山城まつり
2025-02-19 21:49:19
19194文字
Public 【馬子軸スーリニ】レヴリの紅玉
 

【馬子軸スーリニ】レヴリの紅玉#01

続いた!!!!やったあ!!!
ようやく自キャラが出てきます、良かった……ファン作品のままでも良かったけど、自キャラ絡める事が出来て良かった……。

レヴリの紅玉 シリーズ▼
https://privatter.me/user/YamashiroMatsuri?category=66492

前回▼
【馬子軸スーリニ】レヴリの紅玉 #00【Prologue】 https://privatter.me/page/67b4614601013

前回に引き続き、アスナショウコ様宅【レゾン・デートル】から四宮椿さん、市ノ瀬咲良さん、大河カレンさんをお借りしております。お貸しくださって本当にありがとうございます。

本作は自創作【suicidal/leniency(スーサイダルリニアンスィ)】を「馬子軸」(現代ファンタジー)に落とし込んだ作品です。何度でも言いますが、作者自身、馬子軸に関してど素人中のど素人ですので、間違った解釈などあるかもしれません。本当にすみません。
また、本シリーズは【suicidal/leniency】本編のネタバレを含みますので、「ネタバレNG!」という方は閲覧をお控えください。作者的にはスーリニはネタバレありきの方が面白いと思いますのでネタバレ推進派です────。

スーリニ原作が気になってくださった方におかれましては、以下に本編リンクを載せておきますのでよろしければご覧ください。現在Prologue~Karte03まで読めます。
昨日、Karte01の第6節が誤って第7節を載せていたことに気付きまして、修正しております。すみません……。

▼suicidal/leniency本編
https://novel.daysneo.com/works/3870c9c909042fb07a363f371caeee59.html


それでは、皆様にとって良い時間になりますように。


心地の良いジャズが室内を満たしている。
フランスに来てからジャズばかりを耳にしているような気もするが、音楽というものは『飽き』を覚えさせない。俺はグラスに半分だけ注がれたクラレンドル・ブランの白ワインを眺めながらぼうっとしていた。……優しい音楽が眠気を誘う。ワインを嗜むより、今は早くベッドに身を埋めてしまいたかった。
目の前でグラスを傾けてそれを咽喉に流し込んだ椿は、そんな眠そうな俺に対して「眠気覚ましに情報を整理しよう」と提案してくる。正直勝手にやっていて欲しいが、俺も一人の臨床医としてこの不可解な病に興味はあった。切れ長の瞳に彼女を映すと、傾けた首に従って肩の髪がはらりと落ちる。


「先ず、フランスでスアサイダル症候群末期患者が死亡する。その数は一件ではなく、数例あった」


椿はワイングラスを揺らしながらそう呟く。薄緑の液体がゆらゆらとライトの光を反射して輝いている。


「どの症例も結果は同じ。全身のあらゆる臓器、血管系に鉱石の腫瘍が形成されている。死因はどれも出血性ショック死だったな。普通に考えて、スアサイダル症候群発症により希死念慮を抱え────自ら命を絶とうとした」

「間違いねぇ。で、日本でも同じような症例が起きた。腫瘍の形成パターンも死因もほぼ同じ。で、スアサイダルが犯人、っつうのが最有力だが、別のヴィーヴィルの可能性も捨て切れない」

「ヴィーヴィルはヒト型の幻想種なンですよね。これは患者から聞いた話で、彼らが精神をやられて幻覚を見ていなければ……それが真実って事になりますねェ。でも幻覚って可能性もあるからァ……ややこしいなァ」

「だが私達が探すべきは全ての患者の証言に共通する人物────それに間違いないだろう」


椿はワインをもう一度傾けると、それを流して「いいワインだ」と零した。
────恐縮です。カウンターの向こうから、不意にそう聞こえる。そこに居たのは、このバー……「オテル・ド・リス」に併設された「ル・ルビ・ノワール」のマスターだった。


……お前も日本語の心得が?」

「多少。娘が昔日本への留学を望んでいまして」

「ほう、日本に興味が」

「日本の医療に興味を持っていたのです。日本は世界でも最先端の医療を行う国家ですから」


グラスを磨きながら、ウッドブラウンの豊かな髭を蓄えた中年の彼がそう返す。丸い眼鏡の奥は、薄っすらと憂いの表情を浮かべていた。
カウンターに、マスターの名前が刻まれたプレートがあった。ブノワ・ピション。彼の名前はそう言うらしい。


「丁度いい。お前の見地から見て、シメリスについて説明をしてくれないか」


にんまりと笑みを浮かべたまま、椿は頬杖をついて傾聴の姿勢を取った。……シメリスの事は、シメリスに暮らす住民に聞くのが一番早いのかもしれない。そう思案した俺も「迷惑でなければ、ですが」と断ったうえで彼を見上げる。大河はメモを取る準備を周到にしていた。


……あまり、語れる事はありませんが」

「構わん」

「そうですね……シメリスは、パリ────いえ、フランスの医療の中枢都市です。此処では外科手術と医薬品の開発が盛んに行われています。フランスでは、その……いい話ではないのですが」

「続けろ」

……その、フランスでは近年自殺者が増えていますから……私としては外科医療や内科医療より、メンタルヘルスを活発にすべきだと思っています」


スアサイダル症候群を知らない民間人にとっては、自殺者増加の原因は国民の精神力の低下が直結していると考えても仕方ないだろう。シメリスがメンタルヘルスをおざなりにしている訳ではないのだが、その直接の原因がスアサイダル症候群である以上……外科医療に力を入れているという点で認識に相違はない。
気になるのは────。


「医薬品開発ですか。具体的に、」

「ジェネリック医薬品から医療用医薬品まで様々ですよ。主に開発しているのは────」


そこで、スマホがけたたましく鳴り響く。
……何事だ?怪訝に思った俺は、マスターに断って席を立ち……液晶画面に目を落とす。

シメリス中央病院。

表示されたその名前を見て、体温が奪われていくような感覚に陥る。
嫌な予感がした。
何かが、何かが起こったのだ。
ばくばくと五月蠅く吼える心臓を抑えて、焦りながら耳に当てる────その先で聞こえてきたのは、先ほど笑顔で見送ってくれた、彼の荒い叫び声で。


『咲良さんですかッ!?すみません、今────!!』

「大丈夫です、何があったんですか!?」

『今、急変患者が運ばれてきて、それで、そしたらッ……!』

「落ち着いてください、何が、!」

『そしたら、患者の体内から────



────大量の蟷螂かまきりの幼虫が、溢れかえってきたんですッッ!!!』















────Ep.2へ続く