ほにゃっと時空ハイノイ①

ほにゃっと時空ハイノイのざっと書いたやつ





 ハインラインは実家筋の情報網からオーブがスーパーアークエンジェル級の開発を急ぐという情報を得た。
 エルドアで失ったアークエンジェルに変わり、コンパスのナチュラルクルーが乗り換える新しい艦だ。
 元アークエンジェルのメインクルー達はオーブのアスハ代表に太いパイプがある。アスハ代表の指示のもと、民間企業の皮を被ったオーブ政府御用達の外郭団体であるモルゲンレーテが開発を急ぐ最新鋭艦となれば、予算もシステムも最高の水準。このままではノイマンはモルゲンレーテの作った艦に乗ることになる。
 彼は、僕の船に乗るべきなのに。
 僕なら前のアークエンジェルはもちろん、ミレニアムよりももっと良い船だと言わせてみせる。
 ハインラインは上司であり恩師でもあるコノエに嘆願した。
 艦長室に行って、入室を許可されるなり捲し立てた。
「ザフトのハインライン設計局がスーパーアークエンジェル級開発に一枚噛めるようにしていただきたい。いや、厳密に言えば開発はどこでもいい!どうにかして僕の作った艦にあの操舵士が欲しい。あの操舵士に僕の作った艦を与えて、最高の艦を最高の操舵士が飛ばして、最高の成果を得られた所に立ち会いたい。これは技術者としての至高の夢でもあります。自分の作った技術の十全を使い、それ以上の効果を!」
「待て、何の話だアルバート」
 執務机で書類の確認をしていたコノエは驚いた顔をしてハインラインを見つめてくる。
 コノエはまだスーパーアークエンジェル級の事を知らされていなかったらしい。
 もしくは察しているのにハインラインに説明させるべくとぼけているのか。後者の率の方が高そうだと歯噛みしながら経緯を簡潔に説明した。
「なるほど? ではその明晰な頭脳を使って少しは考えてみてくれ。そんなこと出来るわけないだろう。モルゲンレーテはオーブ政府の御用達だ。新しい地上部隊の旗艦はオーブ軍からの供出になる訳だしプラントが介入する理由が無い」
 改めて諭されるも、そんな事は百も承知だ。自分ではそう言った政治向きの話がどうにも出来ないからここに来たのに。
 コノエからは一蹴されたが諦めなかった。
 いかにしてアーノルド・ノイマンがハインラインの作る艦に必要有益であるかを数日に渡り懇々と語った。
「いいか、アルバート。モルゲンレーテはオーブ軍のメイン工廠なんだ。コンパス理事国とは言えプラントの、ザフトの設計局が噛みたいなんてどうやったら相手が納得する?お互い情報漏洩にシビアに成らざるをえないし、相当な情報、技術提供でもしなければそもそも交渉が成り立たん。どう考えても無理だろう」
「いくらでも技術提供しますとも!」
「こらこら、勝手なことを言うな。機密上のリスクが大きい。外交問題だ」
「国家間の諍いなんて無意味です。今ここで僕の頭脳と彼の操舵技術が噛み合わなければ次にこの才能が出会うまで何十年、何百年かかるか解らない。その損失こそが人類の進歩を遅らせる!ナチュラルだコーディネイターだ、利権がどうだと無意味な理屈を捏ね回して進歩を阻害するは害悪です!愚かの極みではないですか!どうしてそんな簡単なことが」
「ああ、わかったから前のめりになって怒鳴るな。理性的になれ」
「無理です! 先生が僕の気持ちを理解してくれるまでは理性的にはなれません!」
「あぁもう
 三日も艦長室に通い詰めこの調子で説得しているとコノエも付き合いきれなくなったのか「なら、アスハ代表に聞いてみるだけ聞いてみるから、ダメなら諦めなさい」と言うところまで折れてくれた。ゴネてみるものだ。
 ハインラインも個人的にヤマト准将に掛け合ってどうにか開発に加われないか打診した。
 諦めるものか。絶対に。

♦︎

 コノエとヤマト元准将の尽力により、ハインラインはスーパーアークエンジェル級開発に携わる権利を得た。
 モルゲンレーテとの折衝を重ね、これまであたためていた新技術や構想も惜しみなく投入し圧倒的な技術力でプレゼンに臨みライバルの全てを叩き潰してメインの開発責任者のポストを得る。
 プラントが外に出したく無いと考えている技術に抵触しないギリギリのところまで攻めた。少々大人気なかったのではないか?とコノエに苦言を呈されたがなりふり構っている暇はない。権力に忖度していてはノイマンの艦が作れない。
 建造自体は流石に地球のモルゲンレーテ工廠で行うがメイン設計はハインラインが担当できることになった。
 ハインラインはそれまでモルゲンレーテが作っていた設計図を叩き台にハード、ソフト合わせてブラッシュアップした設計図を作り上げた。
 一から考えていたハインラインの設計をボツにしてモルゲンレーテの設計を下敷きにしたのは、それらの構想にノイマンの意思が反映されていると聞いたからで、彼の要望を容れた上でハインラインの技術を上乗せした船を作ってみせる。
 元々頭の中にあったアイデアをナチュラル用OSに合わせて練り直して進化させる。
 もう二度と扱いづらいなんて言わせない。次こそ最高の艦だと言わせてみせる。
 寝食を忘れ開発に没頭し、度々コノエに生活の不摂生を注意されたが、新しい艦への開発の意欲が上回った。

 オペレーションシステム開発の過程で旧アークエンジェルのデータを改めて精査していて気づく。
 腹が立つことに、アークエンジェルがあそこまでの機動をしてみせたのはノイマンだけの技術では無いようだった。
 モルゲンレーテの技術力もさることながら、ラミアスという艦長の指示と、チャンドラというCICオペレーターがノイマン大尉の操舵の土台となっている。
 ラミアス艦長の決断力と采配はノイマンの精神的な柱に。そして実務的にはチャンドラ中尉のもたらす正確かつ膨大な情報をコンパクトにまとめたものが操舵の指針だ。
 どこからどんな攻撃がどんな角度で何の意図をもってアークエンジェルに向けられているのか、アークエンジェルはどう対処しているのかをノイマンとチャンドラが絶妙な情報量で連携している。正に阿吽の呼吸。
 スーパーアークエンジェル級が最高の艦になるには。完成に至る最後のピースはノイマンとチャンドラのデータだった。
 ありとあらゆる想定を超えてどこまで対応できるのか知りたい。そうすればもっと強い艦になる。
 ハインラインは再びコノエに懇願した。二人のデータを取りたい。
 交渉は難航した。彼らの上司であるマリュー・ラミアスが二人をアーモリーワンへ招聘することをハッキリ断ってきた。データが取りたいならそちらがオーブに来れば良いだと。何様のつもりだ。少し戦艦乗りとしての実績があると思って若造が偉そうに。
 ラミアスに対して愚かな事を言うなと叱責したら通信は一方的に切られ、なぜかコノエに怒られた。全く解せない。
 最高の船が出来るのに、どうして喜んで協力しないのか。