澄香
2025-03-31 18:26:44
9391文字
Public ロマサガ2
 

ロマサガ2】あるモラトリアムの話

弊バレンヌ帝国最後の皇帝の即位までと、その仲間たちの話。

――日常と呼べた日々。


ある再会の話


 生まれて初めての船旅は……
「ふおぇえぇえぇえぇ~……
 コウメイの介護に費やされる事となった。旅情もへったくれもない。
「きーつーいーでーすー」
「あーはいはい。着いたら酔い止め買おうなー」
 ほんのり酸っぱい匂いさせながら縋ってくるな。
 同じ船に陛下が乗ってるらしいが正直それどころではない。
 次の道程コムルーン海峡なんだが大丈夫かこれ?

 幸か不幸か、ダグラスの港につく頃には落ち着いて来たが。

 カンバーランド、医療と治癒術と、そして何より、物語の国。
 併合の切っ掛けとなった事件を元に書かれた、この国の名を冠した物語の本は妹とよく取り合った。
『伝説の軍師シゲン』が草原に浮かべた戦艦の物語は、今も新しい物語が綴られている。
 もっとも、後者が実はオトリでハリボテだったとなると、結構知られてないと教授がぼやいてた。
 俺だってそんな物語の舞台に触れたり史跡巡りに興味が無いわけじゃない。

 が……今後の予定がここから少し慌ただしい。

 港の先に広がる市場も物語の一幕に書かれた広場も通り過ぎ、ダグラスを出て東へ。
 帝国からの使節が来たことはは、もう『先方』に知れているだろうからと。
 ……完全に単独行動なんだがまあコウメイだし。使節の一員など名目もいいとこだ。
 この国は長城を挟んだ向こう、ノーマッドとの交流も深い。
 お手軽に馬を借りてひとっ走りでいけるのはいい所だよな。

「さすがに今回は根回しの一つもしてるよな?」
「ないって言ったら?」
「野営と腕っぷしで路銀を稼ぐのも悪くはないが?」
 賭試合とかはむしろやってみたい。

 東の玄関口、フォーファーへたどり着けたのは、まだ昼時と言っていい時間だった。
 この国を医療の国たらしめた、薬草学を中心とした研究機関を抱える学術都市。
 その最初の研究棟は、地上戦艦の技術を取り込んだ事に肖ってか、船の内装を模した作りになっているとか。

 そう言った名所を素通りし、真っすぐフォーファー城へ。
 綺麗に整えられた花壇と生垣の先に、最初のお目当てはいた。
「モウトク兄さーん」
「やあ、お早いお着きだ」
 肩で切りそろえた髪は昔のコウメイを思わせるが、少しばかり頬がこけていて正直あまり似て無い。
 コウメイと同じく目の色も分からないぐらい濃い、けれど少しデザインの違う色眼鏡。
 こっちは元から目が光に過敏なのに対する実用品だ。
「で、『あの子』は?」
「そろそろ来るよ」
「じゃあさっさと隠れましょう!」

 訓練所に使われてる広場の出口を見張れる場所に身を潜め『標的』を待つ。
 最初に出て来たのは有翼人、イーリスの少女……いやイーリスって女性しかいないか。

 その後に続いて……サジタリウスが出て来た。
 背は伸びてるし、少しやつれたように見えたが、昔の面影は僅……
「足がらめっ!」
「ぴゃーっ!?」
 めっちゃあった。
 そしてイーリスの子を守ろうと突き飛ばしたはずみでスッ転んで足のみならず全身ツタに絡め取られてる。
「んっふっふっふ~サジタリウス君久しぶりぃ~」
 今回の『計画』を聞いた時は、さすがに根に持ちすぎではと思ったが……

「え、誰……?」
「え……?」
「ぶふっ」
 いかん、吹いた。いや、数年挟んでその頭なってたら解らんよな。
「え……シア……ってコレコウメイ!?」
「コレとはなんですかこれとは」
「ちょっ、やめっ、あーもーなにこれー!?」
「ぷ……くふふっ……!」
 駄目だ変なツボ入った。コウメイはコウメイで足がらめの術続行しだしたし。
 サジは気付いて無いだろうけどもがいた結果大変な事なってる。
 あーいかん。思考を逸らそうとおそらく友人だろうイーリスの子の方を見る。
「サジ君結構細い……
 ……なんか猛禽の目になってきてないか?
 周りの人達は……あー、なんか関わらない方が良いみたいな顔されてる。

 そんな周囲に紛れて、全力疾走で接近する「それ」に気付いた。
 標的はコウメイ。速度と、体躯と、想定しうる最大ダメージを考えれば……

 エアスクリーンかけとけばいいか。

「おりゃーっ!」
「ほにゃあっ!?」
 見た目4、5歳の少女による飛び蹴りがコウメイの膝裏にクリーンヒットして生垣に突っ込む。
「確保ー!!」
 そこへ物陰から見ていたであろう、衣服を見るにノーマッドの少女が抑え込みにかかる。
「ちょ、え、あれ、シアさん!?」
「いやー今のは10:0でお前が悪いわー」
「君一応護衛で来てるんですけどー!?」
 ノーマッドの子がこっち睨んだけど手を出さないと解ってかコウメイの確保に注力。
 さっきイイ蹴り入れて来た子はというと……
「しょくむたいまーん!!」
 モウトクさんの裾を引っ張って猛抗議してた。
 今サジを助け起こしてるイーリスの子といい、サジはここで上手くやってるらしい。
 今度はコウメイが足がらめ喰らって全身ぐるぐる巻きなってるあたりでモウトクさんが動いた。

「ノーズハトゥ、そろそろ放してあげなさい」
「モウトク様、コレ、お知り合いか何かで?」
「それね、僕の弟。だからアガタ、お前の叔父さんなんだよ?」
「やだ! こっちがいい!!」
 それでアガタ少女が引っ張って来るのが俺の裾。
 とりあえずその子の前に膝を付いて軽く、謝意を示す。
「この度はうちの連れが、とんだ失礼を」
「かんとくふゆきとどき」
 うわ容赦無い。
「返す言葉もございません」
「なかなかしゅしょーなやつだ。いまならしりょーかんしさつのえすこーとでかんべんしてやろう」
「ははー」
「こらアガタ、お兄ちゃんに職務放棄させちゃダメだよ」
「いえ、大丈夫です。あっちはあっちで上手くやってるようですし……
 見たら足がらめ対策かイーリスの子がサジ抱えて軽く浮いてるし、コウメイは未だに解放されてない。
「俺もアイツの予定に付き合ってロクに観光もできなかったので」
「シアの裏切り者ー!」
「いや絶対こっちの方が面白いし? お前はもう目的果たしたよな?」
「初対面の姪っ子にインセンティブ全部もってかれてるー!」
 サジ始め周りの連中も止めようとはしてないし。

「おまえ、はんせーのいろないからついかみっしょんな」
「謹んでお受けしましょう」