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澄香
2025-03-31 18:26:44
9391文字
Public
ロマサガ2
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ロマサガ2】あるモラトリアムの話
弊バレンヌ帝国最後の皇帝の即位までと、その仲間たちの話。
――日常と呼べた日々。
1
2
3
4
ある友人の話
……
かつてピーター帝と共に地上戦艦に踏み込んだアガタ王女は、その内装の再現にこだわった。
完全管理された光源。観光者に解放されたスペースには、術仕掛けの光源が最低限。
天井では飾りでしかない機構が、僅かに届く明りを照りかえしている。
けれど簒奪した薬草の栽培スペースは当時の歴史と研究の展示場に。
その精製とさらなる効率化の研究がされていただろう場所は休憩所や体験コーナーに。
エレベーターの行き先は、周囲を一望できる展望台へ。
「
……
とゆーわけで、みんなおもったよりふねっぽくないってゆーけどこれでただしーのだ」
そして結構人がごったがえしている。
全部見越してやったんだとしたら本で読んだより相当な敏腕だよな
……
。
「そしてここのミルクハーブティーがおいしいのだ」
「確かに。後コレ、牛乳じゃないな」
「なかなかしたがこえてらっしゃる」
使節の人の案内だからお仕事。二人だからペア割と言い張るこの子も、継いだ名に負けていない。
浮いた観光費は使いどころが見つかるかな。
「ねえ、しゃーるふぃってサジ兄のおともだちなんだよね?」
「アイツから聞いた?」
「まけられないひとがいるってきーた。で、おとーさんにおしえてもらった」
……
負けられない、ねえ。
多分意図的に避けられてるんだろうなとは思うが、コウメイと違って俺にそこをほじくり返す気は無い。
「サジ兄のすきなもの、しってる?」
「アップルパイとか」
いやアレもレスカが山ほど作って食べてただけか。
「たべものじゃなくて、その
……
もうすぐしせつのひとといっしょにいっちゃうから」
ああ、そういう
……
。
本は
……
かさばるか。好きなモノ、出て来ないな
……
嫌いなモノは直ぐなんだが。
「お別れが寂しいから、ってことだよな?」
「うん」
「じゃあ
……
組紐のバングルとかいいんじゃないか」
丁度、染め物の体験コーナーもあった。
「なにいろがいーかな?」
「青。アガタ王女の色で、君の色」
「わぁ
……
!」
そうして出来上がったバングルは二つ。ただ
……
。
「君の手には少し大きくないか?」
「こっちはナディ姉にわたすの」
「ナディ?」
「イーリスのナディールお姉ちゃん、しらない?」
「あー
……
さっきアイツが庇ってたな」
「あばろんからいっしょにきたの、しらない?」
「うん。知らない」
「ふたりともじれったいからぺあるっくしてやるんだ」
うーん、ませてるで済ませていいのか、これ?
次は市場の視察
……
という名の買い食い。
「アンタ、今日来るっていう使節団の人?」
「はい、所用で俺達だけ一足先に」
観光にも力を入れているだけにさすが賑やかに人が行きかうし
……
。
「姫様、また夕食入らなくなっても知りませんよー?」
「ちゃんとはらはちぶんめですませるのだ」
「はいはい」
潮風よりも魚や貝類の焼けるいい匂いがする。
あ、ホタテのバター焼き美味しい。
さっきの資料館でもそうだったが、城主の娘が見知らぬ男とうろついてる割にあまり人の視線が集まらないな。
「いつも誰かと?」
「サジ兄がくるまえはクリス兄ときてた」
「サジが来てからはサジがってことか」
「アク兄やケチュ兄の日もあるぞ。だからしゃーるふぃはうんがいいんだ」
「はは、そうらしい」
周りの視線も皆無ってわけじゃない。またやってると言う微笑ましいものはちらほらと。
ついでに言えば「おかしなまねをしたら海に投げ込むぞ」というようなのもいくらか。
「
……
ねえ、しゃーるふぃ」
「ん?」
「サジ兄とおはなし、しなくてよかったの?」
「そうだな、ちゃんと友人を作って、楽しくやってるみたいだったからな」
「たのしくはやってはないぞ」
……
え?
