mochita_rj
2024-11-16 17:25:48
13974文字
Public TwitterのSS
 

SS2024年分

1Pに説明があります。今のとこ全部パロです。
年内に何かまた書いたら更新するかもしれない


「欲しいッ!け、けど金がぁッ!」

おれはとあるブランドのショップの前で崩れ落ちそうになっていた。おれの目の前のショーケースの向こう──煌びやかな照明に照らされた、おれが喉から手が出る程欲しい新作のバッグ。限定品だからこの子は来月には無いかもしれない。
しかし財布をひっくり返す勢いで漁ってみても、出てきたのは万札数枚ぽっちで、到底足りない。おふくろにも来月分の小遣いは前借りしてるしせびっても絶対に無駄だ。ならば、

「アイツがいるじゃあねえか!」

知り合いの中で最も稼いでる人物、かつ小遣いを貰うのに罪悪感も湧かない、最適な人間。おれがお迎えに来るまで待っててねン!ときらきらに飾られたバッグに挨拶をし、ショーケースに踵を返す。代わりに向かったのは、たった今頭に浮かんでいる金持ちの男の家だった。



「露伴先生ーーッ!こんにちは!小遣いくださいっス!」

件の家に到着したおれは、大声でその家主を呼んだ。ドアをガチャガチャと引き、ピンポンを連打し、無駄にぴょんぴょんと玄関の前で飛んでみたり。さっきから色々試してはいるけど、この頑丈そうな扉は一向に開かない。

「ねえってば〜家いるんスよねーーッ!?居留守ってわかってますよーーッ!チコーっと小遣い貸してくれるだけでもいいからさーッ!」

本当に家にいるかは知らねえけど、カマかけるつもりでおれは露伴露伴と名前を連呼する。さてどうしようかな、もう堂々とクレイジー・ダイヤモンドでこのドアぶち開けるのが早いよなあ。と、おれが拳を上げたのと同時に、ドアを隔てても聞こえるほどうるさい足音がドスドスと近付いてきた。

「貴様ッ!さっきからギャーギャーうるっさいんだよスカタン!」

中から出てきた露伴はただでさえつり上がり気味の眉毛と目を更に角度をつけ、おれにわあわあと喚いた。うるさいのはアンタもじゃあねえの、なんて口に出かけたけど、露伴はイライラしてるみてーだから多分言っても聞いてないだろう。

「なあんだ、ホントにいるならさっさと出たらいいじゃあないスか」
「無視を決め込もうとしたがな!お前のスタンドで不法侵入でもされたら余計に神経がすり減るから仕方なく!開けただけだッ!」

うんざりした顔でおれをシッシッと払ってっけど、おれは露伴とお喋りをしに来た訳じゃあねえ。この可愛い女子高生にお小遣いを恵んでください♡親指と人差し指で丸を作り、あざとく上目遣いで見上げるも、露伴は更に眉をひそめておれを睨むだけだった。

「小遣いを?僕にせびりに来たってか?おいおいおい君の頭はニワトリか?あの悲惨な焼け跡を見ろよこれでも同じ事を言うかい」
「え?う、うわッ……えーっとォ

露伴に促されるまま玄関に上がる。廊下の一帯は壁が焼けていて白く塗られていた壁は黒く変わり、見るも悲しく穴が空いていた。こうして焼け跡を見ると中々の光景でやっちまったなあ、と罪悪感も湧いた。

「あ、あのォ〜露伴
「焼け跡の処理が終わって、やっとこれから家の修繕工事が入るんだいや結構。君の手は借りない。君が直した家に住むなんて耐えられないからな」

おれが戻せねえかなあと焼け跡に向かおうとするのを手で制された。あの後業者が入り、焼け落ちて灰となった露伴のコレクション達はさっさと回収されちまったらしい。海外から取り寄せたアンティークの家具に、ツテを辿ってやっと手に入れたレアなフィギュアにと、今は亡き大事にしていたモノをつらつらと並び立てられ、おれは小遣いどころじゃあなくどんどん小さくなってしまった。

