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ゑ/圓堂
2025-03-26 23:33:49
8464文字
Public
月詠サーバー(満月本丸)
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【刀剣乱舞】笹さに♂Twitterログ01【笹貫×創作男審神者】
pixivから移植
Twitterに文庫ページメーカーで上げた小話まとめ笹みち編。2023年に上げたものをまとめました。
笹貫刀帳NOデー記念小話『本日は寄り道日和につき』
真夏にかき氷を食べていちゃつくだけの小話『フローズンタッチ・サマーデイ』
眼鏡珈琲ネクタイの日小話『パラレルハネムーン』
おのさんへ差し上げたうちよそ小話『めぐるえにしのみちしるべ』
の四本立てです。
『めぐるえにしのみちしるべ』はおのさんが以前、うちの笹みちとおのさんちの創作審神者ヨロヅくんを描いてくださった時に思い付いて書いたものです。
サムネはおのさんにコピ本にしてお渡しした際の表紙です。その節は本当にありがとうございました!一生の宝物です!
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【パラレルハネムーン】
挽き立ての珈琲豆を敷き詰めたドリッパーへ少し落ち着かせた湯を落とす瞬間が、僕は珈琲を淹れる過程において最も好きだ。じゅわ、と音を立てて泡立つ珈琲豆の香りは、挽き終わってミルから取り出す瞬間よりも更にかぐわしいと感じる。豆を蒸らす間のひととき、僕はついつい深呼吸をするのが癖になっていた。
三十秒ほど時間をおいてから、湯を注ぐ。厨中に一気に芳香が広がる。まさに秋晴れの空といった柔らかな色の抜けるような青空と、すっかり夏の気配の消え失せた涼やかな風。それらにこの薫りはあまりに相応しく、一人きりの厨で僕は思わず鼻歌でも歌いたくなるような心地であった。
「お、いたいた」
すっかり浮かれ気分であった僕は、耳馴染んでいる筈の
――
否、耳馴染んだその声だからこそ、びくりと肩が跳ねそうになるのを何とか堪えた。背後の声の主の姿を脳裏に思い浮かべながら僕は振り返る。
「何、どうしたの
――――
」
そして絶句した。危うく少しだけ湯の残ったケトルを取り落としそうになったが、それは何とか持ち堪えた。
「ど?」
「え、ちょ、ええ?何その恰好?」
「何って、みちさんが買ってくれたヤツだけど」
声の主
――
笹貫の言う通りではあった。彼が今着用している、シンプルな黒のスーツは僕が彼のために仕立てたものだ。
スーツは現世任務でそれなりに必要になるため、出陣の可能性のある刀剣男士はほぼ全振りが所有している。笹貫と同じく僕が仕立てたものもあれば、各々好きなデザインのものを自ら買ってきた男士もいる。余程浮世離れしていなければ
――
そもそも刀剣男士達が皆浮世離れした端正な容姿であるので如何ともし難いが
――
好みの一着を着るのが良いだろうというのが僕の見解である。
笹貫と共に仕立て屋を訪れた時、僕は初め笹貫に好みの色柄を選ばせようとした。しかし、彼は全て僕が選んだものを身に付けたいと言い出したのだ。僕は自身のセンスの無さを前置きした上で散々熟考し、仕立て屋の主人の意見も取り入れつつ、今彼が着ている一着を完成させた。スーツは僕が着るタイプと同じものがいいというので三つ揃えにし、やや幅の細い黒のシャドーストライプの生地を選んだ。シャツはほぼ白に近いがややブルーグレーの色身を感じさせる無地のものに、ネクタイはこちらもぱっと見は黒だが光の当たり具合でモスグリーンにも見える無地のものを選んだ。決め手としては結局、彼に一番馴染む色だと僕が感じたものばかりである。趣味がいいかどうかはともかく、僕としては非常に似合っている
――
というより、似合い過ぎて目のやり場に少々困るほどの仕上がりであった。
「今度現世任務あるからさ、着る練習しとこうと思って」
「ああ、そういえばそうだったね。早速役に立ったようで良かったよ」
僕は危うく存在を忘れそうになった珈琲をサーバーから自分のマグカップへと注ぎ、笹貫へ飲むかと問うと彼特有の短い肯定が返ってきた。彼の使っているマグカップを出してきてそちらにも珈琲を注ぎ、笹貫のやや後方に視線をずらしながら彼へと手渡した。直視するとマグカップを落としてしまいそうだった。
「今日もみちさんのコーヒー、うま」
「ふふ、そりゃどうも」
僕もやっと珈琲に口をつける。手前味噌ながら、自分の好みにブレンドした珈琲はやはり美味しい。初めは笹貫のような男士は珈琲など好かないのではないかと思っていたのだが、存外に彼は気に入って愛飲している。毎日ではないが、僕が朝食後や午後のお八時に珈琲を淹れていると一緒に飲みたがるのだ。僕と一緒に何かがしたいという気持ちの人一倍強い笹貫であるが、だからといって無理して飲んでいるという訳でもなく、実際味を気に入って飲んでいるようだ。僕としては彼が僕の好きなものを自然な流れで共有してくれるのが嬉しかった。
「ね、こんなのも借りてきた」
「
……
これはまた」
笹貫が取り出して装備したものに、僕は眩暈さえ覚えるほどであった。シンプルな銀縁の眼鏡
――
恐らく伊達眼鏡であろう。多少髪の雰囲気や目の色が浮き立ってはいるものの、困るほどに色男である。
「それ、どうしたの」
「鶴さんが貸してくれた。
——
似合ってる?」
「うん
……
似合い過ぎて困っちゃうね。でも何だかいけないお店に連れて行かれそう」
僕が心底素直な感想を述べると、笹貫はいけないお店の意味が分からなかったのか唇の端を吊り上げたまま、目を見開き首を傾げた。僕は彼が追及してこないのをいいことにそれ以上は口を開くのを止すつもりだった。
「ああ、ネクタイこれ自分でやったの?」
「ん、みっくんに結び方教えてもらって」
「なるほどね。合ってるんだけどここをもうちょっと、こうした方が綺麗になるよ」
笹貫の顔から視線を逸らした先のネクタイの結び目がやや歪になっているのに気が付き、僕は思わず彼の首元へと手を伸ばしていた。別に何処に来ていく訳でもないのだから綺麗に着る必要は一切無いのだが、折角似合っているのに乱れているのは勿体ない。それだけのことだった。つもりだった。
ふ、と。
湧き上がる想いが口をついて出る。
「
……
もし君が人間で、現世で出逢っていたら朝こんな風に
――
」
そこまで言いかけて、自分が言おうとしている意味に気付き、僕の頭の先から爪先までが瞬時にかっと熱くなった。何を、何を僕は。そんな。
「こんな風に
――
何?」
「
……
ううん、何でもない」
「嘘、何でもある」
「変な日本語使わないの」
僕は苦し紛れの詭弁にもならない台詞を並べ立てて僕の視線を追尾してくる笹貫から逃れようとしたが、彼は力業をもってして僕を呆気なく自身の腕の中へ捕えた。余計に恥ずかしいことになってしまい後悔したが手遅れだった。
「ちょっと、本当に」
「教えてくれたら離したげる」
最も恥ずかしいことになるルートに辿り着いてしまい僕は頭を抱えたくなるような気持になったが自己責任である。それを棚に上げて笹貫に全責任を覆い被せるような時期はもう、とうに過ぎている。
「
――――
……
」
僕は先程自分で整えたばかりの笹貫のネクタイを引き、やや前のめりになった彼の耳元へと頭が痺れるような甘い妄想を注ぎ込んだ。
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