山城まつり
2025-02-19 21:49:19
19194文字
Public 【馬子軸スーリニ】レヴリの紅玉
 

【馬子軸スーリニ】レヴリの紅玉#01

続いた!!!!やったあ!!!
ようやく自キャラが出てきます、良かった……ファン作品のままでも良かったけど、自キャラ絡める事が出来て良かった……。

レヴリの紅玉 シリーズ▼
https://privatter.me/user/YamashiroMatsuri?category=66492

前回▼
【馬子軸スーリニ】レヴリの紅玉 #00【Prologue】 https://privatter.me/page/67b4614601013

前回に引き続き、アスナショウコ様宅【レゾン・デートル】から四宮椿さん、市ノ瀬咲良さん、大河カレンさんをお借りしております。お貸しくださって本当にありがとうございます。

本作は自創作【suicidal/leniency(スーサイダルリニアンスィ)】を「馬子軸」(現代ファンタジー)に落とし込んだ作品です。何度でも言いますが、作者自身、馬子軸に関してど素人中のど素人ですので、間違った解釈などあるかもしれません。本当にすみません。
また、本シリーズは【suicidal/leniency】本編のネタバレを含みますので、「ネタバレNG!」という方は閲覧をお控えください。作者的にはスーリニはネタバレありきの方が面白いと思いますのでネタバレ推進派です────。

スーリニ原作が気になってくださった方におかれましては、以下に本編リンクを載せておきますのでよろしければご覧ください。現在Prologue~Karte03まで読めます。
昨日、Karte01の第6節が誤って第7節を載せていたことに気付きまして、修正しております。すみません……。

▼suicidal/leniency本編
https://novel.daysneo.com/works/3870c9c909042fb07a363f371caeee59.html


それでは、皆様にとって良い時間になりますように。


────フランス、パリ。シャルル・ド・ゴール空港。
首都圏までおよそ25kmの位置にあるその空港は、独特なドーナツ型をした建造物だ。到着時のフランスは、間もなく18時に差し掛かろうとしていた。巨大な窓から薄暮の空が見える。日本と同様に気持ちが良いほどに晴れ渡っており、棚引く雲は橙色と紫色のグラデーションに染まっていた。枕草子の一節を思い出す。確かあれは「夏は夜」だったが、清少納言も夕暮れか夜か迷ったんじゃないか、と野暮な事を考える。……それほどまでに神秘的な空模様だった。
だが、俺はその天候の素晴らしさにそれ以上の感動を覚える気力を失っていた。それは隣で空港の写真を連写しているコイツ、大河の仕業だ。福岡からパリまでの飛行時間はおよそ18時間。仮眠でも取ろうと思っていたのに、コイツはやれ「ボルドーのワインまた飲みたいなァ、咲良さんにも教えてあげますよ、ボルドー5大シャトーってのがあってですね」だの、「ルビアンのクロワッサン楽しみだなァ~~!!あ。ルビアンってブランドがあってェ」だのとひたすらに俺に喋りかけてきたのだ。勘弁してくれ。俺より椿の方が話し相手になるやろ……そう思って大河の右隣の彼女を見遣れば、椿は両手の指を押し当てて思考の海に潜っていた。俺はそこで悟った────ああ、このマシンガントークに、これから18時間付き合わされるのだ、と。
最初はフランス名物の話を一方的に押し付けていた大河だったが、いくらヨーロッパが日本と違うからといって18時間もその話題で持つ筈もない。話題は徐々に仕事的な内容に変わり、彼女は椿に代わって前回ナポリ医科大学を訪れたときの話を語っていた。……椿も深くは語らなかったので、ありがたい気持ちも多少はあった。多少だ。0.1%くらい。


『────でェ、結局スアサイダル症候群の現在の治療法は外科手術とその後の心理治療でどうにかするしかないって話……ってのは聞きましたよね?』

『知っとる。その心理治療をしても一度神秘に侵された人間が神秘や幻想と関わりを絶って生きられる事はない、っつうのも。手術適応にない患者が罹ったら一貫の終わり……内科治療の研究とか進んどらんのか』

『あぁ、ありますよォ。椿から聞きませんでしたァ?』

……聞いとらん』

『まァ~~~~~、まだ治験がどうのこうのな段階みたいなンですけど。論文書いた人が面白い名前なんですよォ。聞きます?聞いてくださいよ、イアサント・マルシャンって言うんですって、あははッ、イアさんとマルしゃん?そんな、助さん格さんみたいな。おもしろ~~~~!!』

『それ本人の目の前で言ってぶん殴られてこい』

『えェ~~~、嫌ですよォ。あ、それで────』


……そんな会話が、およそ18時間。なんでコイツはピンピンしてるんかちゃ。おかしいやろ。体力のバケモンか……。そうチベットスナギツネのような視線を彼女に向けるが、大河は元気よく空港を駆け回って写真に収めていた。
「カレン、早く行かないと病院が閉まる」と椿が彼女を呼び止める。……そういえばコイツも18時間思考の海を遊泳していた。女はタフなのか。そう謎の結論を下して脳内会議を強制終了した俺は、二人の後を追って空港の玄関口を潜った。

外界は日本の異常気象に慣れた身からすれば異様なほどに涼しい。
長袖のスーツで良かった、と日本の夏ではあり得ない考えが脳を巡る。空港前のタクシーに乗り込むと、俺達は目的の地へ向かう。そこはフランス神秘管理局直轄の医学研究都市────その中枢、パリの幻想医療の最先端。名を……「シメリス中央病院」。スアサイダル症候群医療、簡略化してスアサイダル医療の中核を担う総合病院であり、そこにはその幻想の病に対応するための専門チームが存在している。そう、椿が此処へ渡る前に言っていた。

タクシーは歴史的な街並みを駆け抜ける。
車内に流れるジャズが、暮れていく茜色と絶妙にマッチして夜の訪れを芸術的に歌っていた。遠くでエッフェル塔が天高く伸びているのが見える。石造りの建物の群れは日本の大都会のそれとはまた違う「経済の発展」を俺達に見せつけ、此処がフランスの中心部なのだと力強く語っていた。
いつしか、目の前に川が広がっていた。セーヌ川だ。それに沿ってタクシーは進み、そして一つの橋を渡る。その橋の先にあるのは石灰色をした歴史と未来の都市────シメリスだった。


「医学特区とはまた違った景観ですねェ」


パシャパシャと連写音が聞こえる。
大河は己のスマートフォンにその芸術的な街並みを覚えさせていた。それに対して椿が「学術都市、研究都市の景観は国々の特色が現れる。フランスは歴史を重んじる国だ……景観を損なわないよう建築の際にデザインを考え抜いたと聞いている」と答えた。


「なァるほど、京都と同じ感じですかァ。いやァ~~、大変だな~~~。なんかこう、奇麗なンですけど堅苦しくて」

「そうとも限らないぞ。少なくとも現地住民はこの景観に慣れている。堅苦しさを感じるのは観光客か留学生くらいだ」

「ふ~ん……


緩やかに、車両のスピードが落ちていく。
タクシーはゆっくりと停車し、運転手の男性が到着した事をしわがれたバリトンの声で告げた。俺は窓の外を見上げる。そこには、東医にも負けないライムストーンの巨大な施設が構えてあった。
パリ・シメリス複雑疾患特定機能病院群、シメリス中央病院・エニグマ医学会。
逢魔時を迎えたこの国で、忍び寄る影を祓う正義の象徴が、俺達を迎え入れていた。