【コトモア】吐露【カカモア】

モア海2の世界観で椰子の実族の息子と無垢の勇者の意思疎通を図る話。軽度のマウモア要素含む。映画ネタバレ独自解釈捏造要素有。





人気の少ない場所に移動したモアナとコトゥは早速膝を突き合わせ改め自己紹介をはじめた。
「私はモトゥヌイのモアナ。村長トゥイの長女。あなたは?」
【ポコッ】【カカッコッ】【コポポッ】
リズミカルにココナッツの体を叩き伝えようとしているのは分かる。だが、その伝えたい何かが詳しく理解できないもどかしさにモアナは軽く握った手を口元に添え眉間に皺を寄せた。
懸命に相手も伝えようとしている。伝えようとしているが、どうにもモニやケレのように上手くいかない。相手を知ることは大事なこと。他者を慮る気持ちが無ければ、要らぬ誤解を招き不必要な争いごとに発展する場合だってある。
何よりモアナは今目の前にいる相手と仲良くなりたくて必死に相手の言葉を理解しようとしていた。
その真摯な気持ちがコトゥにも伝わったらしく、彼はただ体を叩くだけではなく指を何度も指したあと体を叩き始めた。
来た道もとい茂っている椰子の木を指差し、モアナを指差して、自分を指差すをくり返すコトゥ。
当初モアナはココナッツの姿をしているので椰子の木を指していると考えていたが如何やら違うようだ。小さな指で指す方向には、トゥイとシーナ、大艦隊で来た恐らくカカモラ族のトップであろうカカモラに通訳者のケレが向かった集会所がある。
集会所、私、そして自身をくり返し指差すその意味。モアナが理解するまで辛抱強く同じことをくり返すコトゥにモアナは一つ一つ確認するように口を開いた。
「集会所、いえ、それだったら意味が繋がらない。集会所にいる人物……、父と母、それにケレ。あなたと私の共通点時には見た目での判断も必要よね」
【?】
「向こうを指差しているのは、海賊カカモラのトップという意味かしら?」
【ポココッ】
「当たりね!? 次に私を指差したのは、あなたはそのトップの子供ってこと?」
【ポコポコッ】
「また正解っ! ということはあなたは海賊カカモラのトップの子供で、えーっと……多分、あなたの名前を私に教えてくれて、る?」
謎解きをしている楽しさではしゃいでいるのも否めないものの、真摯に向き合い言葉を理解しようとしているモアナにコトゥが骨メットを上げ丸い瞳で彼女を見上げた。
やはりケレ並みの読解力は難しいか、なんてコトゥが意気消沈する暇もなくモアナは何か閃いたようで眇めていた目を意味ありげに投げかける。
「あなたって私達の言葉が分かるのよね?」
完璧に理解可能かはさておき、意味は分かるの意を込めてコトゥが体を叩けばモアナの瞳が陽の光を受け揺らめく海面のように輝いた。水面の揺らめきを受け煌めく馴染み深い色味。それをよく見たくてコトゥは骨メットを上げた。
刹那、その瞳の色に思わず見惚れ停止していたコトゥの思考がモアナが大きく開けた自身の口を指差す仕草に怪訝な面持ちで見上げることになった。
「あー」
先程とは打って変わって何を伝えたいのか分からない。抗議の意を示すべく、また指差しでコミュニケーションを取ろうとするコトゥにモアナが待ったをかけた。
「違う違うの。さっきのあなたが伝えたかったことは、ちょーっと自信ないけど”自分はカカモラ族首長の息子、名前は──”って思うの。でも、私はあなたの名前の部分を理解するのが難しくて、ね? それでなんだけど、私が一音ずつ発声するから”正解!”ってのを教えて。どう?」
ようやく合点がいったコトゥが”了”の意味合いを含め体を一回叩き──、そこからモアナの洞察力と推理力が試されるコトゥの名前当てが始まった。



──コー。あ、一文字目は”コ”ね
──次は、ト? 合ってる? 名前は”コト”じゃない? まだ続きがある?

──”ウ”? え?違う? 違くない? 惜しい?
──ん~”ヴ”? 濁らない? それじゃあ……”ゥ”? 当たり!? 良かった! 次は終わり? ”ゥ”が一番最後?
──それじゃあ、始めから……



「あなたはカカモラ族首長の息子で、名前はコトゥ。正解?」
窺うように上目遣いで見詰めるモアナにコトゥは満足げに体を小気味よく叩いた。モアナは達成感もさることながら、イライラせずに付き合ってくれたコトゥに深い笑みを称え礼を述べた。
「私に付き合ってくれてありがとう」
【パコンッ】
「ふふっ。ケレみたいにもっと話せるようになりたいから、まだお話続けない? あなたのこと、カカモラ族のこと教えて欲しい」
【ポコポコ】
「ありがとう。それじゃあ……
そして、ここからがモアナの本領発揮だった。海綿の如き吸収力でカカモラ語を習得するに終わらず、後継者あるあるの愚痴を言い合うほどフランクなカカモラ語まで覚えたのだった。
「もう言われなくなったけど、はやく孫の顔が見たいとかちょっと……
【長の子として世継ぎ問題は避けられない】
「そうなの。でも、私まだそういうの考えたくなくて
【父の期待の眼差しが時に煙たい】
「嗚呼、やっぱりあるんだ」
【嫌いではないが勘弁願いたい】
「それね、すっごく分かる」
長の子として産まれたモアナとコトゥの二人。その悩みを分かち合える立場の者はそうそういないからこそ、二人は普段胸の奥にしまっている不平不満を小さな愚痴に変換しては零して盛り上がった。
困った顔、渋い顔、笑い顔。ころころ表情が変わるモアナは見ていて飽きない。それどころかもっと色んな表情を見てみたい、そう小さな胸に灯った正体を今のコトゥはまだ知らない。
共通の話題を話してスッキリした面持ちのモアナに抱きかかえられ運ばれ時も、どうにもこうにも隠す気なんて無い両父親の期待の眼差しを口裏を合わせ断った際も、がっくり項垂れる両父親にこっそり笑い合った時なんか名状し難い落ち着いた気持ちがじわり広がる。
今までにないこの感覚の正体は何なのか。存外悪くないこの感じは何処から産まれるのか。
分からない……
モアナに名を呼ばれた時から骨メットは終始上げっぱなし。今も尚視界良好のまま砂浜から手を振り見送るモアナをコトゥもまた控えめに手を振り返すしか出来なかった。