かいえ
2025-03-01 09:17:16
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【竜武】「クリスマスは意外性で♡」作戦   

「プレゼントは、オ・レ♡」作戦(https://privatter.me/page/67c174ad33a5f)の続編
前作に引き続き、竜胆の為に蘭が全力でお兄ちゃんを遂行する話   
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 すっかりクリスマスの装飾に彩られた六本木ヒルズの二階にある66プラザを歩いていて、見知った顔を見つけたのはある土曜日の昼下がりだった。
 起きたらいつもの如く昼前で竜胆は出かけていて、一人分だけ飯を作るのも億劫に思った。そういう次第で、ヒルズ内のレストランで軽く食べようと建物内に向かって歩いている時だった。
 一定間隔で設置されたビルの大きな柱の一つの陰に、複数人のヤバそうな男たちがいるのが偶然目に入ったのだ。声は聞こえなくても雰囲気で何をしているのかは一目瞭然で、運の悪い人間を囲んで難癖をつけてカツアゲをしてるに違いなかった。
 脅されている哀れな子羊は、男たちの隙間から見える飛び跳ねた金髪の持ち主で、足元は流行を無視したダサいスニーカーを履いていた。その顔と胴体は男たちの身体で丁度隠れていて見えないが、きっと服もダサいのは間違いないと確信できてしまった。
 この六本木で、あんなどうしようもないスニーカーを履いた金髪のくせ毛の人間は、弟、竜胆の恋人である花垣武道でしかである花垣武道でしかありえなかった。
 この腹の空き具合ならば、通常ではそんな面倒事は無視して飯を食いにいくところだが、弟の恋人が絡まれているというのは無視できる事では無かった。この灰谷兄弟の縄張りで、俺の身内にちょっかい出す輩は死あるのみなのだ。
「なぁ、俺の(弟の)嫁になんか用?」
 背後から静かに近づいてドスの効いた声を出せば、武道に絡んでいた人相の悪い男たちがびっくりして俺の方を振り返った。そして、自分たちの背後に立っているのが俺だと認識すると、全員が面白い程みるみる顔色を悪くしていった。そして、自分たちが脅していた相手を振り返って二度見する。まさか、目の前にいるちんちくりんが、俺の想い人だとは思わなかったのだろう。確かに違うし。弟の恋人だから。
「スミマセン! 存じ上げなくて!」
 こいつらは小物だが理解するのは早くて助かる。俺が殴るまでも無く、男達は脱兎の如く逃げ去ってしまったのだった。別に殴っても良かったのだけれど、お腹が空いて機嫌が悪いから手加減出来ないだろうし面倒な事になりそうだったのだ。後始末する兵隊も居なかったから、あいつらが歯向かってきたらちょっと嫌だなと思っていた。結局、その場には俺と武道の二人が取り残されたのだけれど。
 俺の目の前で心細そうに立っている武道は、やっぱり頭の天辺から足の爪先まで笑えるくらいダサかった。
「蘭君、助けてくれてありがとうございます! しつこくて困ってたんです」
「そっか。良かったナ」
「でも、俺の嫁はおかしいですよ。俺が付き合っているのは竜胆君ですからね」
「そこは『俺の』って言っといた方が確実だからそう言っただけだって。これでもう、この辺りでオマエにちょっかい出すやつは一人もいねぇよ」
「ふぇ蘭君すごい」
 武道は俺を見上げて感嘆の声を上げた。そういう素直なところが可愛いやつなのだ。
「そういえば、今日は何の用で六本木に来たんだよ? 竜胆は出かけて居ねぇぞ?」
「それは知っていますよ」
 俺の問いかけに武道は焦った声を出した。それだけで俺のセンサーが勝手に反応していた。武道が竜胆に内緒で動いている事に気がついてしまったのだ。俺の弟の恋人の癖に、浮気でもするつもりなら、全力で阻止しなくてはという兄心が発動した。もちろん、その場合、武道の相手はボコボコにしてやるつもりだった。竜胆の面子を潰す奴は、二度とそんな気が起きないようにしてやらなくてはならない。
「じゃあ、何の用?」
 俺の追及に、武道は困った顔をした。
「いやあのショッピングですかね」
 もじもじとそう答える武道を見て、俺はピンときた。前回会ったのは竜胆の誕生日だった。それを知らずに遊びにきた武道は慌ててドンキにプレゼントを買いに行ったのだ。そして、もうすぐクリスマスというこの時期にショッピングと言うなら、武道が何を買おうとしているかは聞かなくても分かってしまったのだ。
