ゑ/圓堂
2025-03-26 23:33:49
8464文字
Public 月詠サーバー(満月本丸)
 

【刀剣乱舞】笹さに♂Twitterログ01【笹貫×創作男審神者】

pixivから移植
Twitterに文庫ページメーカーで上げた小話まとめ笹みち編。2023年に上げたものをまとめました。
笹貫刀帳NOデー記念小話『本日は寄り道日和につき』
真夏にかき氷を食べていちゃつくだけの小話『フローズンタッチ・サマーデイ』
眼鏡珈琲ネクタイの日小話『パラレルハネムーン』
おのさんへ差し上げたうちよそ小話『めぐるえにしのみちしるべ』
の四本立てです。
『めぐるえにしのみちしるべ』はおのさんが以前、うちの笹みちとおのさんちの創作審神者ヨロヅくんを描いてくださった時に思い付いて書いたものです。
サムネはおのさんにコピ本にしてお渡しした際の表紙です。その節は本当にありがとうございました!一生の宝物です!


【フローズンタッチ・サマーデイ】

夏というのは、始まってすぐの内はげんなりして早く終わって欲しいと願うものだが、気が付くと終わりに差し掛かっているものだ。時の政府からの文書や本丸の今後の予定を確認しながら、本日の日付を確認した僕はそう思った。
しかしそんな時の流れなどどこ吹く風と言わんばかりに、今日も部屋の外はいっそ憎らしいほどの青空と熱気が支配している。外気温に対抗すべく、部屋の空調がごうごうと音を立てながら懸命に稼働しているのが気の毒なほどだ。

そんな事を考えていると、どうやら自室へと近付いてくるらしい足音に気が付いた。僕が向き合っていた電子画面から顔を上げるのと、障子戸ががたがたと不器用に揺れるのはほぼ同時だった。

「みちさんごめん、開けて」
「はいはい。どうしたの」

みちさん、と現世にいた頃からの呼び名で僕の事を呼ぶ刀剣男士は一振りしかいない。はたして僕が障子戸を開けてやると、艶やかな黒髪を下ろしたサングラス姿の美丈夫がすらりと立っていた。今日は畑当番と水回りの掃除当番を任せている彼――笹貫は夏に似合いの軽やかな内番服姿で、両手に赤と青の氷の小山を抱えている。

「鶴さんと貞ちゃんがかき氷作ってくれたから食べよ」
「わ、昔ながらのって感じだねぇ。ありがとう」

鶴さんというのは笹貫と同じく刀剣男士で太刀の鶴丸国永、貞ちゃんというのは短刀の太鼓鐘貞宗である。彼らと親交の深い燭台切光忠がそう呼んでいるのがすっかり浸透しているのだ。普段はこういったおやつの類は燭台切光忠か、初期刀で近侍の歌仙兼定が用意するのが日常となっていたが、今日は二振りとも出陣している。だからといって何もないのは寂しかったのだろう。

「みちさんどっちにする?イチゴとブルーハワイ」
「うーん、じゃあイチゴ。……しかし鶴さんに作らせてよくまともなのが出来上がったね」
「ハハッ、やっぱそう思う?かき氷はベタなのがいいんだってさ」
「ああ、何だかその気持ちは解るなぁ」

僕は頷きながら、かけていた老眼鏡を外してかき氷の盛られた硝子の器を受け取った。外の熱気にさらされてもう随分と汗をかいている。酷暑の中でもなお冷たい雫が指の間から手首へと伝い落ちて、皮膚がざわざわと反応した。

「あー、うっま」
「今日は特別美味しいでしょ」

ん、と短く肯定する笹貫の首筋には濡れた髪が汗で貼り付いている。任務の割り当てを決めているのは僕だが、こんな日に畑仕事や掃除は酷だっただろうと思う。本当はこんな風に彼だけ僕の部屋で好き勝手させるのは気が引けるのだが、今日のところは大目に見る事にした。
空調の効いた部屋にいた僕がちびちびと氷を口に運ぶ横で、まるでお茶漬けでもかき込んでいるかのように笹貫は勢いよく器を空にしていく。まるで食べ盛りの中高生のようなその姿は、僕よりも遥か昔からこの国に在るものとはとても思えなかった。

「みちさん、溶けるよ」
「、ああ、うん。……涼しいとこにいたからもうすっかり冷えちゃったよ。良かったら残り食べてくれる?」

そんなつもりでは無かったが、彼に見惚れていたのを悟られてしまったような心持になって、僕は笹貫に半ば液体と化したかき氷を差し出した。身体が冷えてしまったのは本当だ。言い訳ではない。

「ん、もらうね」


笹貫は躊躇う事なく僕の手から器を取り上げると、そのまま口をつけて飲み干してしまった。と、思った。


刹那、視界が笹貫の端正な顔に覆われる。
唇に、冷たくて柔らかい彼のそれが触れる。

続いて、ひやりとした舌が強引に口の中へと侵入してきた。
安っぽいシロップの味と、体温との温度差にぞくりと背筋が粟立つ。
笹貫の汗ばんだ身体と、噎せ返るほどの彼の匂いに僕は眩暈を覚えた。



……冷たくてきもちいね」


散々掻き回した後、少しだけ唇を離して笹貫が艶然と笑った。

今年最後の夏の日は、現世よりもずっと気が狂いそうなほどに、熱い。