mochita_rj
2024-11-16 17:25:48
13974文字
Public TwitterのSS
 

SS2024年分

1Pに説明があります。今のとこ全部パロです。
年内に何かまた書いたら更新するかもしれない


ぱちり。

まぶた越しの柔らかい光の気配に、おれはぱっと目を開けた。ご主人と違っておれは朝に強いし、1度起きたら2度寝なんかしない。おれはとっても優秀なわんちゃんなのだ。まあでも、ご飯食べたら眠くなっちまって、気付いたらうっかり床に落ちてる、なんて気ままなトコもあるんだけど。とにかく!ふああと大きなあくび、背伸びを同時にやっちまえば、おれの1日はスタートするのだ!

「ん、んん……

横で何やら唸る声。おれのだいすきなご主人だ。そういえば、昨日はゲージで寝る気分じゃあなかったから寝床に入れてもらったんだった。「おまえはいい加減ゲージで寝ないといけないんだよ」と、ご主人は言う。でも子犬のときなんか、おれが寂しくて泣いちゃうからと毎日一緒に寝てたんだ。もうちょっとだけ一緒にくっついて寝たい。だって、ご主人に寄り添っていると凄く温かくて、いい匂いがして、スゲー落ち着くんだもん。すんすん、くうん。お布団の上をトコトコと歩き、ご主人のお腹に鼻を押し付けて匂いを嗅ぐ。うんうん!やっぱりおれの大好きな匂い!

「きゅうん、わぅん!」

おれのしっぽがぼふんぼふん、とお布団に当たる。うれしいときはココがぶんぶん揺れちまうから、ご主人にはおれの感情も丸わかりらしい。そういえば「おまえは尻尾もそうだが表情もわかりやすいな」なんてよく笑ってたっけ。お気に入りのおやつをもらったり、ご主人がお出かけから帰ってきたとき、おれはいつも嬉しそうにしているらしい。そりゃあ嬉しいんだもんよ、すぐ仕草に出るのも犬の本能って言うししかたないだろ。それに、ご主人はおれが嬉しそうにしていると、つられたようにクシャッと顔を崩しておれを抱き上げてくれるのだ。うれしいうれしい!ああ早く!早く起きておれを抱っこしてくれ‪っス!

「わんっ!わんっ!」
「うぐっ!ん、あーー?」

狙いを定めてお腹に飛びかかると、ぐえっと苦しそうな声が上から聞こえた。ついでにわんわんと鳴いてご主人を起こそうと試みる。あうあう言ってるしこれで目を開けたかと思ったが、どうやらご主人はまだ夢の中らしい。それなら次の作戦だ。おれは自慢のフワフワの足でご主人の腹を踏みつけ、胸元までよじ登る。腕をお布団にだらんと投げ出しているせいで、おれのことを抱きしめていないのはチコっと不服。もう!もう!早く起きておれと遊んでくれよ!お昼になっちまうよ!

「ぐるる!わふっ!わふぅっ!」
「んぶっ……んぐぐ!」

最終奥義、ご主人の顔をべろんべろんと舐め回すの巻。寝息を立てる鼻も口も関係なくヨダレまみれにしているからか、ご主人は息苦しそうに眉を寄せた。それからゆっくりと重いまぶたを開けるより先に、おれの体に何かが回ってくる。だいすきな、おれのご主人の、温かいおててだ。

「んーーじょうすけー?こら、舐めるなよぉ」
「!くぅん!わんっ!わんっ」

寝起きの舌っ足らずな声がおれの名前を呼ぶ。露伴がおれにつけてくれた、たったひとつの名前。そうッスよ!仗助!あんたの仗助が起こしに来たんス!うれしさのあまり、依然眠たげに目を細める顔をまた舐め回すと、

「もー、くすぐったいだろう」

なんて、けらけらと笑いながら露伴はおれを抱きしめる。露伴はおれのこのモコモコフワフワなボディが大変お気に入りらしく、手が空けばすぐに抱っこするのだ。おれも露伴に抱っこされるのは嬉しいから何も問題はない。これこそウィンウィンってやつだ。

「むぐっおまえ……大きくなったなあ……

そのまま上に抱き上げられ、露伴と数センチの距離で目が合う。まじまじとおれを見つめる露伴にハテナを浮かべて舌をペロンと出すと、露伴はうわっかわいい!となにやら悶え、そのままおれの腹に顔をぼふっと埋めた。

「きゅうん、くうん〜?」
「ああ……可愛いなあ〜!こいつ!世界で1番可愛いコロコロめ!なんだこの腹は〜〜フワッフワじゃあないか〜〜」

露伴はおれによく喋りかけてくれるから、少しは何を言ってるかはわかってきた。その中でも「かわいい」と「コロコロ」は会話によく出てくる言葉だから、多分おれのことを差してるんだと思う。もしかしてあだ名みたいなモンなのかな?わからねえ。とにかく、お腹はくすぐったいっスよう。キャッキャッと笑ってじゃれていると、露伴は次第に目が覚めてきたみたい。

「う〜〜ん……お散歩行こうかあ、仗助」
「!わふ〜!わふぅ!」

おさんぽ!おさんぽ!抱っこされたままでくるくると回れない分、おれは尻尾をぶんぶんと振って喜びを表現する。露伴は「お散歩」という言葉にあからさまに喜ぶおれを、溶けそうな笑顔で見つめていた。

「わ、わんわぅん!!」

ああもう、おれが人間の言葉を喋れたらいいのに!もどかしさのあまり、赤ちゃんのときみたいな寂しげな鳴き声が出ちまう。尻尾はぶんぶんとちぎれる勢いで振っているけど、人間にはそれだけじゃあ足りねえよな。露伴、露伴。だいすきだよ。おれがこんなに露伴のことだいすきなの、伝わってる?不安そうに鳴くおれの頭を撫でた露伴は、おれの気持ちとは反対に、にっこりと笑っていた。

「ふふ。ぼくもだいすきだよ、仗助」

えへ!えへ!ほんと?うれしい!うれしい!まだまだ成長途中ゆえの短い足をがんばって伸ばし、露伴の口にちゅーする。露伴がいつもだいすきだよ、と言ってしてくれるそれを、今日はおれの方からした。露伴は一瞬だけきょとんとした表情を返し、でもすぐに「もーどんだけ可愛くなれば気が済むの」と笑っておれを撫でくりまわし、何回もちゅーをしてくれた。

「あーっと。そうこうしてたら昼になっちまうな。仗助、お散歩の準備するぞ」
「わんっ!わんわん!」

露伴が背伸びをして立ち上がると同時に、おれは一足先早くにリビングの方へと向かう。青色のリードがしまわれている棚の前で、お行儀よくお座りをして支度をする露伴を待つ。お散歩!お散歩!ふと窓を見ると雲ひとつない青空、でもお日様は控えめで絶好のお散歩日和ってやつだ。楽しみにお尻をフリフリして待っていると、身支度を整えて近寄ってきた露伴がおれにリードをつける。おれはいい子だから、されるがまま大人しく待っておく。おれはおりこうさんだから!行先が公園じゃあなくて病院だったらこうは行かねえけどな!

「待たせたね。さあ行こうか、仗助」
「わふ!」

露伴がおれを引いて玄関へと向かう。今日はどこまで行こうかな?たまには新しい道も探索してみたいな。きっと露伴ならどこにでも連れて行ってくれるし、おれもどこまででも行けるよ。ああ楽しみっスね!露伴!じっと上を見上げて露伴が扉を開けるのを待つ。次第に開かれていく視界。さっき窓のガラス越しに見た青い空が、おれたちを歓迎するように広がっていた。