ほにゃっと時空ハイノイ①

ほにゃっと時空ハイノイのざっと書いたやつ





 どうしても諦めがつかず、数時間後再びコノエの元へ行き改めてハインラインの目指す所を説明した。
 自分とノイマンの才能が合わさることの重大さをコノエにだけは理解して欲しい。データ収集をすることの意義、それにより作り出される最高の戦艦は必ず平和のために役立つ。それはコンパスが目指すところに一致するのではないかと力説する。
 コノエには突っぱねられたが、諦めずに翌日は五回艦長室に通った。ブリッジに居る時も資料を片手に詰め寄ってもう一度ラミアスとの交渉に臨んで欲しいと頭を下げた。
 すると信じられないものを見たような顔をされ、「まさか君がここまでするとは」と驚かれた。交代時間になるなり艦長室に呼ばれ、「他者との円滑なコミュニケーションについての講義」とやらを小一時間聞いたところ、ラミアスとの再度の交渉を約束してくれた。
 数日経ってラミアスとの通信が叶う。前回の失敗を踏まえ、今度は完全にコノエに交渉を任せた。
 自室からコノエの通信をハッキングして見ていたが、やはりラミアスはアークエンジェルクルーをプラントに上げることを渋っている。
 しかしこちらもヤマト准将から予め話を聞いていたのでノイマン大尉らの護衛計画を立て、提出してある。
 警備ロボも新たに作って配備する予定で、抜かりない体制を整えていることをコノエから説明してもらうとハインラインの新造艦への熱意が伝わったのか、ラミアスもやっと折れてこちらの要望をのんだが、期間は移動込みで七日間と限定されてしまった。
 せめてひと月は欲しいと思っていたのでコノエを通して期間の延長を求めたがラミアスもそれ以上は譲らず、「不満なら取りやめましょうか? データ取りは地上の設備でどうぞ?」とややキレ気味に言われてそれ以上の交渉は不可能と判断。
 ハインラインは与えられた時間内で、どのようにスケジュールを組めば最高効率でのデータ取りが出来るのかを計算し始めたのだった。

 早速、シュミレーターのスケジューリングと並行して、護衛ロボの作成も行う。
 ファウンデーション戦の折、アスラン・ザラがコンパスの一部のエンジニアに公開したペットロボの設計図がある。コードネームはHARO。コンパスの活動内に限り設計図の使用許可が出ている。かなり高精度のマスター追尾機能が標準的に搭載されており、球形で、邪魔になるサイズでもないだろうし色々と機能を付け足して周りに転がしておけばよい。
 制作にあたり色を検討する。ノイマン大尉はネイビーとグリーンで悩んだが、髪色の印象からネイビーにした。チャンドラ中尉は色を連想できる程の印象を持っていなかったのでとりあえず白にした。
 小型ながらよく出来たオリジナルのセンサーが複数種類、弾性の高い流体金属コーティング、それを着色する色素配合のレシピ。ハインラインから見ても割とよく出来ている無駄のないデザインと設計である。アスラン・ザラはそこそこ出来る男の様だ。
独自の改造も加え、護衛機能に特化したプログラムを組んで、追加で録音や録画機能を搭載。
 若干、装備のためのスペースが余ったので念のためスタングレネードもつけておいた。

 受け入れ準備が万全に整って数日。とうとうミレニアムにノイマン大尉がやってきた。
 アスハ代表から許可を得てミレニアムをオーブに降ろして迎えに行く。
 ハインラインの期待感は否応なく高まっていったが、二人の乗艦の際にはラミアスも挨拶に来ると直前に通達があり、ブリッジでコノエに呼ばれラミアスの前では挨拶以外喋るなと重々言い含められた。
 着任の挨拶をする二人と、見送りについてきたラミアス。彼女はこの期に及んでまだ二人をプラントに上げることに不満があるらしい。
「本当はデータ取りもオーブで行って欲しいのですがそちらの大尉がどうしてもどうしてもアーモリーワンでなければと仰るので仕方ないですね」
「はい、私の設計した最新のシュミレーター設備が嵩張るものでして設計図を提供したところでオーブで同様の物を作るとなるとどうしても開発に数ヶ月の遅れが出ます。地上部隊の旗艦をいつまでも旧式のタケミカヅチ級の借り物でしかも宇宙戦艦を重力化で強引に運用という訳にもいかないかと。スーパーアークエンジェル級を最速かつ最高な艦に仕上げるにはこれがベストなプランです」
 喋るなと言われてはいたが、向こうから話しかけてきたからには無視するわけにもいくまい。簡潔に答える。コノエが「大尉」と言って目が笑っていない笑顔でジッと見つめてきたのでどうも良くなかった発言だったらしい。コノエの指示通り黙ることにした。

