ゑ/圓堂
2025-03-27 00:30:20
6967文字
Public 月詠サーバー(満月本丸)
 

【刀剣乱舞】笹さに♂Twitterログ02【笹貫×創作男審神者】

Twitterに文庫ページメーカーで上げた小話まとめ笹みち編。2024年に上げたものをまとめました。
姫鶴福島笹貫刀帳NOデー記念小話『秘密よりも甘い明日のために』
3/22みちさん誕生日小話『TIPSY LIPS』
センチメンタルお月見小話『BLUESY MOON』
ポッキープリッツの日小話『満月本丸、11月11日の昼下がり。』
の四本立てです。
『秘密よりも甘い明日のために』だけみちさん不在で刀剣男士のみのお話となってます。


【満月本丸、11月11日の昼下がり。】

みちさん、と呼ぶ声と共に障子戸が開いて、僕は帳簿をつける手を止めた。
どうしたの、と声を掛ける間もなく、声の主である笹貫が無遠慮に部屋へと上がり込んできて、文机に向かう僕の傍らにぺたりと座り込んだ。

「みちさん、はい。咥えて」

笹貫はいつも通りのしたり顔のような笑みを浮かべて、僕に向けて細長い棒状の何かを差し出す。
老眼鏡を外して見てみると、それは現世でよく見かけた、細長いビスケットにチョコレートを薄くコーティングしたお菓子であった。

久し振りに見るなぁ、という呑気な感想が、まず僕の胸の内に湧いてきた。
それから笹貫の台詞と今日の日付を重ね合わせ、やっと僕の脳は教員時代に知ったとある風習へと辿り着いた。これから待ち受ける行為に、勝手に身体は反応して顔面の温度を上げる。

「えぇー、嫌だよ。恥ずかしい」

僕は頭を振って、そのまま笹貫から顔を逸らした。
しかし僕には、笹貫が今どんな顔をしていて、この後どんな切り返しがくるのか、彼を見ずとも手に取るように解る。解ってしまう。

「オレしか居ないのに?」

概ね予想通りの反応だ。笹貫がじりじりと距離を詰めてくる気配を感じながら、僕は僕の中の羞恥心と彼への愛情との間で暫し葛藤する。
やがて散々逡巡する僕の真横にぺたりと張り付き、それでも大人しく僕の返答を待つ笹貫のある種のいじましさに負け、僕は観念して彼の手からお菓子を受け取った。
なるべく心を無にして持ち手の部分を咥え、きつく目を閉じる。
笹貫は何の断りもなく、先端から少しずつお菓子を齧り始めた。彼が歯を立て、ビスケットが折れる振動だけが伝わってくるのが、より僕の羞恥を煽る。


笹貫の呼吸が顔に触れる。そろそろ、近い。


そう意識した瞬間限界を迎えた僕は、自ら口を開けて前のめりになり、彼の唇に自分のそれをぶつけた。
柔らかい感触と、ぽき、とお菓子の折れる感覚がした。

「はい!おしまい!」

ほんの少しチョコレートの風味を感じるビスケットを咀嚼しながら、僕は身体ごと笹貫から顔を逸らした。
それから暫くして、彼が余りに無反応なことに疑念を抱き、僕はちらりと顔だけを戻す——のと、彼が僕へと飛び付いて畳へと押し倒すのは、ほぼ同時の出来事であった。

「ちょっと!何なのもう!」
「くっそ~~、負けた……

下から仰ぎ見た笹貫の情けない赤面に、僕は先程までの恥じらいを忘れて声を上げて笑った。そして彼の広く逞しい背中に腕を回して抱き締める。
僕は小さく愛を呟く笹貫の声に応えながら、年に一度なら悪くない——などと、呆れるほど容易く長年関わることを避けてきた風習を、心の中に受け入れたのだった。