ゑ/圓堂
2023-08-16 20:34:27
4796文字
Public 管理NO3250本丸
 

【刀剣乱舞】さにごぜTwitterログ01【創作男審神者×一文字則宗】

2021年~2022年にかけてTwitterに上げたさにごぜの超SSのまとめです。ピクブラに上げていたのですがいつ復旧するか謎なのでこっちにも置いときます。
男士ごはんタグ参加小話『あじわふ』
則宗実装一周年小話『新たな幕開けに、どうか今は祝福を』
初めて刀ステ見てカッとなって書いた小話『誰が為に』
煙草ネタが書きたかっただけの小話『メロウフレイヴァー』
の四本立てです。


【新たな幕開けに、どうか今は祝福を】

「あんたいつまでお神酒飲んでるんだ、正月はとっくに終わってるぜ」

もうじき本丸に住まう者達の大半が寝静まろうかとしている時分に、まだ煌々と明かりの点いた大広間に気付いた主が、障子戸を開けた先に居た一文字則宗へと呆れた声を投げかけた。ゆるりとした内番姿の彼は唯一振り、がらんとした大広間で火鉢を占領しながらどこに隠し持っていたのか、正月用に買ってあった酒を手酌で呷っていたようだ。

「何を言う、僕はいつでも正月の監査官だぞ」

少しばかり血色の良くなった顔で普段通りに悠然と主に笑いかけると、一文字則宗はそんな所に突っ立ってたら寒いだろうが、と続けながら主をひらひらと手招きした。あんただけぬくぬくしときながら何を言うか、と主も負けじと返しながら、大広間の壁に凭れる彼の隣に腰を下ろす。

「そういやそんな事を言ってたな。あれからもう1年経ったか、早いもんだ」

これまたどこに隠し持っていたのか、空いた盃をしれと差し出して主に酌をする一文字則宗の手元を何ともなしに眺めながら、主はぽつりと呟く。

「光陰矢の如しとはこの事だな。もう何年もここでこうしているような気がするんだがなぁ」

主の盃を満たした後、再び手酌で酒を注ごうとしたのを主に制され、今度は主が酒を注ぐのを同じように眺めながら、一文字則宗はのんびりと答える。
どちらからともなく盃を掲げ、何となく発せられた主のお疲れさん、という音頭と共に盃を呷る。

「同感だ。でもあの日の事は忘れられねぇな」

主は手酌でさっさと二杯目を注ぎながら言葉を零す。
澄んだ液体を見つめる瞳は、水面のように少し揺れているようだった。

そうだな、それは僕とて同じさ。あの日から僕にとって初めての主が出来たのだからな」

一文字則宗の言葉に、主はゆるりと彼に視線を向ける。
主の顔一面を、形容し難い感情の色が染め上げている。

一文字則宗の硝子玉の瞳には、それはまるで初めて彼と出逢った日と同じ表情に映る。
心地好い酒気も消え失せそうなほどの心の騒めきを、それでも一文字則宗は胸の内にぐっと収めた。
そして、敢えて陽気に酔いを孕んだ快活な笑い声を上げた。

「うははは、お前さん何て顔をしてるんだ。さ、じじぃの長い正月に付き合っておくれ」

一文字則宗が注げと言わんばかりに空の盃を主へと差し出す。
主は僅かに眉間に皺を寄せ盃を見つめた後、やれやれと溜息を吐きながら自分の盃を畳の上に置くと、酒瓶を取り上げた。

「全く、主を揶揄うもんじゃないぜ」
「揶揄うとは失礼な奴だ。本心だよ」
「余計に質が悪ぃ」
「うははは、生憎の性分だ。諦めてくれ」

愉快に笑う一文字則宗の上気した頬を眩し気に見つめながら、まぁ今後ともよろしく頼む、と主は告げる。
こちらこそだ、と一文字則宗はその瞳を真っ直ぐに受け止めてゆったりと笑ってみせる。

いつか訪れるであろう最後の日に今日だけは目を背けた彼らの、ささやかな祝宴が幕を開けた。