ゑ/圓堂
2023-08-16 20:34:27
4796文字
Public 管理NO3250本丸
 

【刀剣乱舞】さにごぜTwitterログ01【創作男審神者×一文字則宗】

2021年~2022年にかけてTwitterに上げたさにごぜの超SSのまとめです。ピクブラに上げていたのですがいつ復旧するか謎なのでこっちにも置いときます。
男士ごはんタグ参加小話『あじわふ』
則宗実装一周年小話『新たな幕開けに、どうか今は祝福を』
初めて刀ステ見てカッとなって書いた小話『誰が為に』
煙草ネタが書きたかっただけの小話『メロウフレイヴァー』
の四本立てです。

【あじわふ】

「主、晩飯の時間だぞ。本当にお前さんは呼びに来ないと出てこんな」

執務室の障子戸を開けた一文字則宗の呆れ声に主が振り返ると、口調に違わぬ顔で腕組みをし仁王立ちした内番着の彼の姿がそこにあった。
ああ、もうそんな時間か、とうんと伸びをして、主が先程まで噛り付いていた作業机を離れて立ち上がると、小気味よい関節の鳴る音が一文字則宗の耳にまで届く。

「お前さん、いつもこの調子か。少しくらい身体は動かした方がいいぞ」
「全くだ、動かす暇さえあればな」

スリッパを擦る音を二人分ばらばらに奏でながら、肩を並べて大広間までの廊下を歩く。
いつも夕食を皆で囲む大広間に近付くにつれ、鼻腔を擽る食事の香りが主の食欲を掻き立てた。

「お、主が来たぞ」
「やっとかよー、待ちくたびれたぜ」
「じゃあ冷めない内に頂こう。さ、則宗殿は主の隣へ」

大広間の障子戸を開けると、本丸に在籍する刀剣男士達がずらりと一人も欠ける事無く揃っており、主の姿を見るなり数人がやいのやいのと好き勝手に声を掛ける。主はそれに適当な相槌を返しつつ、一文字則宗を伴い自分の為に空けられた場所へと腰を下ろした。一方で一文字則宗は、しれと自身を主の傍らに導いた近侍の蜂須賀虎徹の台詞に僅かな違和感を感じつつも、取り敢えずは黙ってそれに従った。

「頂きます」

皆口を揃えて、その日自分の糧となる命へと敬意を払う。
今日の夕食はチキンソテー、ジャーマンポテト、マカロニサラダ、ミネストローネと洋風のラインナップだ。食材などは現世の政府から支給されている為、刀剣男士達が見た事も無いような食材も調達可能である。最初は戸惑っていた刀剣男士達も今ではすっかりとそれに慣れ、食事当番も率先して使用している。

「ジャーマンポテト久しぶりに食ったな」
「好きなのか?」
「ああ、現世に居た頃はよくおふくろが作ってた。そういえばあんたこういうの食った事あるのか?」
「ああ、政府にいた頃に一度だけな」

思い思いの相手と会話が弾む広間の中で、淡々と箸を進めながらも主と一文字則宗が静かに言葉を交わす。

ここの飯は旨いな。政府のとは大違いだ」
「そうか、なら何よりだ」

先程よりも少しだけ穏やかな声音になった主を一文字則宗が横目でそっと窺う。草臥れた容姿に上塗りされた整った横顔が機嫌良く食事する姿に、一文字則宗の胸の内は形容し難い騒めきを覚える。
口に運ぶ食事を美味しいと感じる事も、今自分の主として隣に在る男の事を一つ一つ知る度に不思議な感情を抱く事も、どちらも一文字則宗にとっては新鮮で、味わい深い。

(全く、人の身のままならずも愛おしきかな、といったところだな)

「僕も一つ作ってみようかな」
「作ってみようかなじゃないぞ、いずれ当番は回ってくるからな。心配要らねぇさ、これくらいなら俺だって作れる」
「何だお前さん、料理出来るのか?」
ものぐさな自覚はあるけどな、そんなに驚いた顔をされると流石に傷付くぞ」

うははは、悪い悪い、と一文字則宗は笑う。その笑顔の裏で、また一つ主の事を知り、不可思議な心中の想いを密かに彼は咀嚼し、飲み下した。