ほにゃっと時空ハイノイ①

ほにゃっと時空ハイノイのざっと書いたやつ



 超長距離大出力ビーム兵器の熱線をコブラ軌道で回避し、乱立するプラズマの柱の間を縫ってタンホイザーの光の中を進み大気圏を超えて宇宙に出た。
 敵旗艦十二連陽電子砲を真っ向から受けながら、一切の躊躇なく敵陣に突っ込んで行った。
 撃った砲で敵艦が爆散するより早いスピードの艦をこともなげに横滑りさせた。
 惚れ惚れするような左ドリフトの後、最大船速。
ハインラインの作ったミレニアムは彼の操舵で宇宙を切り裂く光となった。正に傑作を傑作たらしめる操舵技術。
 戦闘中だったのでその限りではなかったが、ただ座って見ていて良いのなら感嘆の息をついていただろうと確信するほどの惚れ惚れするような腕前だ。

 アークエンジェルの操舵士、アーノルド・ノイマン。階級は大尉。
 控えめな男だ。アークエンジェル艦長、マリュー・ラミアスの後ろで笑顔で静かに佇んで喋らない。求められれば意見は言う。ただし、疑問を口にする以外はイエスのみ。
 ミレニアムに乗り込んで来た後、作戦を共有し、パイロットシートが彼に任せられることが決まり、出港前に艦のスペックと作戦に際して操舵についての注意点を説明した。
 作戦終了後、ひと仕事を終えたあとの無表情から目が離せなかった。
 ブリッジが勝利に湧く中、ぼうっと宇宙を見つめている姿はまるで人間とは思えない雰囲気があった。

 ああこれがアークエンジェルの操舵士か。
 天使を自在に操る操舵士。彼に、ミレニアムの操舵をしてもらいたい
 自分の作った艦を自在に飛ばす姿をもっと見せて欲しい。
 彼がいればもっともっと、自分の技術は高みに昇れる。


 しかしハインラインの熱望はあっさりと断られる。
「お断りします。ミレニアムにも操舵士は居ますよね」
「え」
 ファウンデーション戦完了から十二時間後、休息を終えたノイマン大尉を部屋の前で待ち、出てきたところに声をかけてミレニアムへの異動を打診した。が、一秒も検討されないまま断られた。
「コーディネイター用の艦なのでちょっと扱いづらいところもありましたし、やはりOSの違いは大きいですよね」
「す、すぐにナチュラル用のOSに変更します!」
「いえ、自分はアークエンジェルの操舵士なので。まぁでも、もう無いんですけど。とりあえずコンパスは凍結されたしオーブ軍に戻ります」
 ハインラインは目の前のナチュラルが言っている言葉が理解できず俄かに混乱した。
 一秒思考が停止したが、優秀な頭脳はすぐに再起動され計算を始める。
 もしかして、ふられた?
 認めたくない事実だが、そういう意味にしか受け取れない。
 このアルバート・ハインラインがここまで言って断る奴がいるのか。これだからナチュラルはモノの価値がわかっていない。天才の作った艦を操舵する機会を棒に振るとは。馬鹿じゃないのか。
「では、うちの艦長に呼ばれてますので失礼します」
 ハインラインの困惑をよそに、ノイマン大尉は朗らかに笑って敬礼すると去っていった。

♦︎

 コノエ艦長とラミアス大佐、オーブのアスハ代表、ヤマト准将やクライン総裁の極秘の会談が行われたようだ。
 数日ミレニアムで過ごしたアークエンジェルクルーはオーブに戻ることになった。
 ミレニアムは地上に降下しオーブ首都オロファトの軍港に入る。
 そこにはアークエンジェルのクルー達が待っていて、早速ミレニアムを降りたノイマンは囲まれて嬉しそうに笑っているのをブリッジから見ていた。
 ブリッジの自席で艦外センサーのひとつを操作し映像を拡大して、彼の表情までつぶさに観察する。
奴の居場所はあそこにあるのか。
 小さい青軍服の眼鏡の女とグータッチしている。コンパスの中尉の階級章見たことのない満面の笑み。映像から唇の動きを読み取り会話内容を解析するアプリによれば、気安い軽口の応酬をしている。
 あの女とは明らかに他のクルーとは距離感が違う。
 もしかして、恋人? アークエンジェルに恋人が乗っているから離れたくない? 俗物め。そんな理由でミレニアムの操舵士のポストを蹴ったのか

 ハインラインは面白くなかった。
「あんな女より、絶対に僕を選ばせてやる
 ボソッと呟いた独り言はたまたま通りがかった副長に聞かれて「えぇっ!? ハインライン大尉?」と大きな声を出されたが、無視した。