nuka_boshi
2025-03-04 18:21:38
20434文字
Public 利吉さんで賽殺しパロ
 

【RKRN】転生したら母親が伝子さんだった利吉さん その1【シリアス死ネタ】

映画『ドクタケ忍者隊最強の軍師』を見た結果、なんか利吉さん数年後にえらい事になりそうって感じてめちゃくちゃ罪の意識を感じるハメになったので、初見視聴時の感覚を頼りにお魚流利吉さん数年後ifでまさかのひぐらしのなく頃に賽殺し編パロをしようとしたやつ

一応つどい設定になるのかな?感を反映させてる感あるけど、割とその辺りは緩い独自解釈。映画見るまでほぼ忍たま知識ゼロなので多分色々とアップデートできてないです。

曇らせ&死ネタ。お魚にしてはだいぶ手加減してるけど基準がおかしいだけなので曇らせネタが苦手な人はご注意を。

推しが山田伝子なのだけど推しを美化しすぎてて描ける気がしないので『じゃあ忍者関係なしの一般人ガワだけ伝子さんならかっこよくかけなくても自分の中で解釈違い起きないから書ける!』という理由で架空の伝子さんが出ます。本編のお魚が好きになった宇宙一カッコいい伝子さんは出ませんので、ジェネリック伝子さんをお楽しみください。

ネタバレ 利吉さんが曇ります

プロローグ 逃亡者


 降りしきる雨が全身を濡らし、衣服を張り付かせる。月明かりすら無い夜の闇を、私はただ必死で駆け抜けていた。
 雨でぬかるんだ地面は泥と馬糞ばふんとが混じりあい、まるで泥田どろたや沼地の中に足を突っ込んでいるようだった。気を抜くと足を取られそうな、思うように足を運べないこの立地。それは、二年前に右脚を負傷し、今もその後遺症が残っている私にとって致命的なことだった。
 激しい雨音が背後の声を掻き消している。――分かっている。『彼』に悪意はない。彼はただ、この雨の中顔見知りの姿を見つけて、それで心配して声をかけただけだ。それが二年間もの間、姿を眩ましていた知り合いなら当然の事だ。私が彼の立場であっても、恐らくそうする。だか、私には彼に合わせる顔が無かった。捕まるわけにはいかなかった。なんとかして、なんとかして逃げきらねば――
「ッ!? 駄――!! そっちは――!!」
 声変わりを経てすっかり青年のそれへと変わった声が叫ぶ。しかし私はぬかるみに足を取られぬように必死で、それどころではなかったし、降りしきる雨が彼の声を掻き消していた。
 カッ、という稲光いなびかりと共に耳をつんざくような轟音ごうおんが辺りに響き渡った。どうやらすぐそばの大木に雷が落ちたらしい。心の臓を直接掴むかのごとき激しい音に、私としたことが一拍反応が遅れてしまう。
 一拍と言えど、反応が遅れることは致命的だ。してや、今のような切迫した状況であれば尚更に。
 ゴッと大きく地面が揺れ、私は足元をすくわれる。鳴り響く地響き。恐らくこの豪雨と落雷で地滑りでも起きたのだろう。かつての私であれば何という事のないそれは、思うように動かぬ右脚を引きずる今の私にとっては致命的な物だった。視界の端で、私を追っていた少年が、両の目を見開きその手を伸ばす。――いや、すでに少年とは呼べないのか。出会った頃忍術学園の初々しくも問題児だった彼は、既に立派なプロの忍者として様々な任務を請け負っている。肩口までしかなかったまげも、今や腰まで伸びた。今や、駆け出しの優秀なプロ忍として引く手数多だ。かつての私も、そういった時期があった。輝かしい、もう決して戻れない時代が。ただ頑なに己の可能性を信じ、疑っていなかったあの頃が。目の前の歳若き忍――摂津のきり丸の姿に重なる。
 とどろく雷鳴と地響きの音にかき消され、彼の声は届かない。しかし、口の動きが、彼の叫びを私に伝える。――利吉さん。私の名を必死に呼んでいるのだ。
 崩れる足元と瓦礫がれきに押し流され、私は為すすべもなく自由落下に身を任せる。
 ……そういえば、雷鳴に悲鳴をかき消されている間に隠していた高貴な姫が鬼に喰われてしまった物語があったか。あれは伊勢物語だったか? 願わくば、あの物語のように、この雷鳴に存在ごと全てを掻き消してはもらえないものか。
 ふと浮かんだ場違いな考えに私は自嘲する。――あれは、やんごとなき身分の者の悲劇的な結末を直接えがく訳にはいけないから暗喩あんゆしてえがいただけの物語だ。周囲の期待を裏切り、我が子すら捨て、その上逃げ続ける私のような卑怯者に、そのような高貴な物語が与えられる筈もない。こうして無様ブザマさらし、醜く堕ちていくしか出来ないのだ。今の私、――山田利吉という男は。
 カッとほとばし稲光いなびかりが視界を覆い尽くす。
 目の眩むような閃光と轟音ごうおんの中で、私は意識を手放した。