こꯓレ)ろ🌟🦄🌈🌟
2025-01-09 20:13:10
13181文字
Public コノチャ30×16♀
 

いつか恋人のキスを。②

30コノ×16チャ♀→42コノ×28チャ♀



 ⑥

 コノエが考えを改めたのはファウンデーション事件でアークエンジェルが沈められたからだ。
 チャンドラが死んだと思った時の絶望や、その後生存が確認された時の安堵。事件が解決した後も世界情勢は未だ不安定で、お互い軍人として最前線で戦っている以上いつ死んでしまうかわからない。
 折しも、失われたアークエンジェルに代わる地上部隊用旗艦の建造にハインラインが技術協力することになり、ノイマン大尉の操舵技術について興味があるとオーブ軍に突撃して行った結果、二人は親交を深めた。
 オーブ出張からミレニアムに戻ったハインラインの報告によれば、ノイマン大尉とチャンドラはただの同僚で、恋人関係では無いという。
 ノイマン大尉もチャンドラ中尉もフリーだそうですよ。というハインラインの情報が確かならコノエにも一パーセントくらいのチャンスはあるのではなかろうか。
 歳の差が縮まるわけでもない、過去の関係も無かったことには出来ない。今更謝ったところでコノエを選んでくれる確率は低いと分かっていても、過去の事を謝罪し抱き続けた想いを告白して、せめてきちんとフラれたいと思うようになった。

 地上部隊用旗艦建造の間、元アークエンジェルクルーはナチュラル用OSのテストも兼ねてミレニアムに輪番で勤務することになっている。
 チャンドラはCICとして極めて有能だったし、ハインラインの言を借りれば「ナチュラルでありながらコーディネイター用のOSも扱える卓越した技量がある」とのことなのでミレニアムクルーの教導要員として他のクルーよりも長く乗艦させることに成功する。

 とは言え、チャンドラがミレニアムに乗艦してきた当初は明らかに避けられていた。目も合わない、業務上必要ではないタイミングで話しかけようとすると逃げられるの繰り返しだったので慎重に距離を詰めるところから始めた。
 艦長の職権を遺憾なく私的利用してチャンドラのスケジュールを調べ、食堂で偶然鉢合わせたふりをして挨拶したり、オフの時間がかぶるようにして同じ時間にトレーニングルームに行くなどしてせっせと話しかけ、様子を伺い、接点を持ち、謝罪と告白のタイミングを伺う。
 そうして職場を同じくしてひと月、コノエの地道な努力が漸く成果を見せてきた。艦内で会っても足早に立ち去られることがなくなり挨拶以外に雑談が出来るようになった。
 先日はコーヒーを奢らせてもらえたし、五分ほど会話が続いたのは大きな進展だ。明らかに距離が縮まってきた。次は同じテーブルで食事が出来たら良いのだが。
 休憩中のコノエは次の邂逅計画を立てるべく自室のデスクでチャンドラのスケジュールを確認する。
 彼女は明後日でミレニアム勤務が一旦終了し七日間の休暇となっており一度地球に降りる予定になっている。休暇が終わればまたミレニアムに戻ってくれるが、七日間も姿が見れないのは寂しい。自分もオーブに用事を作って一緒に降りられないだろうか。三日程度なら調整は可能だが。
 端末で自分のシフトが変更できないかを検討しているとチャンドラからの着信が入った。
「うわっ」
 正にチャンドラの事を考えていたところだったので、驚いて声が出てしまったし端末を放り投げてしまう。
 低重力の室内でふわりと浮いた端末に慌てて手を伸ばし急いで応じる。
「コノエだ」
『お忙しいところ申し訳ありません。チャンドラ中尉です』
「ああ、何か用かな?」
『新造艦のCIC運用についてコノエ艦長にご意見を伺いたい点があります。本日どこかでお時間いただけますか』
「それなら今からでも対応出来るが」
『今からでもいいんですか? ありがとうございます、場所は
「艦長室に来てくれ」
『了解しました』
 端的なやり取りで通信が切れて、コノエはしばし端末を見つめた。何とか平静を装って対応できたが心臓がばくばくしている。今からこの部屋にチャンドラが来る。念願の二人きりというシチュエーションがいともあっさりと叶う。
 上司と部下で、同じ艦のブリッジで働く身だし、仕事の話をするだけなのだからありえなくも無い展開ではあるのだがひと月前は同じ空間に居ても目も合わせて貰えなかったのに。

