ほにゃっと時空ハイノイ①

ほにゃっと時空ハイノイのざっと書いたやつ





 スーパーアークエンジェル級のメイン設計者のポストを獲得してすぐ、ハインラインの個人的なクラウドに「操舵士」というファイルが設置された。これでハインラインの管理する端末の全てでノイマン大尉のデータが閲覧できる。
 中には集めたデータが整理されている。航行記録、戦闘記録、シュミレーター訓練記録、アークエンジェルのブラックボックスから回収されたブリッジ勤務の日報からオーブ軍での活動記録、コンパスでの身体測定のデータ、オーブ軍から供出された身体測定のデータまで、ハインラインの権限で得られる全てだ。
 また、ミレニアムのモニター及びセンサーで記録された艦外を撮影した動画や、艦内監視カメラに見切れて映るシーンのスクリーンショットまで蒐集してある。
 データによると、彼はコンパスに出向になって体重が一、五パーセント増加。アークエンジェル内でもトレーニングルームを毎日利用していたとある。ナチュラルとコーディネイター混成組織の為、日々課される訓練のノルマがオーブ軍よりやや多いせいだろう。
 これらのデータは新しい艦のパイロットシートの設計に必要だから集めたのであって他意はないのだが、確認のためと、作業の傍らノイマン大尉のフォルダを開いては画像データを眺めることがルーティンになっている。
 良く閲覧するデータは端末の作業効率向上化アプリのアルゴリズムによって自動でコピーされ、別ファイルに纏められ「お気に入り」というタイトルのショートカットが生成された。
 なんとなくタイトルに違和感をおぼえたので「閲覧頻回資料」というタイトルに直した。

 お気に入り、もとい閲覧頻回資料の中の画像データは主にファウンデーション戦直後のノイマン大尉をオーブの軍港に降ろした際に撮影されたもので、旧アークエンジェルクルーと再会したときの笑顔の写真が多い。なぜか繰り返し見てしまう。
 作業の手を止め何度も眺めたその笑顔、次はハインラインの作った艦のパイロットシートで見てみたい。これぞ最高の艦だと言わせたい。それが最近のハインラインのモチベーションだ。この画像を見ると斬新なアイデアが閃めくし、三徹の眠気も飛ぶ。
 それにしても、ミレニアムの何が不満と言うのか。ナチュラル用OSの開発ならひと月もあれば完璧に仕上げてみせたのに。返す返すも異動を断られたのは心外だった。
 ここまでの待遇を蹴るなんてプラントならあり得ない。野心が無いと言えばそれまでかもしれないが、ナチュラルの身でコーディネイターの船に乗り活躍すればオーブ軍に戻っても箔がつくだろうし、そもそも一般的なコーディネイターより操舵の才能や技術はあるのだからコンパスのような人種混成組織なら更に躍進できるはず。それこそ、ハインラインと組めば思いのまま出世させてやれるのに。
 そんな簡単な計算も出来ないなんて、やはりバカなんじゃないのか。
 と、心のうちに押し込めていたはずの苛立ちは、ノイマン大尉とチャンドラ中尉のアーモリーワン招聘について、ラミアスとの交渉の通信中に漏れ出てしまった。
 急に不機嫌になったラミアスからは一方的に通信を切られるし、眉間のシワをぐりぐりと伸ばしてため息をついたコノエからも叱られた。
「アルバート、人間関係を円滑にする言葉遣いをそろそろ少し覚えなさい。私が数日かけて行った交渉が水の泡だ。世の中、いろんな人がいる。確かに君は少々の性格の難にも目が瞑れる稀代の天才だ。それは認める。が、これまではそれでよかったかもしれないが今我々はコンパスにいるんだ。ナチュラルの同僚とは対等に接するべきだ。ましてラミアス大佐は上官だぞ」
「到底理解できません。僕はただデータが取りたいだけです。それをプラントは危険だとか、ハインライン設計局を馬鹿にしているのはあちらの方では?我々が何をすると?ナチュラルを害すると決め付けてノイマン大尉の貸し出しを渋るとはあまりにも愚かな考えです。僕の作る新しい艦はそもそもナチュラル達が乗るものなのに非協力的ではないですか。礼を欠いているのは向こうです!」
「アルバートはぁ。全く
「僕が何か間違えたことを言っていますか?」
「あちらはコーディネイターと違う価値観を持つ人々なんだ。異文化の人と付き合うということを意識しなさい。ラミアス大佐にはきっぱり断られたしもう諦めたらどうだ?新しい艦を作りたいのは良いが、ナチュラルのパイロットにこだわりすぎるな。コーディネイターにも優秀な操舵士は居るのでは?」
「艦長! しかしノイマン大尉は
「ストップ。今日はもうこの話はやめだ。明日また話そう」
「艦長! 先生! 待ってください!」
「ハインライン大尉、私の言葉が理解できなかったのか。また明日だ」
「っ
 ぴしゃりと言われて流石に黙らざるを得なかった。悔しさに奥歯を噛み締めるも、諦めがつかない。
 失礼します!とおざなりな敬礼をして自室に戻る。ノイマン大尉がアーモリーワンに来ないなんて納得できない。来れば、データが取れればもっと良い艦になるのに。
 我慢できずにヤマト准将から教えられていた私用のアドレスにメールで連絡を入れる。
 一通りの経緯を説明し、データ取りの重要性は理解して貰えたが、やはりノイマン大尉らをアーモリーワンに呼ぶとなれば相応の護衛をつける必要がある。ナチュラルとコーディネイターの確執は実際根深いもので、ラミアスの懸念は尤もだし、ある程度の警戒は必要であると諭された。
 ナチュラルばかりのアークエンジェルで過ごした経歴のあるヤマト准将が言うのなら「そう」なのだろう。