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botanin5
2024-11-14 03:12:59
12399文字
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薬さに♀(小説)
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副作用には気をつけて
ハッピーエンド
恋心を薄めてくれる不思議な薬を手に入れた話です。
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「おう、おはよう大将。夕べは心配かけて悪かったな。湯あたりしただけだから、気にしないでくれ。」
朝。あまり眠れなかったために閉じそうなまぶたを、冷たい水で顔を洗って無理矢理こじ開けると、身支度を整えて真っ先に薬研の部屋へと向かった。障子をノックすると、すっかり準備を整えた薬研が顔を見せて先ほどの言葉をけろりと言ってのけたのだ。今は全く体調が悪そうにも見えない。
「湯あたりなわけないでしょ、アイス食べてる間はなんともなかったじゃん」
「時間差で症状がでるとはな、俺も驚いたぜ」
「はぐらかさないでよ、また急に具合悪くなるかもしれないし、やっぱり手入れした方が」
「大丈夫だって言ってるだろ。ほら、早く朝飯食いに行こうぜ」
グッと背中を押されて廊下を進む。薬研はこれ以上、昨夜のことについて話す気はないようだった。広間に着くと、彼は厚や後藤を見つけてさっさと席に着いてしまった。いったい、なんだったのだろう。もぐもぐと朝ご飯を口にしながら、今日は薬研には近侍の仕事を休んでもらおうと決め、隣で卵焼きを頬張る乱に話を聞いてみることにした。
「ねぇ、乱。昨夜のことだけど」
「あ~、薬研なら大丈夫だよ」
「でも、すごく具合悪そうだったし
…
」
「あれは自業自得だから、あるじさんは気にしなくていいの~」
でも、ともう一度食い下がろうとしたが、乱もこれ以上なにも話す気はないようだ。もやもやとしたまま、そのまま乱に今日の近侍をお願いすると喜んでと了承してくれた。食後の林檎に手を伸ばしていると、ご飯を終えたらしく食器を手に持った薬研がすっとこちらに近づいてくる。
「大将、今日の予定は
―――
」
「あ、今日は乱に近侍をお願いしたから、薬研は休んで。病み上がりだし、このまま明日までお休みね」
「は?二日も
…
?いや、俺は大丈夫だって」
「いいから!また具合悪くなったら、今度こそ手入れするからね」
「はぁ
…
わかった」
なら、お言葉に甘えてゆっくりするかな、と呟いた薬研は、食器を片づけに厨へと向かっていった。
近侍が薬研じゃないことに少し違和感を覚えながら、いつも通りの一日が過ぎた。薬のおかげで、恋煩いを起こすことも無く仕事をやり終えることができた。これを続けていけば、審神者としての務めをしっかり果たすことができるだろう。
お風呂に入って敷いた布団にぼふんと倒れ込みまどろんでいると、どきんと心臓が脈うった。突然、いまの今まで薄れていた薬研への想いが、滝のように次々と流れ込んでくる。薬の効果が切れたのだ。ぎゅっと心臓が苦しくなっていく。うわ、どうしよう。薬研に会いたい。一番近い記憶にある、アイスを食べさせてもらった時のことが頭の中をぐるぐると駆け巡って、自分の顔がぽっと赤くなるのが分かった。あの場では動かなかった心臓が、今になってばくばくと暴れている。やはり、あの時薬を服用していて正解だったと思った。さすがに目の前でこんな風に顔を真っ赤にしたら、薬研に気持ちがばれてしまっていただろう。
もそりと起き上がって、ビンに手を伸ばす。効果はきっかり24時間で切れるようだ。蓋を開けて一粒舐めれば、すぐに気持ちは落ち着いていった。
それにしても、効果が切れたすぐにあんな風に抑え込んだ気持ちが流れ込んでくるのは少し辛いかもしれない。1日溜めこんだ気持ちが一度に放出されるのか、薬研への気持ちがいつもより強く表れてしまっていた気がした。明日からは、効果が完全に切れる前に次の薬を服用しようと決め、ビンを机に置いて眠りについた。
そろそろ休憩にしようよ、と乱が執務室を出てお茶とおやつを持ってきてくれた。今日は麦茶と栗羊羹だ。本丸でも作れるように型をいくつか購入したところ、歌仙がよろこんで色んな羊羹を作ってくれるようになった。おやつに羊羹が出る頻度は格段に多い。
小さなフォークで羊羹を口に運び、いつもより少し渋めのお茶を飲む。まったりとした空気に和みながら乱と雑談していると、障子の外から声がかかった。
「大将、ちょっといいか」
「薬研?いいよ、どうしたの?」
がらりと障子を開けた薬研は、くつろぐ私たちの様子にふっと笑うと、立ったまま「大将の部屋にある本を読ませてほしい」と申し出た。
「私の本?娯楽小説くらいしかないけど」
「たまにはそういったのも読んでみたくなってな。なにせ二日も非番をもらっちまって、やることも尽きてきたんでね」
自分の部屋の本は読み切っちまったしなぁとぼんやり言う薬研に、本当に他にやることはないのだろうかと心配になる。他の本丸の薬研藤四郎は、自分で薬を作ってみたり、兄弟を誘って手合せをしたりと、時間が足りないのではないかと思うほど活発な様子を耳にするが、うちの薬研はゆったりと本を読むのが好きなようだった。
「そっか、いいよ~。入って右側の襖に本棚をはめ込んでるから、そこから好きなの持って行って」
「
…
勝手に部屋入っていいのか?」
「今許可したんだから勝手じゃないよ。私もうすぐ休憩終わるし
…
」
「そうか
…
じゃ、適当に見繕って借りてくよ」
薬研を見送り仕事を再開すれば、そんな出来事はすっかり忘れてしまった。
明日からは薬研に近侍へ戻ってもらうつもりなので、乱にお疲れさま、と労いの言葉をかけて、こっそり食べようか、と執務室の机に隠していたお菓子を取り出して広げる。内緒ねと笑いかければ「ボクとあるじさん二人だけのひみつってことだね、おっけー!」とこれまた可愛いウインクが返ってきた。
「ね、あるじさんは
…
本当に薬研のこと好きなわけじゃないの?」
「え?
…
前も言ってたね。薬研は大事な仲間の一人で
…
好きとか、そういう気持ちは別に」
「これからも?」
「へ?」
「これからも、好きになる可能性はないの?」
「
…
待って、乱が自分で言ってたじゃん。私が薬研のこと好きだったら失恋しちゃうんでしょ?」
「
……
あの、」
「あるじさま、ごはんのじかんですよー!」
なにか言いかけた乱を遮って、今剣が障子を開けて飛びついてきた。何を言おうとしたのか聞こうとしたけれど、タイミングを完全に逃してしまったようで、乱は「先に行ってるね
…
」と出て行ってしまった。
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