「工事にいくらかかるんだったっけなァ〜君の今期狙ってるであろうブランドのバッグが果たしていくつ買えたかな」
「も、も〜!わかりましたって!ごめんなさい!おれが悪かったよ!」
「君からの謝罪はいらない。だからとっとと帰れ」

こいつ、変にプライドは高い割におれにチクチク言って罪悪感を煽るよなあ!そりゃあこの火事の件はおれが悪いけど!それをずうっとネチネチとつついてくるとこが大人げなくて嫌いなんだよな!だからおれが素直に謝る気になれないのはアンタのせいだし!とおれまで意地になってしまった。だから、普段ならばやらない事まで思いついてしまった。

「けッつうかよォ〜んな根に持ってんならさあ、仗助くんのカラダで払ってもいいんスよ♡」

露伴は知らねえだろうけど、おれってば学校中の男子からモテモテなんだぜ?こうしてスカートを数センチたくし上げ、腕で胸を寄せるだけで、男子の視線はわかりやすく釘付けになる。さあて童貞クセー露伴先生はどんな反応をすんのかなァ〜!とけらけら笑っていると、露伴は無言でおれの目の前まで近寄ってきた。

「な〜んちゃ、てッ……へっ?」

露伴の顔を覗きこんでおどけたのと同時に、おれは壁に押し付けられていた。えっ?今どうなってんの?目を泳がせるおれに構わず、露伴はおれの顔の横に手を付き、おれの足と足の間に膝を差し込んで逃げられないようにしていた。

「きみさァ、ちょっと大人を舐めすぎなんじゃあないの?」
「は、はいっ?」

セーラー服のリボンに手をかけられ、ゆっくりと解かれていく。待って待って何してんの!?何のつもりで、と困惑の色を滲ませるおれを覗き込む露伴は、おれが何を考えてるかなんてお見通しだ、というように笑った。

「何のつもりって……流石のきみでもわかるだろう?なあ」
「ッひゅ!」

ふう、と耳に息を吹きかけられ、おれは大袈裟な程に肩が跳ねた。やばい、露伴のこと怒らせちまったのかな。……いや、怒りとかじゃあない。おれに理解させようとしてるだけだ。ひどく冷静に、子どもに社会のルールを教えるような表情。その冷たさが普段の露伴のコロコロ変わる表情と対照的で、やけに恐ろしい。露伴は所在なく空をかいていたおれの手を取り、ニヤリと笑った。

「カラダで払うって自分で言ったもんな。どうやって?このなーんにも知りませんって指でさあ、僕にどうやって触れるって言うの」
「ち、近ッ!」

顔が触れそうなギリギリの距離で、露伴はおれの手を自分の顔に導いた。今までで一番近い距離で見る露伴の瞳はいやに凪いでいて、そこにある感情は読めなかった。どうしよう、露伴、何を考えてるの。大人は感情すら隠せるって言うの。

「仗助」

喉を僅かに震えさせただけのような、この距離でしか聞こえないくらいの小さく低い声で露伴はおれの名前を呼んだ。おれの親指が薄い唇に触れかけ、柔らかいものに指が沈む寸前に手首ごと離され、やっぱり体に触らせてはくれない。ああ、もどかしい。

「はは。君、そんな派手なナリしてるけど本当は男なんか知らないだろ」
「ッ……!」

おれの耳元に口を寄せて囁いた露伴から、ふわっとほろ苦く甘い匂いが鼻をくすぐった。なにこれ、男ってみんな制汗剤と汗が混じったような匂いじゃあねえの。男の人とこんなに近くにいた事がねえからわからないよ。露伴のつけてるイヤリングのペンの飾りが、おれの肩にチラチラって当たるくらいちけえの。ああもうダメ、心臓がドクンドクンってうるさくて、このまま死んじまうよ。

「ッうぅ〜〜ろは、ごめんなさい。もうむり、」
「そんなに僕から金を巻き上げたいならさァ、僕の下でメイドのバイトでもするかい」

丁度雇おうとしてたんだ。限界で息切れすらしてるおれの言葉を遮って露伴はそう言った。メイド?唐突なそれにおれが必死に頭を働かせる。メイドさんって、お世話をする人、だよな。でもなんで?おれが?

