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桜霞
2022-10-01 17:01:01
52354文字
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【twst夢】フライパンは無敵
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三分の一の純情なすのびずむ
#twst #twst夢 #not監督生 #女監督生 #オリ女主 2020/08/24にpixivに投稿したものの再掲です。
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ホームルームが終わってすぐの購買は、何かと混んでいる。売り手がサムしかいないので当然だが、それ以上にこの夕方の時間帯は買い物客で賑わうのが購買部だった。
ミニマーケット程度の敷地しか無いくせに、品揃えだけは大きなショッピングモールにもひけを取らないのがサムのミステリーショップである。本日の夕飯の材料を一通り調達したラギーは、ふと、見慣れた姿を視界に留めた。
「、お」
「あ」
ラギー先輩、とガタイの大きい後輩、ジャックが頭を下げる。大きな白い尻尾がひょんと揺れた。
「ジャックくん、と。皆さんお揃いで
……
ってわけじゃないんスね」
「ども」
「ッス」
エースとデュースが軽く会釈する。ラギーは足元のグリムを見ながら「ユウくんは仲間外れっスか?」といつもの調子で訊ねた。
「や、あいつ、フロイド先輩の機嫌が良いうちにやらなきゃいけないこと済ましてくるとかなんとか言って、厨房に行ったんスよ」
「俺ら、これから様子見に行こうって言ってて」
「あー
……
」
そうなんスかぁ、とラギーは何やら思案する素振りを見せた。
そうして不意に、にぱっ! と人のいい笑顔を浮かべる。
「んじゃ、それ、オレが行っとくッスよ。夕飯作んなきゃなんねーし、そのついでに」
ラギーのなんてことは無い提案に、三人と一匹は顔を見合せた。
「
……
なんスか。たまには親切にしてやろーと思ったのに」
「ブッチ先輩、それって」
すぱこん、とエースが小気味よく何か言いかけたデュースの頭を叩いた。
「いやーありがてぇっす!! 正直フロイド先輩はオレら一年にはちょっとおっかねえし!!」
「ウチの子分を宜しく頼んだんだゾ!!」
「はいはい、任されたっスよ~」
「お疲れ様ッス」
最後にひらりと手を振って、ラギーは校舎の方へ歩いていった。
購買部が見えなくなってから、ラギーはスマホを取り出した。
そして、とある連絡先を呼び出す。
「
……
シシッ、」
コール音が響く最中、ラギーはにんまりと悪どい笑みを浮かべた。
西陽の差す校舎の、知っている者でなければ見つけられないような一区画に、喫煙スペースはあった。
獣人など、鼻の利く生徒は特に近寄らない場所だ。そこはあらゆる匂いに満ちていて、慣れていなければ噎せてしまうような場所だった。
魔法士で喫煙者ともなれば、自分で薬草の類をブレンドし、好みの煙草を作る者も少なくない。ニコチンなどを使わない分、中毒性は低く、依存症になる可能性も高くない、とされている。
クルーウェルなどは特に、市販のものは滅多に吸わなかった。時折気が向いた時や自分で作る手間暇が惜しい時は既製品に頼るが、それ以外はほぼ自作の煙草を専用の薄い紙に巻いてシガーホルダーに挿して煙を吸う。
この時期の夕焼けは光の色が強い。太陽は沈む時に燃えるような紅色に染まるが、ナイトレイブンカレッジの夕暮れはどちらかといえば小麦の黄金の稲穂に似ていた。
それをぼんやり眺めながら、煙を吸う。そして吐く。
クルーウェルの、数少ない、ぼうっとする時間だ。
「こら」
不意に、クルーウェルは声を発した。
そうして煙草の灰を少しばかり落とし、またホルダーを咥える。
「覗き見とは趣味が悪い」
少しの間があって、そろりと顔を覗かせたのはリンだった。
「
……
その
……
ちょっと
……
通りがかっただけです」
覗き見なんてしてませんもん、と言葉がぼそぼそ消えていく。クルーウェルは喉の奥でくつりと笑い、小さく顎をしゃくってリンを促した。
「
…………
」
少しばかり逡巡したリンは、結局そろりと喫煙スペースに足を踏み入れた。
「この間は嵐のように来て去って行ったじゃないか」
「だって今日はお邪魔かしらと思って、
……
先生、疲れてる?」
「いいや?」
「
……
そう」
「俺に何か頼みたいことでもあるのか。ん?」
リンは小さく目を見開いて、器用に片眉を跳ねさせた。
「お前は誰かに何か頼む時は、いつも相手に余裕があるか窺うからな」
「
…………
」
途端に半眼になるリンが面白くて、クルーウェルは声を殺して肩を震わせた。
兎角、彼女は自分のことを勝手に知られることに慣れていない。
「
……
気遣いってんですよ、そういうの」
「遠慮の間違いじゃないのか」
ああ言えばこう言う。リンは口をへの字にして息をついた。
「で? 何が望みだ、言ってみろ」
「もう高級ブティックなんて連れて行かないでくださいよ。あと服飾品を経費で落とさないで」
「いいから言え。ドライバーか?」
「、
……
えぇ、まぁ
……
そうですけど」
リンはもにょりと口元をまごつかせた。
「その
……
この間、煙草屋さん紹介して貰ったでしょう、シガレットホルダーの
……
そこに私の煙管の手入れに行きたいんです」
「あぁ、あそこか」
年が明け、ボーナスを頂いてすぐに、リンはクルーウェルに頼んでシガレットホルダーを扱う店を紹介してもらっていた。そこでこの世界における煙管らしきものを購入し、現在愛用している。
煙管はとにかく細い上に中の構造が複雑なので、素人では手入れが難しいのだ。リンはさほど吸わないが、それでも定期的に専門店に預けて手入れしてもらう方がいい。
「それぐらい、構わんが」
「あとね、もう一つあって」
「ン?」
「金継ぎのお店」
「金継ぎ」
割れた皿や茶碗などを、溶かした金を糊のようにして繋げる技法のことである。
「皿でも割れたか」
「割れたんですよ。いろいろあって」
「そうか。まぁ物はいつか壊れるからな」
「そうそう」
「いいだろう。その代わり、俺に付き合え」
「
………………
」
リンは、少しの間、押し黙った。
そして、やっとの事で、一言を押し出す。
「
……
どこ行くの」
ふ、とクルーウェルが仄かに微笑う。
「
……
それはその日のお楽しみだ」
「
……
」
クルーウェルの答えに、リンは彼に気付かれないように息をついた。
煙の味が、肺に広がる。
───
……
クルーウェル
……
デイヴィスの。
きん、と胸が引き締められるような、甘いけれど、優しくはない匂い。
───長く吸うのは、悪そう。
……
私には。
リンは瞼を伏せると、歩先をそっとクルーウェルから外した。
「それじゃ、
……
日付はまた追って連絡します」
「あぁ」
また明日、とリンが言おうとしたその瞬間だった。
どたどたと騒がしい足音が勢いよく近付いてくる。二人は反射的に、入口の方へ顔を上げた。
「先生ッ!!」
息せき切って飛び込んできたのはオクタヴィネルの寮生だった。
「サバナが喧嘩してる!!」
「
……
まったく」
クルーウェルは、鋭く長く、煙を吐いた。
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