 ラミアスがミレニアムを降りるとすぐに出発となった。
 大気圏を出るまでは席で大人しくしていたが予定の航路に乗せてしまえばプラントまで仕事はない。対応をオートに切り替えて席を立った。
 ノイマン大尉にハロを渡しに行かねば。
 先にブリッジを出たコノエに続いてハインラインも自室に戻り、あらかじめ作っておいたハロを取ってワンフロア上の上級士官用のフロアに向かう。
 このフロアには、今はコノエの個室とブリーフィングルーム、来賓室しかないのでデータ取りの間護衛対象となっているナチュラルの二人の部屋を割り当ててある。
 この部屋割りはラミアスから要望の一つで、二人を他のクルーの部屋からできるだけ離した部屋にしてもらいたいという。
 確かにザフトの艦だし、乗組員はコーディネイターばかりだが我々が何をすると言うのか。コンパス所属の同僚同士、何か起こりようもない。過保護すぎるのではないか。疑われているようで気分が悪い。
 少々苛立ちながらハインラインはハロを持って通路を進む。
 すると、二人はレクリエーションルームの窓から外の様子を眺めていた。
 コノエも居る。ノイマン大尉と何やら話していたのでハインラインも割り込んだ。
「二人ともここでしたか。早速ですが護衛ロボをお配りします。クライン総裁の所持していたハロの設計図をザラ一佐から譲り受け改造の許可も貰いましたので私が作りました。ノイマン大尉にはネイビーのハロ、チャンドラ中尉にはホワイトです。GPS付きで居場所がわかるようになっていますので原則としてこの任務中は二十四時間そばに置いて下さい。有事の際はマイクとカメラを起動して録音録画が可能です。標準的なシステムキーのロック解除機能もあります。自爆機能はつけられませんでしたがコマンド入力でスタングレネード代わりになるようにはしています。コマンドは他人にわからないように後ほど自室で登録してください。パスワードも同様です。また学習型AIを搭載しましたので簡単な会話も可能です。語彙は五十個まで増えます。それでは声紋登録をしますのでこちらの端末のマイクに官姓名をお願いします。まずノイマン大尉から」
「は?」
なんて?」
 簡潔な説明をしたつもりだが、何故か首を傾げられぽかんとして聞き返された。
「君の勢いに慣れてないのだからもう少しゆっくり説明してあげなさい」
 コノエに言われたが、こんなにわかりやすく説明してやっているのに理解できない意味がわからない。
「ではもう一度説明しますが
 仕方なく少しゆっくりと喋りながら最初から説明を繰り返したところ、ノイマン大尉とチャンドラ中尉はやっとハロを受け取ってくれた。
「アーノルド・ノイマン、大尉」
「セイモントウロクカンリョウ、ハロhl001キドウ、ヨロシクナー!」
 ノイマンがハインラインの端末を通じて声紋登録をすると紺色のハロがノイマン大尉の掌の上で耳カバーをパタパタさせて左右に揺れた。
「ほんとにクライン総裁のハロと同じだな。ヒゲはないけど」
「結構可愛いもんなんだな。よろしくな」
 チャンドラ中尉がノイマン大尉のハロを横からツンツンつつく。
「チャンドラ中尉のハロはこちらです」
「お、白い。こっちは見たことない色だ」
「マイクに官姓名をどうぞ」
「ダリダ・ローラハ・チャンドラ、中尉であります」
「セイモントウロクカンリョウ、ハロhl002キドウ、ヨロシクナー!」
 チャンドラ中尉のハロもマスター登録が完了し、耳カバーを動かして左右に揺れる。
「よろしくハロ」
 ハロを受け取った二人の反応は悪くない。楽しそうにハロに話しかけるノイマン大尉の姿を見て無意識に口の端が吊り上がる。
 その時、ノイマン大尉は笑顔でハインラインを見た。
「え」
 これまではずっと監視カメラの切り抜き画像でだけ眺めていられた、仲間に向けるような笑顔が突然至近距離で見れたことに驚いて声が出てしまった。
 ハインラインの動揺も知らず、ノイマンは言う。
「ハインライン大尉、ありがとうございます」
ドクン。と心臓が高鳴った。
 自分が作ったハロを、こんなに、喜んで。
 笑顔が眩しい
 チャンドラ中尉も横で何か言っていたが意味ある言葉として聞き取れない程にノイマン大尉の「ありがとうございます」だけが脳内にリフレインしている。
 自分は何と答えたのかわからない。少し会話をやり取りして二人が渡したハロを伴って自室に戻るのを見送った。

 窓の外に広大な宇宙の広がるレクリエーションルームで一人、ハインラインはバクバクと忙しなく動く心臓の音を感じながらぼうっとしていた。
 あれこそが、自分が求めていたものだ。
 自分の作った最高のものを彼に与えたい。喜んで欲しい。この満たされる感覚。夢にまで見た………
 そこでふと気づく。
 ハロはハインラインの設計ではない。あれはアスラン・ザラの設計したものだ。
 高揚していた気分が一気に萎えた。ありえない。何を喜んでいるのだか。
 やはり新しいアークエンジェルだ。早く完成させて、今度こそノイマンにあの笑顔を向けられたい。