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豆炭々炬燵
7443文字
Public
ジャンルごった煮
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【花攫い】人外×人間詰め合わせ【其の弐】
Xでお見かけした素敵設定に多大なるインスピレーションを受けております。
ジャンル別人外×人間で統一、ノリと勢いでどうぞ。
※クロスオーバーものでは御座いません※
皐月 藤→訳アリ心霊マンション・サリ東
水無月 紫陽花→夜廻・よまこと
文月 睡蓮→ダークギャザリング・あしゅやよ
葉月 向日葵→怪異と乙女と神隠し・化菫
次の季節→
https://privatter.me/page/67d7f70158046
前の季節→
https://privatter.me/page/67d2afff6f439
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【よまこと】蛇の目が無くとも迎えに行く
6月 紫陽花 攫われる人→ことも
窓ガラス一枚隔てた家の中から見上げるような雨音が聞こえる。
「ここは、どこ?」
濡れない場所で眺めるしとしと降る雨にちょっとした優越感を覚える前に、なぜ傘を差さなくても濡れないのだろうと周囲を見渡した。
どんよりした泣き止む気配のない空模様と対比するように、わたしの周りを囲む色彩豊かな紫陽花が目に飛び込んできた。
大粒の雨があじさいのつやつやした葉っぱの上をすべっていき、青、むらさき、ピンク、白、緑のタンバリンを小気味よく叩いていった。
「・・・思い出せない」
いつどうやってここに来たのか思い出したくても、頭の中に靄が掛かってしまい思い出せない。鈍く痛む空っぽの左目を眼帯越しにおさえ乾いた土の上を歩く。
不思議とわたしが歩けば、濡れていた地面が乾いて通り過ぎた場所は再び濡れた土の匂いをおびた。
切れ目のない出口の見えない紫陽花迷路。ジグザグな一本道に見せかけ、来た道を戻ろうと振り返ったら鮮やかな紫陽花の壁が道を通せんぼ。おしくらまんじゅう真っ最中な紫陽花をかき分け押しのける気は、伸ばした指先が紫陽花の葉っぱを掠めたとき無邪気な悪意が背中をさする感覚がしてすぐに引っ込めた。
数歩後ずさって前に進むしかない道をまた歩こう、なんて振り返れば道自体無くなってしまっていた。
紫陽花の輪っかの中。雨がかごめかごめをしとしと歌う。
嫌な気配にバッと後ろを見た。青、むらさき、ピンク、白、緑が音もなく距離を詰めていた。
今度は背中を向ければ近付いてくる光景はまるでだるまさんがころんだのよう。心なしか雨の言葉も馴染みのフレーズになってて、わたしは忙しなく紫陽花の群を見つめるしかなかった。
「・・・!!」
心臓がばくばくする音が頭の中に響き雨の笑い声をかき消す直前、夜の手が顔の横からにゅっと生えてきた。わたしが驚いて尻もちするのを見越したふにゅっと柔らかい無数の手たちが支える。
「よまわりさん」
黒い線が横一文字に描かれたつるりと白いお面の顔が少しだけ顔を近付けそのまま正面を見据えた。
ふわり浮く感覚に程なくしてわたしの足が乾いた地面から離れたのを知った。
冷たくも熱くもない黒く細い手に抱っこされ、自分の意思に関係なく進む目に映る紫陽花たちが道を開ける光景に「すごい」って声に出していた。
たまにわたしの体を掠めそうになる瑞々しい葉を黒い手がぺしって叩き落すのを何となく眺めていれば、叩かれた葉がみるみるうちに水気が無くなって枯れていき、最後は乾いた音を立てて地面に落ちちゃった。
わたしはてっきりそれがよまわりさんの力だって思っていたけど、
…
無機質な顔がどことなく嫌そうな感じに見えてこれは彼の仕業ではないんだって思った。
「(じゃあ、だれがやってるの?)」
小さく生まれた疑問のたねは紫陽花迷路を抜けても結局芽吹かないで、ただポケットに入れていた乾ききった目玉が恨めしそうにポケット中で転がるだけだった。
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