 数分後、チャンドラはタブレット端末を抱えて艦長室にやってきた。
 チャンドラが端末で資料を見せながら何かしら説明をしているが内容が全く頭に入ってこない。デスクを挟んでほんの一メートルほどの距離にチャンドラが居て、密室に二人きり。告白するなら今では?
 悶々と悩んだ末、コノエは意を決してチャンドラに声をかけた。
「チャンドラ中尉」
「コノエ大佐」
 だが、同時にチャンドラからも名前を呼ばれてしまい二人の声が重なった。
「え」
「あ
 動揺の声がまたハモる。
「遮ってしまってすまない」
「いえ、こちらこそすみません」
「先にどうぞ?」
「艦長がお先にどうぞ」
 お互い譲り合って話が進まなくなりそうだったが、コノエの話は業務に関係のない極めてプライベートな要件である。どう考えても仕事の話が優先だ。
「いや。私の話は後でいいんだ」
「そう、ですか。では
 チャンドラは持って来た端末を胸の前で抱きしめるとコノエを真っ直ぐに見つめてくる。
「実は、CICの話は艦長に会うための口実で、申し訳ありません! その、業務と関係ないことを質問させて下さい!」
「え?」
 想定外の展開に驚いたが、チャンドラの勢いは止まらない。
「さっきウィンザー中尉と食事してて聞いたんですけど、コノエ艦長はご結婚されてないって本当ですか?」
「そうだね、結婚歴はないよ」
「プラントでは婚姻統制があったんじゃないんですか」
「結婚する気になれなくて、そういうのは全部断ってきたんだ」
「恋人はいますか?」
「いや」
「今はフリーって事ですか」
「ああ」
 全ての質問に端的に答えるとチャンドラの頬がみるみる赤らんで、コノエを見つめる瞳が熱をはらんだ。ベッドの中で組み敷いた時のことを彷彿とさせる表情をしている。
「あのっ、自分、……相変わらずチビで、メガネだし、もう若くもないけど、そのっコノエ艦長がもし良ければの話なんですが、一回だけでもいいんで昔みたいに抱いて貰えませんか。もちろんお金なんて要らないんで!」
 上擦った声で一気に言ってから、ぎゅっと目を瞑って深々と頭を下げるチャンドラ。
 初めてコノエに抱いて欲しいと言ってきた日のことを思い出したが、彼女はもう生活に困っているわけでもないし、信頼できる仲間も居場所もある。コノエに縋る理由はない。
 ならばどうして、自分のような年の離れた男のところに来て抱いて欲しいだなんてと考えれば理由なんてそういくつも思い付くものではない。
 コノエは急に体温が上がったのがわかった。歓喜に声が震えないように慎重に言葉を紡ぐ。
「顔を上げてくれ。実は私も君に言いたいことがあるんだ」
 コノエは立ち上がってデスクを回り込みチャンドラの横に立つ。
 チャンドラもコノエの方を向いて、潤んだ青い瞳で真っ直ぐにコノエを見つめてくれた。
 チャンドラのあの日と変わらぬ小さな両の手を握りしめてずっと伝えたかった想いを口に出して伝える。
「まず謝りたい。金を渡した見返りに君の身体を好きにするべきではなかった」
「それは、自分が言い出したことで
「それでも私は君が大人になるまで待つべきだった」
「でも、自分は」
「君が好きなんだ」
「え
「十六歳の君が人違いで話しかけてくれた時から、ずっと君だけが好きなんだ。愛しているからこそ、大切にすべきだった」
「あ、あいしてる?」
 ぽかんと口を開けてコノエを見上げてくるチャンドラが可愛くて仕方ない。
「昔のようには抱けない。金を渡した見返りに身体を許してくれる関係では嫌だ。一回限りの関係なんて絶対ダメだ。これからは恋人として抱きしめさせてほしい」
「うそでも、だって、自分はナチュラルで、歳だって離れててアレクセイさんには絶対つりあわなくて
「それを言うなら私だってコーディネイターで、君よりずっとおじさんで、前途ある若者に選んでもらえるような存在ではないだろう?」
 眼鏡の奥の青い瞳からぶわっと涙が溢れた。声も、コノエが握りしめている小さな手も震えている。
「久しぶりに名前を呼んでくれた。ありがとう、ダリダ」
「ッ! アレクセイさん、大好きって言って良いんですか? 迷惑にならない?」
「もちろんだ。私も君に愛してると言いたい。抱きしめても?」
 コノエが尋ねると、チャンドラの方から抱きついてきてくれた。
 顔にあたるふわふわの髪の感触も細い腰も昔と変わらずあたたかくて柔らかい。胸のボリュームだけは少し増えた気がするが。
「ずっと大好きでした。また会えて嬉しいです
「私も嬉しいよ。ダリダ、キスしたい」
 やっと想いが伝わった。それどころかチャンドラからも同じ想いを返してもらった。
 嬉しくてコノエがねだると、チャンドラの方からキスをしてくれた。

 それは夢にまでみた、恋人同士の甘いキスだった。