 先程までの疑心暗鬼になりそうだった殺伐とした気分は去り、今度は春風が吹く爽やかな陽だまりを歩いているような気持ちになった。この中坊が少ないこずかいで竜胆の為に何かを買おうとしているのが、ひどくいじらしく感じたのだ。
 またドンキに行くつもりなのだろうかと思って、武道が竜胆にプレゼントしたシャウティングチキン40センチが脳裏を過って噴き出しそうになった。蝶ネクタイをして毛を毟られた黄色のにわとりのゴム人形は、目を見開きダッチワイフみたいに大きく縦長に口を開けていて、お腹の部分を押すと絞殺した時に出るような変な鳴き声を出すおもちゃだ。皮膚は正に鳥肌仕様というかイボカエルのようにぶつぶつして気持ち悪さが半端なく、トサカと嘴と蝶ネクタイと脚と趾の爪の部分が赤色になっている不気味な感じのあいつは、竜胆の部屋で異彩を放ちつつ大事に飾られていたりする。美意識の高い竜胆が、部屋のインテリアをガン無視したあいつを受け入れたのは愛でしかない。
 武道が竜胆に何をプレゼントするつもりなのか、俄然興味が沸いてしまった。
「それ付きやってやるから、俺の用事にも付き合えよ」
 武道は俺の言葉に「え?」という顔をしたが、俺に逆らうなんて馬鹿な考えは持たなかったみたいで、素直に俺の後を着いて来たから、俺は雛鳥を先導する親鳥のような気持ちになってしまった。
「それで、武道は竜胆に何を買う気なの?」
「ええ?」
 向かいの席で小籠包をふーふーしていた武道が、驚いた顔をして俺を見上げてきた。
「オマエが買いたいものって、竜胆へのクリスマスプレゼントだろ?」
 武道に問いかけながら、俺はフカヒレの姿煮を一口食べた。ぷりぷりとしたゼラチン状のフカヒレが口の中に広がる幸福感に浸る。
「なんで分かっちゃったんですか?」
「竜胆に内緒でショッピングに来たって言ったら、時期的にもクリスマスプレゼント一択しかねぇじゃん?」
「そっか蘭君すげぇ」
「ドンキ?」
「いえ、今度はもっとちゃんとしたものをあげたくてでも、何を買えば良いか分かんねぇっスけど
「それでヒルズに来たんだ」
「そうっス。竜胆君が良くここで買い物をしているって聞いたから」
 確かに自宅から徒歩圏内と云う事もあり、このヒルズ内で竜胆は良く買い物をしているが、竜胆のお気に入りの店で武道が買えるものがあるとは残念ながら思えなかった。この様子だと、いくらするかも全く分かっていない。これはマズイと俺は思った。予算がいくらなのか知らないが、竜胆への誕生日プレゼントが税込み940円だったのだ。きっと、ショップで値札を見たら、武道は卒倒するに違いない。何しろ、六本木に千円札一枚と小銭しか持たずにやってくる男なのだ。六桁の買い物をするのはムリに決まっていた。そして、竜胆はといえば、俺が育てたので審美眼が素晴らしくセンスも良く、日常を一流品に囲まれてとても贅沢に育っていた。
「蘭君、ショッピングに付き合ってくれるんですよね?」
「んー、いいよ」
 もちろん武道を俺の監視下におかないと大変な事になるので即答だ。
「良かった。ちょっと一人では入りにくそうな店だったから、慣れている蘭君が一緒で心強いです」
「そっか、そっか。まぁ、俺に任せておけ。竜胆のお気に入りの店に連れて行ってやるから」
「あざっス!」
「だから、まずは腹ごしらえしろよ」
「でも、俺、こんな高そうなお店の食べ物代を払えるか心配です
 武道は高そうと言うが、この店はヒルズ内では比較的価格帯が低い店だった。ファーストフードばかりだから、ちゃんとしたものを食べ慣れていないのだと、武道の事が不憫になってしまった。竜胆の恋人がそんな状況なのは、兄として断じて見過ごすわけにはいかなかった。
「バカだな。弟の恋人は俺の身内だぞ? 俺が奢るに決まってんだろ?」
「そんなの悪いですって」
「遠慮するな。これもうちのしきたりなんだよ。年長者が常に奢るっていうやつな。オマエはうちでは一番年下なんだから、素直に奢られていればイイんだよ」
「はぁこれもしきたりなんですね
 うーんと難しい顔をして武道が呟く。
「そうそう」
「じゃあ、遠慮なく奢られますね!」
「ん、そうしとけ」
 相変わらずのちょろさに怖くなるが、武道の予算で食べられるものなど、俺は全く食べる気が起きないので、素直に奢られてくれないと逆に俺が困るのだ。