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かいえ
2025-01-27 00:06:40
9724文字
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【マイ武】そのアイドルは恋をする ①
トップアイドル「東京卍會」リーダーのマイキーと、研究生の花垣武道のラブコメ
他のメンバーとは頻繁にご飯を食べたりしているのに、マイキーとは何故か行かない武道に、マイキーがぶち切れて主にドラケンが振り回されるお話
タケミチ愛されのアイドルパロ
9,722文字
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「ケンチン、タケミっちと二人っきりで牛丼食べに行ったってホント?」
二人っきりという言葉を殊更強調してくるのは、ドラケンが所属しているアイドルグループ「東京卍会」のトップを張る男、佐野万次郎こと通称マイキーだ。そのマイキーが、今日発売の週刊誌の記事が載った頁を開けて、龍宮寺堅こと「東京卍会」ナンバー2であるドラケンの顔の前にぐいぐい押し付けて聞いていた。
もうすぐレッスンが始まるところだったが、メンバーはまだ全員揃っていない状況で、柔軟体操を終えたドラケンのところに、怒り気味のマイキーがつかつかと一直線に向かって来たのだ。もう話を聞く前から、ドラケンは厄介事だと感じ取っていた。ちなみに、タケミっちというのは、事務所の研究生である花垣武道のことだ。
「行ったけどさ? なんでそれが週刊誌の記事になんのか全然わかんねーよな。一緒に行ったのタケミっちだぜ?」
ドラケンが苦笑すると、マイキーは眉を吊り上げて「そうじゃない。そうじゃないってケンチン! 問題は俺抜きで、ケンチンが俺のタケミっちと二人っきりで飯を食いに行ったってとこ! ねぇ、どういうこと? なんで二人っきり?」と、すごい剣幕でドラケンににじり寄った。
二人っきりという言葉を強調するマイキーに、自分が誘われていないとへそを曲げているのかと、ドラケンは気が付いた。
「違うって。その日はオマエが地方ロケでいなかった日で、別に、いるのに誘わなかったワケじゃないって」
フォローしたつもりだったのに、マイキーの反応は「くそっ! あの日か?」と、頭を掻き乱して絶叫するというものだったので、ドラケンは自分が何か間違った対応をしたのだと察した。察しはしたが、だからと言って、マイキーが何を求めているのかが分からず、ドラケンは途方に暮れるしかなかった。何しろマイキーはグループの顔であるのに、グループで一番ガキっぽいのだ。いつもファンに見せているキラキラして、格好良くて、男らしいマイキーは、事務所が作った虚像だった。
「おい、マイキー? 一体なんだって言うんだ? たかが一緒に飯を食っただけだぞ?」
そして、ドラケンは見たままの男で、まどろっこしいやり取りが好きじゃなかった。そういう訳で、こんな風に訳が分からない場合は、何でもストレートに問いかけるのが常だった。
「そうだよ。たかが飯だよ。そのたかが飯に、俺は一度も行けてねぇんだって!」
「なんで?」
マイキーは研究生の中で、タケミっちを一番可愛がっていた。私物も色々あげているようだし、てっきり飯くらい何度か連れて行っているものだと思っていたから、マイキーの言葉に驚いてしまった。
「あいつ、俺が飯に誘っても、ぜってー何か用事があるって言って断りやがる」
「そうなのか? 俺が誘った時は、すげぇ嬉しそうについてきたけどな」
「マジで?」
なにそれ? と、マイキーの怒りはドラケンに一層向けられ、自分でも余計な一言を言ってしまったとドラケンは蒼ざめた。
「オハヨ。ドラケン、タケミっちと仲良く週刊誌に載ってたじゃねーか。俺は撮られなかったけどな」
そこに「東京卍会」ナンバー3の場地がやってきたから、ドラケンは助かったと内心ホッとした。
「え? 場地もタケミっちとご飯に行った事があるわけ? 嘘だろ?」
マイキーは、今度は場地に食いついている。
「っていうか、一緒に行ってないの、オマエだけじゃね?」
長い髪を黒いゴムでまとめながら場地があっさり言い放った。マイキーは「は?」と、唖然とした表情を浮かべた。しばらく硬直していたが、次の瞬間、マイキーは背後をバッと振り返った。そして、準備運動していた一虎と目が合った。一虎は、これ見よがしに満面の笑みを浮かべ、左目でウィンクしてきたから、マイキーはマジかと思った。しかも、その横でバーレッスンをしていた三ツ谷までもが、気まずい笑みを浮かべるのを見た。そうして更に、着替えの途中だった三途が、そっとマイキーから視線を外したのも視界に入ってしまい愕然としてしまった。
あんなに仲が悪そうな三途でさえ、タケミっちと飯に行っているとはどういうことだと、マイキーは「嘘だろ?」と小さく呟いた。
「え? マジで俺だけタケミっちと飯に行けてねぇの? なんで?」
「嫌われてんじゃねぇーの?」
場地がそう言ってゲラゲラ笑うので、横にいたドラケンがぎょっとなる。一発触発の空気が醸し出される前に、クールダウンを図る必要に迫られた。この幼馴染コンビは、マイキーの祖父から空手を習っていた黒帯の実力者だったし、ケンカもものすごく強かった。そんな二人が殴り合いを始めたら、今度こそ笑えない理由で週刊誌の一面を飾るに違いなかった。
「落ち着け、マイキー。オマエはこのグループ内で一番忙しいんだって。そうだろ? 後は
…
そうだ、たまたまタイミングが悪かっただけだと思うぞ?」
「じゃあ、実験に付き合えよ、ケンチン」
「は?」
「俺が、今日の帰りタケミっちを飯に誘う」
「ああ?」
「断られなかったら、実験は終わり。でも、万が一断られたら、ケンチンがタケミっちを誘って、タケミっちがどういう返事をするかを実験する。ケンチンが言うたまたまかどうか、はっきりさせようよ」
「おいおい。たかが飯で、そこまでやることでもねぇーだろ?」
「俺にとってはそこまでのことなの! 俺だって、タケミっちと飯を食いに行って、週刊誌に一緒の写真を撮られたい! ケンチンだけずるい!」
マイキーの言う事は支離滅裂で「東京卍会の良心」と呼ばれるドラケンは眩暈がしてきていた。しかし、マイキーは一度言い出したら人の言うことを聞く人間ではないのをドラケンは知っていた。もう実験とやらに、付き合うしかないのだった。
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