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豆炭々炬燵
7443文字
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ジャンルごった煮
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【花攫い】人外×人間詰め合わせ【其の弐】
Xでお見かけした素敵設定に多大なるインスピレーションを受けております。
ジャンル別人外×人間で統一、ノリと勢いでどうぞ。
※クロスオーバーものでは御座いません※
皐月 藤→訳アリ心霊マンション・サリ東
水無月 紫陽花→夜廻・よまこと
文月 睡蓮→ダークギャザリング・あしゅやよ
葉月 向日葵→怪異と乙女と神隠し・化菫
次の季節→
https://privatter.me/page/67d7f70158046
前の季節→
https://privatter.me/page/67d2afff6f439
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【あしゅやよ】白昼夢
7月 睡蓮 攫われる人→月蝕尽絶黒阿修羅
「
………
」
スケッチブックを抱えて何故こんな場所にいるのか思考を巡らす。記憶が歪に途切れている部分をぼやけたピントを絞るように思い出せば何てことない、正体不明の敵の攻撃を受けた結果此処に居るのだけが分かった。
ひとまず出口を求め歩き出せば暗い水に点々と咲いている淡く白んだ蓮の花が浅い水面を歩くのに合わせゆらゆら揺れた。
足に絡みつく重く冷たい水の不快さに顔を顰め睨むように元凶を見下ろし、息を飲んだ。
真っ黒な水鏡に浮かぶ貼り付けた笑顔の仮面。お父さんに悲しい顔をさせたくなくて新しいお母さんと仲良しだってニコニコしていたときと同じ顔。見たくなくてわざと波紋で消すのをくり返す。冷たさで麻痺した痛みを仄かに漂う何もかも見透かす蓮の香りは慰めてくれない。
不意に襲い掛かる寂寞の念。独りぼっちが嫌で嫌でどうしようもなくて目から零れる涙を手で拭い嗚咽を漏らす。心細さで蹲りたくなる小さな体は戦慄き、縋り付きたいぬくもりを求め我武者羅に伸ばした少年の手を彼よりかいくらか年上である少女が掴んだ。
「おねえちゃん
…
?」
「いた」
潤み緩む反転した目に映り込む重瞳の穏やかな光に何もかも奪われた。
凪いた慈しみの海。悲哀と慟哭でいっぱいの黒阿修羅を夜宵が小さくも大きな腕で抱き寄せ頭の丸みにそって手で撫でつける。
夜宵の胸に抱かれ肺いっぱいに彼女の匂いを吸い込みようやく落ち着きを取り戻し始めた黒阿修羅が安堵の溜息を零した。
氷みたいに冷たく凍えていた黒阿修羅の体が夜宵のぬくもりに溶け反転目を瞑り顔を摺り寄せる。
「探し出すのに時間が掛かった」
「ううん、へいき
…
」
「帰ろう」
「うん」
幼さ抜けきらない細くやわい指先が目元に溜まっていた涙を払う優しさが照れ臭くて黒阿修羅は目を伏せ、その夜宵の手が離れるのを反射的に目で追ってしまった。
まだ触れてほしい純然たる想いを腑に落とした黒阿修羅は、希薄な表情で見つめ続ける夜宵に軽く頭を振るうことで「なんでもない」と返した。
何かもの言いたげな表情を敢えて見て見ぬ振りをした夜宵が黒阿修羅の後方を指差す。つられ顔だけ振り返れば、一際大きな蓮の葉が他の蓮の花や葉を押し退けゆっくり近付いている途中だった。
子供ふたり余裕で乗れるほど大きな丸い葉が夜宵たちの前でピタッと止まる。
「これに乗って」
「
…
!!?」
朗々と言う夜宵に黒阿修羅は彼女と大きな蓮の葉を交互に目をやった。
黒阿修羅としては、突拍子のない帰還方法もさることながら正直自分を捉え閉じ込める蓮畑に対して苦手意識抱き始めているため──、本音を言えば乗りたくなかった。
眉をひそめ躊躇っている黒阿修羅を余所にいそいそと蓮の葉に乗っかった夜宵が手を差し伸べる。
「私を信じて」
「
…
でも、
……
」
言いよどむ黒阿修羅を急かさずに夜宵は、体勢を変え両手を広げ待ち続けた。
何も心配することなんてないだからおいで、と。その姿に不安や猜疑心が消え気付けば黒阿修羅は恐る恐る蓮の葉に乗り彼女の隣に腰を下ろした。
程なくして水面をすべり進む蓮の葉に抱いた感情は好奇心よりも息を潜めていた怖がりな心が顔を覗かせる。誤魔化すようにスケッチブックをぎゅっと抱き締めるも解決には至らず、つと普段自分自身の形代を抱きしめるように抱きしめて欲しい願望が黒阿修羅の心に灯る。
だが、自分が夜宵を守る矜持と子供っぽく見られたくない見栄、嫌われたら如何しようという臆病風に吹かれてしまい黒阿修羅は彼女の足の間に座るのを実行に移さないで夜宵の大きめなサイズの猫耳パーカーの裾を掴むに留まった。
やせ細った黒阿修羅の手が控えめに上着を掴んだのを夜宵はチラっと見ただけで何も言わずそのままにしたのだった。
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