ゑ/圓堂
2025-03-26 23:33:49
8464文字
Public 月詠サーバー(満月本丸)
 

【刀剣乱舞】笹さに♂Twitterログ01【笹貫×創作男審神者】

pixivから移植
Twitterに文庫ページメーカーで上げた小話まとめ笹みち編。2023年に上げたものをまとめました。
笹貫刀帳NOデー記念小話『本日は寄り道日和につき』
真夏にかき氷を食べていちゃつくだけの小話『フローズンタッチ・サマーデイ』
眼鏡珈琲ネクタイの日小話『パラレルハネムーン』
おのさんへ差し上げたうちよそ小話『めぐるえにしのみちしるべ』
の四本立てです。
『めぐるえにしのみちしるべ』はおのさんが以前、うちの笹みちとおのさんちの創作審神者ヨロヅくんを描いてくださった時に思い付いて書いたものです。
サムネはおのさんにコピ本にしてお渡しした際の表紙です。その節は本当にありがとうございました!一生の宝物です!


【めぐるえにしのみちしるべ】

アンティーク調の木造のドアを開けると、カランと耳障りの良いドアベルの音が店内に響いた。次いで、何とも蠱惑的な甘い芳香が鼻腔を擽る。落ち着いた色の照明に包まれたシックな内装の店内には既に先客がおり、一心に硝子のショーケースの中を覗き込んでいた。現世での所用を済ませた僕と、御供として同伴していた軽装姿の笹貫もそれに倣う。

定番のショートケーキやガトーショコラ、季節のフルーツが乗ったタルト、オリジナルの創作ケーキが並ぶ光景はまるで宝石店のカウンターのようだ。ナパージュを塗られたフルーツの光沢や、磨かれたようなザッハトルテの表面に散らされた金箔の煌めきが何とも美しい。

「ここのモンブランが本当に美味しいんだよね」
「ね、どれも美味しいよね。オレ、みちさんの作るケーキの次に好き」
「ふふ、嬉しいけど僕の手慰みのケーキなんてここのにはとても及ばないよ」

笹貫の時と場所を選ばない惚気にじんわりと気恥ずかしさを感じながらも、何でもない風を装って僕は笑ってみせた。謙遜などではなく事実店を構えて販売しているこの店のケーキと、僕が趣味で作る自己満足のケーキは比較すること自体烏滸がましい。しかし、下心ありきとはいえ褒められること自体は喜ばしくもあった。


「もんぶらん!俺もんぶらん食べたい!」
「ええ、どうぞ……

僕の前でショーケースに釘付けになっていた先客のうちの一人が元気な声を上げ、その主張に対してもう一人はあからさまに気のない返事をしている。どうやら僕達の会話を耳にして触発されたらしい。どちらも和装で、一生懸命にモンブランを強請っているのは明るい髪色の少年――少年?

「うーん、悩んでしまいますね……
「おふたりさん、少しよろしいですか?」
「!」

連れの言葉に生返事しか返さずケーキの選定に夢中になっていた、渋い色合いの緑基調の和服に身を包んだ人物が僕の声に弾かれるように振り返った。真っ直ぐな黒髪を肩の上で切り揃えた、やや線の細い印象の、端正な美青年であった。身に付けたものの装いと声のトーンから判断していなければ、女性と間違えていたかもしれない。

「急にごめんなさいね。もしかして同業の方かなと思って」
「あ……審神者、の方……ですか?」

突如話しかけてきた僕に対して彼は瞬間的に身を固くしたが、言葉の意味を察してか少しだけ表情を緩めた。僕の予想は当たっていたようだ。

「ああやっぱり。現世で審神者さんに会うの初めてでねぇ。急に声掛けちゃってごめんね」
「いえ、私も初めてです。驚きました」

他に客もおらず、ショーケースの向こう側の店員が気を遣ってか背を向けて何やら作業を始めたので、僕達は少しばかり話をした。
月詠サーバーとは別のサーバーの本丸であること、現世には滅多に来ることがなく今日はたまたま特別な要件があって来ていたこと、同伴していた刀剣男士は僕の本丸には顕現していない包丁藤四郎という名の短刀だということを彼は教えてくれた。刀剣男士同士も初対面ながら互いを認識しあってはいるらしく、和やかに会話を繰り広げている。

「随分と悩んでたけど、甘い物お好きなの?」
「ええ、どれも美味しそうで決められなくて……

審神者の青年は困ったように笑うと、透き通るような白い肌にほんのりと朱を滲ませた。仕草や表情の一つ一つにそこはかとないいじましさを感じる。彼に付き従う刀剣男士でなくとも、護りたいと思わせるような雰囲気が彼にはあった。

「あはは、その気持ちとても解るよ。じゃあ――すみません、モンブラン二つと、季節のタルトを一つ、あとザッハトルテとこちらの新作も一つずつ、で足りるかな?」
「えっ?!いや、そんな」

あたふたと固辞しようとする彼をやんわりと宥め、僕は同じ内容でケーキを二セット分注文した。
この歳にもなると、こういった図々しい行為はお手の物だ。

「これも何かのご縁だから、ね?僕のおすすめセットで申し訳ないけれど、きっと気に入ってもらえると思うよ。ここのケーキ本当に美味しいから」

僕が笑ってみせると、彼はまた再び少し困ったような笑顔を見せた。




ケーキの詰まった箱を手にありがとうございます、と、嬉しい、と、すみません、を繰り返す彼と共に店を出て、僕らと彼らは別々の方向へと歩き始めた。

「みちさん、ゴキゲンだね」
「ふふ、そう?」
「そ、オレが妬いちゃいそうなくらいには」

何言ってんの、と笑いながら、僕は申し訳程度のフォローに笹貫の手を取って歩く。途端に愉悦の笑みを湛える笹貫を尻目に、僕はほんの小さく、彼らとの再会を願う想いを呟いた。