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botanin5
2024-11-14 03:12:59
12399文字
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薬さに♀(小説)
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副作用には気をつけて
ハッピーエンド
恋心を薄めてくれる不思議な薬を手に入れた話です。
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本丸に帰ってから夕飯や入浴をすませると、部屋に籠って買ったばかりの薬を取り出す。風呂上りで温かい手に、冷たいビンが気持ちいい。蓋を開けて、飴玉を1つ取り出す。50粒も入っているらしいから、ひとまず一か月半くらいは続けることができる。口を開けて、ぱくりとひとつ舐めてみた。イチゴ味に加工されているようだが、全体的に漢方薬のような薬臭さが抜けておらず、美味しいものではなかった。むしろ、不味い。これを続けないといけないのか
…
と少し憂鬱な気分になった。
寝る前に口の中のなんとも言えない味をなんとかしようと、水を飲むため厨へと向かったところ、同じく何か飲みに来ていた薬研がいた。いつもだったら、緊張で身構えてしまう場面だが、不思議と気持ちは落ち着いていて、心臓も暴れ出す様子はない。なるほど薬の効果が出ていると感心しながら、自分のコップを手に取って冷蔵庫を開けた。
「大将、氷いるか?」
「おぉ、ありがとう~欲しい」
「ん、コップ出しな」
冷凍庫を開けていた薬研がしゃがんだまま声をかけてくれる。カラカラと氷が入れられたコップを受け取って、麦茶を入れて冷蔵庫を閉じると、近くの椅子に腰かける。ごそごそと冷凍庫をまさぐっていた薬研は、バニラのアイスクリームを二つ取り出して私の向かいに座った。
「あー、勝手に。いけないんだ~また一期に怒られるよ」
「これは鶴丸のだから大丈夫だ。食うだろ?」
「食べる!
…
って、鶴丸の?」
「さっき風呂場で驚かされたからな、仕返しだ」
風呂場の床を石鹸を使ってスケートリンク並みにつるつるにしていたらしい。そこに足を踏み入れてしまった薬研と後藤は、滑って転んでしこたまお尻をぶつけたのだそうだ、可哀そうに。
「あー!薬研とあるじさんだけずるいよ、ボクにもちょうだい!」
アイスに舌鼓を打っていると、風呂上りらしく首にタオルをかけた乱藤四郎が厨に入ってきた。真っ直ぐ私の隣に寄ってくると「一口ちょーだい?」と可愛らしくおねだりされる。仕方ないなぁと乱にアイスを分けてやると、向かいにいた薬研がじっとこちらを見つめていた。
「大将、俺にもくれよ」
「え?薬研のと同じ味だよこれ」
「人が食ってるもんの方が美味そうに見えるんだよなぁ」
「じゃあ、薬研のも一口ちょうだいね」
スプーンでアイスをすくって、薬研の方へ向ける。彼は嬉しそうにぱくりと口に含むと、今度は自分のアイスをすくってこちらに向けてきた。少し身を乗り出してぱくりと口に含む。今までだったら絶対にできなかった行動だ。まず、自分のスプーンを薬研の口に入れるなんて恐れ多くてできないし、さらに薬研からのあ~んだなんて、開けた口がにやにやと閉まらなかったに違いない。薬の効果は絶大で、まったく普段通りの振る舞いをすることに成功した。うん、これを続けていけば、薬研への恋心を消すことが出来るんじゃないだろうか。
先にアイスを食べ終えた薬研が、じゃあ俺はもう寝ると厨を出て行く。おやすみと声をかけて再びアイスにスプーンを差し込むと、今度は乱がこちらをじっと見つめていた。
「どうしたの?もう一口いる?」
「ううん、そうじゃなくて
…
ボク、あるじさんは薬研の事が好きなんじゃないかなって思ってたんだけど」
「んん!?」
「今の様子だと、勘違いだったみたいだね。
…
友達みたいだった」
なんだぁと頬を膨らませる乱に冷や汗をかく。隠せていると思っていたのに、やはり短刀たちは目ざとい。薬を使ってみて良かった
…
。薬研にもばれていたらどうしようと一瞬不安がよぎったが、流石に、自分に惚れてるんじゃないかと疑わしい相手に、アイスを食わせるよう迫ってくることはないだろう。
「薬研にはそんな気が全然ないみたいだったから、あるじさん失恋しちゃうんじゃないかなって心配だったんだけど、よかった」
二コリと笑った乱の追い討ちに苦笑いする。言われたのが今で本当に良かった。薬研の事が好きなままこれを聞いていたら、泣きだしてしまったかもしれない。相変わらず乱は探りを入れるようにこちらを見ている。なんだか観察されているようで緊張してきて、残りの溶けかけたアイスをささっと口に放り込んで私も寝るね、と声をかけ席を立った。
部屋へ戻ろうと廊下に出ると、壁に身を預けるようにうずくまる人影が見えた。紺の甚平を身につけているのは、先ほど部屋に戻ると言った薬研ではないだろうか?驚いて、何かあったのかと急いで駆け寄る。
「薬研!?」
「!!っ、あ、たいしょ」
「どうしたの、具合悪い?」
そっと肩に手を置くと、びくりと身体を震わせた薬研がそろそろとこちらを見上げる。はぁ、と吐く息は熱く、目も潤んでいるし、ひどく汗をかいている。驚いて額に手を当てると、ものすごく熱い。
「ひどい熱!さっきまで平気そうに見えたのに、我慢してたの!?」
「
…
別に、そういうんじゃ
…
」
「とりあえず部屋に戻ろう、立てる?」
「!!立てる、一人で戻れるから、大将は気にせず部屋に帰ってくれ」
「そんなふらふらで放ってほけるわけ」
「薬研どうかしたの?」
背後から声をかけられて振り向くと、厨から出てきた乱が驚いた顔でこちらを見ていた。
「あ、乱、薬研が具合悪いみたいで、いま」
「おい乱!
…
っは、乱
…
俺を、部屋に連れてけ」
「えっ」
突然大きな声を上げたことにも驚いたが、兄弟に向かってこんな命令みたいに頼みごとをする薬研は初めて見た。ふー、ふーと荒い息を吐きながら乱を睨みつけるように「頼む、」と掠れた声を出す。
「ねぇ、手入れとか」
「いい!!
…
っから、乱!」
「はいはい、まったく、ひと使いが荒いなぁ」
薬研に肩を貸してすっと立ち上がった乱は、「ボクが連れて行くから、あるじさんは部屋に戻っていいよ」と言い残してさっさと廊下を進んで行ってしまった。本当に大丈夫なのだろうか。しかし、あの薬研の様子では、今からついていっても追い返されてしまいそうだ。後ろ髪を引かれながらも、明日は朝一番に薬研の部屋へ行くことにして、ひとまず部屋に戻って布団に潜り込んだ。
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