ゑ/圓堂
2025-03-27 00:30:20
6967文字
Public 月詠サーバー(満月本丸)
 

【刀剣乱舞】笹さに♂Twitterログ02【笹貫×創作男審神者】

Twitterに文庫ページメーカーで上げた小話まとめ笹みち編。2024年に上げたものをまとめました。
姫鶴福島笹貫刀帳NOデー記念小話『秘密よりも甘い明日のために』
3/22みちさん誕生日小話『TIPSY LIPS』
センチメンタルお月見小話『BLUESY MOON』
ポッキープリッツの日小話『満月本丸、11月11日の昼下がり。』
の四本立てです。
『秘密よりも甘い明日のために』だけみちさん不在で刀剣男士のみのお話となってます。


【TIPSY LIPS】

賑やかな宴を終えて戻ってきた自室は、やけに静かだ。
本格的に春を迎えたとはいえ夜はまだ肌寒さが目立つ。しかし今日の僕はほんの少しとはいえアルコールを摂取しているため、やや汗ばみそうなほどに身体が火照っている。自他共に認める相当な下戸ではあるが、お酒の味や香りはどちらかといえば好きな方だ。出来れば飲めるようになりたいのだが、度数の低いカクテル一口でこの有様だ。先は随分と長いだろう。

心地好い酒気に身を委ねながら、正座する僕の膝に頭を預け、背を向けて丸まっている笹貫の髪を梳く。部屋に戻った僕の少し後にここへやって来てから、ずっとこの状態だ。決して彼が酔い潰れているというわけではない。僕と違って笹貫は薩摩隼人らしさ溢れるうわばみだ。

「もう、いつまで拗ねてるの」

ふわふわとした頭では何一つ取り繕えず、僕は噛み殺しきれない笑いを含んだ声で笹貫へと問いかける。答えはない。代わりに、膝に触れる温かな手の感触があった。緩やかに撫でられて、背筋がそわそわと波立つ。

「もう君からは色々貰ってるし、それでいいじゃない」
……全部今日にすればよかった」

ちっとも納得していない笹貫の声が僕の耳まで這い上がってくる。完全に拗ねた子供だ。笑ってはいけないと思いつつ、感情のストッパーが緩んでしまっていて制御が効かない。

笹貫がこのようになっている理由――それは今日が僕の誕生日であることに由来していた。この月詠サーバーで生活するようになってから僕の年齢は殆どストップしてしまってはいるが、それでも誕生日は律儀に本丸の男士達がお祝いしてくれている。当然笹貫も歌仙兼定などから今日の件は聞いていたようなのだが、そもそも彼は誕生日がどのような風習で祝われるかの事前知識がなかったらしい。そのため、プレゼントを用意出来なかったのだそうだ。一応、本丸の男士達で相談して決めたものを全振りからという形でプレゼントしてもらっているので、僕としては十分だと思っているのだが、彼としてはそういうわけにはいかないらしい。気持ちは分からなくもないが、そろそろ気を取り直して欲しいところだ。

「ねぇ。……僕は君さえいてくれればいいよ」

酔いに任せて、僕は素面の時には絶対に言えないだろう科白を紡ぎ出す。大それたことを言っている自覚はあるが、羞恥心や自尊心などは既にどこか遠くへ追いやられてしまったようだ。
笹貫は黙ったままであったが、やっとこちらを振り向いた。僕よりもずっと大量にお酒を飲んでいたはずだが、顔色一つ変わっていない。乱れた前髪の隙間から覗く瞳の碧が、相変わらず美しい。

「君が一番の贈り物だ」

歯の浮くような言葉を重ねながら、僕は笹貫の頬にかかる髪を指先で弄ぶ。
何故だろう。今日は何だか、いつもよりずっと彼が愛おしい。



――なるほど、ね」

暫くされるがままだった笹貫が唇の端を吊り上げて言うと、漸く僕の膝から起き上がった。先程までの、感情の抑制が効かない子供のような素振りは見る影もない。

「じゃ、プレゼントの俺をみちさんはどうしたい?」

するりと容易く僕の間合いに入り込んで、笹貫は僕の身体を絡め取る。海の色をした瞳に魅入られて、僕はされるがままだ。

「ふふ、どうしようかなぁ」
「どうにでも。全部聞いたげる」

笹貫の申し出も、僕に負けず劣らず甘ったるい。いつもはくすぐったく感じるそれも、今夜はすんなりと浸ることが出来る。



――じゃあ、飲み直そう。お酒持って来てよ。君のおすすめを」

僕のリクエストに笹貫は一瞬きょとんとした顔を見せたが、すぐに短い了承の返事を残して部屋を出て行った。僕が笹貫にだけ気を許して存分に酔おうとしていることをきちんと察したらしい。廊下へと消える足跡は軽やかだった。

室内は再び耳が痛くなるほどの静けさに満ちる。
僕は新鮮な高揚感に包まれながら、彼が戻るまでの合間を潰すために煙草を手に取り、やや覚束ない足取りで春の宵へと躍り出た。