ほにゃっと時空ハイノイ①

ほにゃっと時空ハイノイのざっと書いたやつ





 翌日アーモリーワンに到着。早速シュミレーターでのデータ取りに入る。
 作業を進めるうちに、ある程度の計器の確認はするものの、かなり直感的に操舵しているノイマン大尉と彼が必要としている情報をかなり高度なレベルでまとめて提示しているチャンドラ中尉のコンビネーションの精度の高さに改めて直面した。
 チャンドラ中尉は各種敵機からの攻撃を分析してどの程度の被害が出るか、どのルートを選べば最小の被害で収まるかを計算している。
 もちろん苛烈な交戦状況で被弾しないということはあり得ないし、確率的に比較的安全と思われるルートなど知れていて、それこそ針の穴を通すがごとくというポイントを計算してノイマンに提示している。
 この結論に至るまでの多岐に渡る情報の分析と予測演算、数秒毎に変わる戦況に対応して間断なく対応し続けるチャンドラ中尉の対応能力には目を見張るものがある。
 ミレニアムで言うとブリッジクルーの三人分くらいの働きを一人でしていると言って良い。
 更にここにノイマン大尉の技術が加わって、あり得ない機動を見せている。本当に針の穴を通すレベルの緻密な操舵を直感的にしている。
 これは、誰にでも出来ることではない。ナチュラルはもちろんコーディネイターであっても相当な熟練度が必要になってくる。
 ハインラインはシュミレーターのコントロールルームで笑いが込み上げてきた。新たな艦は正にノイマンの翼になる。
 彼の技術に合わせてチューンしたワンオフ戦艦。こんなにも心躍る開発が過去にあっただろうか。

「あー、疲れた。しんどい
「おつかれ何なんだよこのシュミレーター死ぬかと思った」
 シュミレーターの中から出てきたノイマン大尉とチャンドラ中尉の第一声がこれだ。
 手始めに撃沈確実な高難度のシュミレーションをやらせたのに疲れたとかしんどいとか言いながらもちゃっかり生還しているではないか。
 これがアークエンジェルクルーかとハインラインの制作意欲は益々高まった。
「やっぱ艦長がいないとちょっと不安だなぁ」
「わかる。一瞬どうしたらいいか悩むよな」
「艦長ならどうするかなって考えるから反応が遅れるっていうか」
「俺たち、結局ラミアス艦長の判断に頼りきりだからな」
 会話を聞いていると耳を疑った。この反応速度でまだいつも通りの実力ではないらしい。
 ラミアスもアーモリーワンに呼ぶべきだったかと一瞬後悔したが、彼女には何故か嫌われているし、コノエからも彼女に対しての口のきき方には特に気をつけろと散々注意されているから難しいかもしれない。
 それに二人のデータを取るだけでも十分に意義はある。
 新造艦の操舵士はノイマンに内定しているし彼にとって一番使いやすくチューンナップした状態で引き渡すのが第一の目的なのだから問題はない。
 一応、ノイマン以外の操舵士が使う用の設定も作っておく必要があるがそれはモルゲンレーテの担当者に任せても良い。
「あー目が疲れた。情報量多かったなぁ。さすがにこのシュミレーションはオーブの設備じゃ無理だったかもな」
「確かになぁ」
 チャンドラがコントロールルームの端の席に座ってサングラスを外して目頭を揉みほぐす。
 ノイマンも横に行って腕を上げて軽くストレッチを始める。
 二人に渡したハロがポヨンポヨンと跳ねて「オツカレー!」「ガンバレー!」と声をかけている。
 ハインラインが入力していない言葉を喋っているので。昨日の今日で二人はハロに言葉をいくつか教え込んでいるらしい。
「ノイマン大尉ご苦労様でした。シュミレーターの結果は予想以上です。撃沈させるつもりの難易度でしたが見事です」
「え、やっぱり堕とすつもりのシュミレーションだったんですか。通りでえぐい攻撃が来ると思いましたよ
 唇の端をひくつかせて苦笑するノイマン。
「紙一重で避けれた箇所が多かったですね。あと設備が良すぎって言うか、リアルすぎて寿命縮みました」
 チャンドラ中尉もため息をついている。
「前半の敵艦の陣営が隙がないというか練度が高くて本当にいけるコースが限られてたので神経すり減りましたよ。こう、突入角が難しくてあのパターンだと躊躇するとブレるんで一気にガッといかないとダメなんですよね。それからドンッてえーと、こっちのバリアントがくるはずなのでどの程度の時間でトップスピードまで持っていくかも匙加減が難しくて。そこはいつもチャンドラ中尉にある程度演算任せてて最終的にはそれを参考にして、あーフィーリングということになるのですが。あれ、ハインライン大尉、どうかされました?」
 身振り手振りしながら「ガッ」とか「ドンッ」で説明してくる相手がハインラインの周りに居ないので新鮮だった。エンジニアの部下とはまるで異なる表現方法だ。
「ノイマン大尉の説明が分かりにくかったですか? 補足しましょうか?」
 横のチャンドラ中尉が肘でノイマン大尉を小突いてから口を挟んできた。
 その親密な距離感を見て一瞬胸のあたりがズンと重たく感じたが申し出はありがたい。CIC担当のチャンドラ中尉なら少しはハインラインが理解できる説明をしてくれそうではある。
「お願いしますチャンドラ中尉」
「CIC席で敵艦と敵モビルスーツの種類と火器の凡そを把握して位置関係から攻撃パターンをある程度まで絞ります。僚艦の配置を踏まえる必要はありますがこれまでのデータの集積からの試算程度のものなのですがラミアス艦長と考えたアルゴリズムがあって
 ノイマンの解説は要領を得なかったが、チャンドラ中尉の説明はわかりやすかった上に、かなり高度な情報処理を行なっていることがわかった。
 その情報を厳選してノイマンにほぼリアルタイムで送り、ノイマンはその情報からさらに必要な情報をピックアップして操舵をしている。
 そしてこの操舵技術が神技的だ。
 初手で撃沈するつもりのプログラムを出したのに「しんどい」とか「えぐい」などと軽口を叩きながらシュミレーターから出てくるとは彼らのポテンシャルはどれほどなのか。
 ハインラインは気分が高揚するのがわかった。
もっと見たい。もっと知りたい。どこまで行けるのか、自分がより高みに押し上げたいという欲求に取り憑かれた。