「おとーさんはいつもひっしすぎるっていってた」
「
……
」
答えを、返しあぐねた。
その間に、街がにわかに騒がしくなる。
「げ、おかーさんかえってきた! しゃーるふぃちょっとこい!」
少なくとも向こうからは見えないだろう位置まで引っ張られる。
「つかれてねたことにするぞ!」
「仰せのままに」
抱え上げるまでほぼ衆人環視で誰も何も言わないあたり、いつものことなんだろうな。
さて、これから誤魔化しに行くのはこれだけ聡明な女児を産み育てた母君。
「ごめんなさいね、うちの子に付き合ってもらっちゃって」
「いえ、俺も十二分に楽しかったので」
今代フォーファー城主、ソフィア二世を騙し通せるはずなどなかったのだが。
「あひあもうひあわへるあらぇ~」
「ほんともう、誰に似たのかしらね~?」
この子が頬つねられる程度で懲りるワケ無いよなあ
……
。
城主と一緒にアバロンの使節団もフォーファーに着いて
……
翌日は、あいにくの雨だった。
「で、結局サジには昨日あのまま逃げられたと」
「誰かさんが職務放棄しちゃったせいだと思うんですけどねーぇ?」
「俺は本人の意思を尊重したまでだが?」
俺とコウメイは城内の一室に滞在中。膝上にアガタちゃんを添えて。
……
向かいのソファには、モウトクさんもいる。
「わへーのししゃならかってでてやるぞ?」
「別にサジ君と喧嘩はしてませんよ」
「しゃーるふぃ、ほんとか?」
「たしかに喧嘩はしてない」
「じゃーほかのだ。なんだ?」
……
アイツがそんなに分かりやすい反応をしたのか、それともこの子が聡いのか。
真っすぐに、こっちを見る目を逸らしてくれない。
「怖い目に、遭わせた」
間違いなく、契機になった件は。
「じゃーだいじょーぶだ。サジ兄はすごいぞ、ゆみもじゅつもいちばんだ」
「その一番を、この空模様に城内で見かけないんですよねぇ」
「ほほーう
……
」
なんか膝上から飛び出しそうだなと思ったあたりで、
「アガタ」
父君から待ったがかかる。
「
……
ふくざつ?」
「そう、複雑」
あ、今度はしばらく俺の上からどかなくなったな。膝の上から「逃がさん」って気迫を感じる。
「コウメイ、お前には思い当たる節とかあったりしないかい?」
「会うべき理由なら、いくらでもあるというのがなんとも」
「じゃあ、シアルフィ君は?」
「
……
俺、ですか?」
今も弓と術を磨いてるなら、前線を視野にというのは、わからなくもない。
俺だっていずれそこに行くだろうから、顔を合わせて損は無いというのは理解できる。
あえて、不合理な行動を取る理由
……
。
「無い
……
ですね」
ああでも「負けられない」って言われてたのか。相手はコウメイじゃないだろうしな。
意識はされているけど、露骨に会うのを避けられている、か
……
。
「本当に?」
「ええ
……
」
解らないが、無理に聞く気は
……
やっぱり無い。
膝の上の子が、上手くやっていけてることを十二分に証明してくれていたし。
「じゃあ、この話はこれで終いにしよう」
「サジ兄にききにいっちゃだめ?」
「駄ぁ目。シアルフィ君が聞くか、サジ君が話すかしないとね」
アガタちゃんが本当に大人しい。御し方を分かってるのは、さすが親。
「しゃーるふぃ、かいしょーみせないといけないっぽいぞ」
いやその語彙はどこから来るんだ。
「代わりに違う話をしよう。クラックスさんは知ってるよね?」
あ、まだサジ絡みの話だこれ。
「アバロンに戻ったらちょっと謝っておいて欲しいんだ」
「へ?」
「どうも彼、ワーカーホリックの気があるようでね」
「わかるぅー」
五歳児が認めるワーホリ
……
。
「やる事を絞れば少しは休息になるって思惑もあったそうなんだけど
……
」
「駄目だったんですね」
「当初は天術と治癒術に絞る予定だったんだ」
カンバーランドで術士が学ぶのは、そうだよな。
契機がアレだし、衛生兵を目指していたというのも考えられるが
……
。
「ステップとサバンナからの留学生達と意気投合してしまってね」
「目に浮かびます」
元々ある戦闘力を捨てる理由も無い。遠距離手段なら特に矛盾は
……
。
「そこからどう話が転んだのか、棍棒術まで妻のお墨付き貰うぐらいに頑張っちゃって」
「いやアイツ何処目指してるんですか?」
口に出た。ひょっとして陛下の供回りでも狙ってる?
「いやー教えた傍から伸びてくからついー」
「
……
アガタちゃん」
「なあに?」
「君のお父さん、正真正銘コウメイの兄だわ」
てへ、みたいな顔で誤魔化すあたり。
「やだ! しゃーるふぃがいい!」
「叔父さん嫉妬に狂っていいですかね?」
……
フォーファーを発つ頃には、雨は嘘のように晴れ上がっていた。
フィッシャー帝の活躍で難所を難所たらしめる理由が解明されたコムルーン海峡。
魔物への対策諸々もあって、船団で行くのが鉄則になっている。
俺達が乗るのは外周寄りを担当する船の一つ。
船上から、アガタちゃんがサジに何か、恐らくあのバングルを渡しているのが見える。
すぐに離れたあたり、本当に先日の話を掘り起こしたりはしていないらしい。
昨日の今日でそうそう接触の機会があるなんて思ってはいない。
……
思って、いなかった。
「いやお前、別の船、乗ったよな
……
?」
「同僚に投げ込まれました」
「えーっと、追いかけてきました」
なんか、イーリスの子と一緒に、サジ、いるし。
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