに続いて黒い毛並みの猫が『樊凌猫』と名乗る。そこから順に『ラート猫』『フィリップ猫』『カラ猫』『ルフレ猫』『白浪猫』『シア猫』と名乗っていった。

自己紹介を終えた彼らは、まずはこの時代を探索することにした。中世や近代の記憶が色濃い猫械達にとって、この時代の普通の町並みはなんとも不思議なものだった。

空におかしな糸が張ってあるぞ』

『変な緑の網もあります。このあたりに獣でも出るんですかね

?地面の下から水がずっと流れている地下水にしてはどこにもあるな

そううにゃうにゃと不思議そうにつぶやく他の猫たちに、白浪猫とシア猫がどこまで説明をするか考えこんでいた。

そんなことを考えながら歩いて行くが、住宅街らしきこの町に壊せそうな物は何もなく、手がかりもない。その上、人すらもいなかった。

『うーん、それにしてもだれもいませんね。これじゃ壊せる物も壊せませんよ。』

『あ、あの家、窓が開いてますよ』

そう言ってシア猫は一つの家に視線を向ける。それにつられて他の猫たちもその家に目線を向けた。

『おぉ!それじゃあまずはあの家に侵入するか。このまま歩いていても何も見つかりそうにないしな。』

『せや!あの家を荒らせばええんちゃう?どこの平和を壊せとまでは言われとらんし

その樊凌猫の言葉に他の猫たちもおぉ!と感嘆の声をあげた。

そして猫たちはその家の門から敷地内に侵入し、窓の近くの木に登る。木の上から窓をのぞけば、ちょうど着地のクッションになりそうなベッドが見えた。

『あのベッドに着地すれば良いな。』

『よし!それじゃ俺から行こう!』

『ちょ、まだ中が安全か確認が

シア猫がグラ猫をとめる隙もなく、彼は大ジャンプをしてそのベッドに着地する。そのベッドには人間が寝ていたが、ずいぶんと爆睡しているらしく、グラ猫がちょんちょんと頬に触れても眉を顰めるだけで起きる気配はない。

起きないことを確認した彼は窓の外の猫たちに合図を出した。その合図を受け、他の猫たちも次々にベッドに着地していく。

全員が侵入した時、比較的余裕のあったそのベッドの隙間はすでになくなっていた。

部屋を見渡し、壊せる物がないか見渡す猫達。

このベッド、やけに寝心地が良いですね

フィリップ猫がベッドをふみふみとしながらつぶやく。彼の言葉に他の猫たちも「確かに」とそのベッドの感触を確かめた。現代の寝具は彼らが知っているものより遥かに寝心地がよく、手触りも心地よい。

試しにそのベッドの上で香箱座りをすれば、体が温かい綿に包まれるような、この上ない癒やしに包まれた。次第に遠のく意識。

白浪猫ははっと目を開け、今にも寝そうな猫たちを揺らして起こした。

『っ、まずいな罠かと疑うほど寝心地が良い寝台だ

カラ猫は今にも閉じそうな目をしばしばと瞬きしながら話す。ルフレ猫は、くわっとあくびをし、前足で毛繕いをした。

他の猫たちが眠い目をこすりながらどうにか起きる中、シア猫だけは丸まって寝たまま起きる気配がない。

『シア猫、シア猫、ほら起きろ。』

『ちょっと、何爆睡してるんですか!』

グラ猫と白浪猫がいくら揺さぶっても、噛みついても全く起きる気配はなく、心地よさそうな寝息を立てていた。

『全然起きる気配がありませんね

困ったようにため息をつく白浪猫の隣で、フィリップ猫がベッドに座り始める。

『フィ、フィリップ猫殿まで!?お、起きてください!』

『もぉ別にいいじゃないですか。どうせシア猫さんは起きなさそうだしこうも眠いと、何も、でき、ま、せん

そう言いながら彼は完全に目をつむってしまう。他の猫に協力を求めようと振り向いたが、すでに寝ている猫や、かろうじて起きているもののこくこくとしている猫ばかりだった。

白浪猫が困ったようにキョロキョロしていると、樊凌猫が彼の肩に手をたたく。

『休むことも、大事やで』

そうとだけ言って彼もまたベッドの上で丸まってしまった。みんな寝てしまい、心地よさそうな寝息が聞こえてくる。

『っ、も、もぉ、どうなっても知りませんからね!』

そうつぶやきながら、彼もベッドの上で丸くなった。