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hiro_kitaumi
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FF14二次創作
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海兵魂、胸に抱き
FF14の二次創作です。
時間軸は暁月のフィナーレ(6.0)クリア後、パッチ6.1「新たなる冒険」の開始直前を想定。
学者ジョブクエストのネタバレを含みます。
1
2
3
4
あおーい空、しろーい雲。
ああ、今日もいい天気だナァ。
牧草地に大の字に転がり、アゼルは空の青と流れる雲を見上げた。
呼吸は切れ切れ。激しく上下する胸の動きを落ち着かせようと試みて、深呼吸をしながら雲の動きを目で追いかけた。
「うおおおおおお、海兵魂いいいいい!!」
脇の街道を全速力で駆け抜けて行くのはアルカ・ゾルカ。少し先の交差点まで走り抜き、速度を徐々に緩やかにした彼は、最後にこてりと前のめりに倒れて動かなくなった。
「で、どうしてこういうことになっているんだったかな
……
?」
話は昨晩に遡る。
「君、明日は空いているかい?」
夜もとっぷりと更け、さすがにそろそろお開きにしようという頃合いに、アルカが持ち掛けてきた。
曰く「久しぶりに外で一緒に汗を流すのはどうだい? もちろん海兵団式で」それから「思い切り体を動かせば、案外いろんなことがスッキリするものさ」
先程アゼルが見せた様子に彼なりに思うところがあったのだろう。その心遣いに感謝をしながら、酔っている勢いにも任せて、アゼルは二つ返事で頷いていた。
そして翌朝。テンペストの海溝よりも、深く深く後悔することになるのであった。
重い体をのそりと起こし、まず感じたのは鈍い頭痛。そして胃の不快感。このなんとも言えない気持ちの悪さは間違いない、二日酔いというやつだ。
酒にはそれほど弱くはないはずではあるが、昨日は少々深酒をしてしまった自覚がある。この状態で激しい運動、しかも海兵団式なんてとても無理だ。アルカにも迷惑をかけてしまうだろう。
さて、どうしたものか。
上手く回らない頭で考えた後、傍に置いてあった戦術魔導書を手繰り寄せて、フェアリー型の使い魔リリィベルを呼び出した。
そして、指先にちょこんと座った彼女に向かい「こんなことで呼んで大変申し訳ない
……
」大層気まずい顔をしながら、自分自身に回復術を使うのだった。
リリィベルの癒しの術が体に染み渡る。解毒の効果で不快感が消え、思考も次第にクリアになっていった。
感謝を伝えて彼女を還した。それからアゼルは急いで身なりを整え、アルカとの約束の場所へ向かった。
同じくらい飲んでいた彼は大丈夫だろうか。
少々心配したのだが、ゼファー陸門に現れたアルカのいつもと全く変わりのない様子に「さすが海都の男は鍛え方が違う」と心の内で賛辞を贈るアゼルであった。
アルカと合流して街の外に出ると、まずは肩慣らしに街道周辺の魔物を掃討することにした。手配魔獣や石窟に巣食っていた野盗達を、コンビネーションも鮮やかにあっという間に蹴散らしていく。その後は海兵団の訓練で慣れ親しんだ、短距離と長距離を織り交ぜた全力の走り込みを行なうのだった。
そして現在。
ようやく呼吸が落ち着いてきたアゼルの横に、いつの間にか復活していたアルカがやってきて、同じように大の字になって寝転んだ。
「いやー、走った走った。こういうのも、久しぶりだね」
首肯して、アゼルの脳裏に懐かしい記憶が蘇ってきた。
それは、アゼルとアルカ、スリト・カリトの三人でトンベリ病治療の研究と調査に奔走していた頃のこと。
感染源たる妖異ビトソに対抗するため、アゼルとアルカはニームの海兵軍曹ハルガ・トルガの特訓を受けることになった。「本物の海兵団から直々に教えを受けられる!」と喜び、意気揚揚と臨んだ二人だったが
……
。
鬼軍曹の容赦のない訓練メニューと矢継ぎ早に浴びせられる罵り声に、息も絶え絶え、自尊心をも砕かれかけた。二人は負けじとなんとか喰らいつき、ついには海兵たちの戦技を身に着け、不屈の海兵魂を骨の髄まで染み込ませることにも成功したのだ。
隣のアルカも同じことを思い出していたのか「あの時よりは、今日は、だいぶ健康的だけどね!」呼吸を整えながら言う。
「サラマンダー油も取りに行くか?」
「やめてよね、謎のオジサンのヌメヌメを思い出す
……
!」
アルカがわざとらしく身震いするのを見て声を上げて笑った。
「懐かしいな」
「うん、もう随分昔のことみたいだ。あれも良い思い出だよ。まぁ思い出すと、ちょっと吐きそうになるけれど」
「はは、違いない」
二人が初めて出会ったのは、リムサ・ロミンサの斧術士ギルドだった。
力自慢の揃う斧術士ギルドにおいて「頭脳派」を自称していたアルカ・ゾルカ。第五星歴に存在していたニーム海兵団の強さの秘密を解明できれば斧術士の利となり、彼のことを「頭でっかち」と揶揄する周囲を見返す事もできると考えていた。一念発起した彼は、海兵団の調査のために魔道士の派遣を巴術士ギルドへ依頼する。
そこで派遣された巴術士というのが、まだ駆け出し冒険者の頃のアゼルだった。