♦︎

「ハインライン大尉、休憩しなさい!」
「あ?」
 一戦ごとに設定を変えてシュミレーターを続けていたら四戦目入る前に護衛としてついてきていたトラインに怒鳴られた。
 突然大きな声を出され、止められて不愉快極まりなく振り返ると、珍しくトラインが怒った顔をしている。
「休憩をいれろ。これは命令だ」
「何の権限があって
「副長命令だ」
「チッ!」
 確かに彼はミレニアムの副長、一応コンパスの指揮系統では上官に当たる。命令と言われたら耳を傾けねばならず、無意識に舌打ちが出た。
「ハインライン大尉、上官に向かって舌打ちをしないように。ほら、二人が疲れてるだろう」
 促されシュミレーターから出て休憩中のノイマン大尉を見ると確かに疲れている様子だ。こちらの会話は聞こえているはずなのにハインラインの方を一切見ない。
「時間がないのはわかるが初日からそんなに働かせてどうする」
 確かに、予定していたシュミレーターの予定は初手で高難度模擬戦をクリアされたことで変更してある。連戦となれば集中力が切れ想定通りのデータが取れない可能性も高い。
 考え込んでいると、トラインがアークエンジェルの二人に頭を下げている。
「ノイマン大尉、チャンドラ中尉、申し訳ない
「いえでも確かに事前にもらっていたスケジュールよりかなりハードでしたね」
 苦笑するチャンドラ中尉。
「大丈夫か? こんな長時間シュミレーターしないもんな」
「自分は問題ありません。確かに多少は疲れましたが、ハインライン大尉の集めたい情報の意義はわかります。もしかして、明日以降、事前に通達のあったフローに追加や変更がありますか?」
 チャンドラ中尉に話しかけられ、簡潔に答える。
「ご理解いただけてありがたい。仰る通りです。あなた方は予想以上です。今日の分のデータを見ただけで私の想定が甘かったことがよくわかりました。明日からは予定を刷新したものでシュミレーターをやってもらいます」
「えっ、まだハードになるんですか」
「今日、事前に準備した一番難易度の高いプログラムは終わりました」
「ならもう帰れるんじゃ
 呆然と呟くチャンドラに視線を向ける。するとさり気なくノイマンが移動してチャンドラの前に立ちはだかった。まるでチャンドラを隠すような動作だ。実際、チャンドラ中尉はノイマン大尉に遮られて見えなくなってしまった。
「明日以降のフローについては了解しました。とりあえず一旦食事休憩を取らせていただいても?」
 チャンドラ中尉の代わりにノイマン大尉が質問してくる。
「もちろんです。食堂へ案内します」
「ありがとうございます。実は空腹でして」
「では自分が案内しますね。ハインライン大尉はどうしますか?」
 トラインがホッとした顔をして二人を促す。待機していた護衛の下士官も移動の準備を始める。
「いえ、自分はここでデータの確認を行いますので結構です」
「はい。ではいきましょうか」
「ありがとうございます」
 ノイマンとチャンドラはトラインとほか二名の下士官の護衛を連れてシュミレーションルームを出て行った。
 ハインラインは早速データを確認する作業に入る。
 室内には設計局の若い技師が数名居て、ハインラインの指示通りにデータの整理などを行なっている。
 黙々と作業を進めていたら、技師たちは小声で私語を始めた。
 任せているのはごく簡単な単純作業なので、私語を挟む余裕もあるのだろう。
 ハインラインは明日用の新しいプログラムに集中していたので聞き流していたが、会話の内容はナチュラルであるノイマンを蔑むような内容だったので、無能な技師達には落胆した。
 あの技術の素晴らしさが理解できないとは嘆かわしい。こいつらは今日限りでこのプロジェクトを外れてもらおう、と決めて再びプログラムに集中した。