「あ、あんたのメイドになって、おれは何をするんスか」
「それは君が考える事だ。主が何を必要としているのか、君が主に何をしてやりたいのかそれを考えて動くのがメイドだろう?」

なあって、わざとらしく誤魔化さねえでよ!だって、普通に甲斐甲斐しく食事の支度とか掃除するだけなら、こんな回りくどく言わないはずだ。おれに一体何させようとしてんの。意味深に笑っちゃってさぁ。おれ、もう高校生なんだよ?しかもこんなか、壁ドンまでして来た男と長時間同じ空間にいるだなんて、ヘンな想像しちまうって!わかってるくせに!もう顔も熱くて茹でダコみてーになっちまってるだろう。恥ずかしいのを隠すために手のひらで顔を覆うと、露伴は掴んでいた方のおれの手をぱっと離した。

と、冗談はこのくらいにして。さあ帰った帰った!お子ちゃまはそろそろ夕飯の時間だぜ」

おれの顔を見てああ楽しい、と心底愉快そうに歯をむき出しにして笑ってやがる。さっきまでの色っぽい余韻も未練も無く離れていく体に、おれはムショーに腹が立った。おれはヘンな触られ方してドキドキしちまってるのに、とうの露伴は意識なんかしてなくておれは相手にもされてない。しかもメイドを丁度雇おうとしてたって、別の女の子にも今のと同じ事すんの?おれは露伴のこと好きでもなんでもねえけど、それはちょっとイヤかも。おれはとにかく、露伴の行動全てにひどくムカついていた。

「や、やるっメイドさん、やります」
……ハア?なにを、」

おれはつま先で床を蹴り上げ、露伴の首に腕を回して唇を突き出した。おれの行動が読めなかったのか、露伴はバランスを崩して二人して床に倒れ込む。それをいい事におれは露伴に跨って、無理やり露伴の唇に自分の唇を押し当てた。やっと、やっと触れられた。

「んむ、」
「オイ、じょッ……

押し返されないように露伴の手を床に縫い付ける。力は露伴の方が強いからきっと無駄かもしれないけど。露伴は次第に諦めたように反発する力を抜いたから、突き飛ばされるなんてことはなかった。おれのより薄い唇は見た目以上にやわらかくて、これが露伴の唇だとわかってても不思議と嫌悪感は無かった。

「ん、ん、ろはッ……

なあ、これっていつ離すの?ずっとくっつけたまんまだけどこれでいいの?わからない。この歳まで男の子とキスはおろか手も繋いだ事さえねえんだもん。男の人の体って思ったより大きいんだって事も今初めて知ったし。慣れねえ事を勢いのままやってんだから、それはもうヘッタクソなキスな事だろう。露伴は何か言いたげな様子だったけど、それでもやはり特に拒否する気配もない。おれが唇を離すまで、無言でキスを受け入れていた。

「ぷはッ……はぁ、はあッ」
……本気?」
「か、覚悟ならあるっス!ふんッ!見てろよ、露伴の財布スッカラカンにしてやっから……!」

キョトンと目を点にしたまんまの露伴に、おれは人差し指を突きつけた。初めて嗅いだ露伴の香水の匂いが鼻から抜けなくて、頭がフワフワと酔ったみてーになってる。おかげで頭がバカになってるかもしんねえけど、ムキになってるだけかもしれねえけど、何にせよこのケンカはあんたが売ったんだ。おれが挑戦的に笑うと、露伴はぽかんとした表情を変えた。

ああ。この僕の専属メイドだ、給料は言い値で構わないよ。だが君にその適性があるかどうか今から見させてもらうとしようかな」

露伴も露伴で乗り気らしい。ここまで来たら戻れない気もするけど、おれにだって意地がある。おれが露伴にしてやりたいことを自分で考えて動け、とか言っていたっけ?ああわかったよ、アンタをコテンパンにすりゃあいいって話だろ!さあてどうやって露伴を世話してやろうかなァ〜!メイドさんって事はフリフリの可愛いメイド服を着て、チコ〜っと胸を強調させちゃって露伴をドキマギさせてもいいかも!悪い顔でにひにひと悪巧みを考えるおれに、露伴もまるでオオカミみてーな悪い顔をしてたのは、全然知る由もなかった。