この時はアゼルも一人前の巴術士としてようやく一歩を踏み出したばかり。半ば厄介事を押し付けられる形で回されてきた案件は、正直に言えば最初はただの興味本位ではあったが、二人で調査を進める内にアルカとは不思議と馬が合うことに気が付いた。
「知識は純粋な力を上回る」アルカが掲げるこの信条は、己にも通ずるところがある。それに気付いてからはアルカ自身に一目を置くようになり、彼の真っ直ぐで熱い心根も好ましく思うようになった。
アルカの方も同じことを感じていたのか、互いの口調が砕けたものに変わるのにそれほど時間はかからなかった。
「アルカとも、もうだいぶ長い付き合いになるんだな」
ヴィエラとララフェルのでこぼこコンビと呼ばれ、ラノシアを奔走した日々を思い出す。
フェアリー・リリィベルとの出会い。ニーム遺跡群を巡り彼女の記憶を蘇らせる過程で、アゼルはソウルストーンから軍学者の力を得て修練を積み、アルカは古の戦技を蘇らせることに邁進した。
その後にスリト・カリトと出会い、彼を知り、トンベリ病の調査が始まった。紆余曲折の末にビトソを討伐した二人は、次代の海兵団を担う「新生海兵団」として鬨の声をあげたのだ。
あの頃の出来事に思いを馳せると胸の奥が熱くなった。
自分が学者として、冒険者として足場を固められることができたのは、アルカがきっかけをくれたおかげだ。海兵団を巡る冒険の中で、彼から大事なものをいくつももらった。そして今、このように何も気負わずに過ごす穏やかな時間もその一つだ。
だからそっと「ありがとう」
自然と唇がそれを紡いだ。
訝しげにしたアルカが「なんだいアゼル、今日は奢らないぞ」と言い終わる前に、アゼルはひょいと反動を付けて立ち上がる。その場で数回跳ねて地に足を慣らし、
「もう一本行ってくる!」
大地を蹴って全力で駆け出した。
彼らの絆、海兵魂を胸に抱き、風を切ってまっすぐに。
間もなくアルカもその背を追って走り出す。
高地ラノシアへ向かっていく二つの影に、午後の太陽が祝福の光を送っていた。
リンクパールの呼び出し音が聞こえたのは、体力を使い果たしたアゼルが地面に倒れ伏してしばらく経った頃。
「はい
……
え
……
でも今日は
……
わかった、すぐ向かうよ」
隣でアルカが応答しているのが聞こえてくる。通話を切ると、彼は申し訳なさそうにして言った。
「ごめん、ギルドからの呼び出しだ。今日は非番だって言ったんだけど、ちょっと知恵を貸して欲しいって言われちゃってさ」
「俺も手伝おうか?」
立ち上がろうとするアゼルを、アルカは手で制した。
「大丈夫。せっかくここまで来たんだ、君はブロンズレイクでゆっくり温泉に入って行きなよ。あと、セトト達にも会って行ってほしいかな」
肩を竦め、「本当はこのあと二人で行こうと思っていたのだけどね」と残念そうな声。
たしかに、今の疲れた体にブロンズレイクの温泉は魅力的だ。久しぶりにセトトとスリト・カリトの顔も見たい。
「わかった、そうさせてもらうよ。また今度、その報告会でもしよう」
エールを呷る真似をする。
「うんうん、やろう!」
二人は幻想のジョッキを空中で重ねて笑った。
「僕も、もっと強くなる。君が困った時に、君の隣で力になれるように
……
じゃない、なるよ、絶対! うおー、海兵魂いいいい!!」
そうして何度も手を振り、アルカは去っていった。
一人残され静かになると、途端に寂しさが顔を覗かせてくる。
途中解散となってしまったのは残念だが、彼が仲間達から頼りにされているということを知れたのは嬉しい。相棒として誇らしい。
アゼルは地面に後ろ手をつき、大きく息を吐き出した。
『思い切り体を動かせば、案外いろんなことがスッキリするものさ』
友の声が脳裏に蘇る。なるほど、たしかに体は疲れてはいるが、気分は不思議なほど晴れやかだ。
きっと彼と一緒に流した汗が、心の内の昏いものも洗い流していったのだろう。
気付けば太陽は傾き始めている。西陽に一瞬目が眩んだが、今はそれも心地の良いものに感じられた。
「そろそろ、次に向けて動き始めても良いかもしれないな」空を仰いでぽつりと呟いた。
今日のことは、最近なまりかけていた身体にも良い刺激となった。懸念だった傷痕も障りはなく、完治しているようで安心した。
暁の仲間たちは一足先にそれぞれの目指すところに向かい進んでいる。出遅れてしまったが、自分もそろそろ一歩を踏み出す頃合だろう。
ふと、石の家とタタルの顔が頭に浮かんだ。彼女のことだ、何か面白い話を仕入れているに違いない。「遅いでっすよ、アゼルさん!」そんな風に言って、彼女は新しい行先を示してくれるのだ。
そう、新たな冒険の始まりは、いつだってあの場所からなのだから。
「よし、行くか」
まずは、ワンダラーパレスを臨むいつもの場所でスリト・カリト達と会おう。その後はキャンプ・ブロンズレイクで温泉だ。もちろんスパイスワインは欠かせない。
ラノシアをぐるりと巡り、海都に戻る頃にはもう一度アルカに会えるといいのだが。今度はこちらが溺れた海豚亭で奢る番だ。
それからモードゥナへ向かおう。
石の家の扉を開けば、きっと何かの始まりが待っている。
茜色に染まる空。沈みゆく陽の光が、ニームの遺跡群を照らしている。
そこに見えるのは、一つの終わりと、始まりの予感。新たなる冒険の足音に胸を高鳴らせて、アゼルは立ち上がった。
彼は行く。進む道の先で待つ数多の未知を目指して。
END
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