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呪術廻戦の世界に飛んだ異世界人と分かったので帰ろうと思います。(仮)2

五条夢。続くか続かないか分からない。長らくお待たせしました。
名前変換機能をテストで使ってみたかった題材。
※名前変換なしだとデフォ名(藤森沙奈)になります。

今日はハロウィーンですね。
短くなったけど、元々長かったのを切りのいいところで止めました。
できる限り早めに続きを更新します。



 ケータイショップはどこの世界線でも人混みはすごいらしい。小学生くらいの子からお年寄りまで、カウンターと待機椅子に私たちも含むお客さんがたくさんいた。

(このときの時代ってアナログだよね……こっちだとオンラインで全部できるのに)

 契約して機種選んで、持って帰るだけの話なのに説明やら操作やらいろいろやらされて丸一日それで潰されるようなものだった。それはこの世界線もそうらしい。

「機種選んでだって」
「うん……たくさんあって分からない」
「こういうときはピンときたものでいいんだよ」

 硝子ちゃんがアドバイスをしてくれる。
 ケータイと言ってもスマホなんて物はまだ表に出てきてないので、ガラケーしか並んでいない。最新のものから古い機種のものまで、よりどりみどりだ。
 私はあるケータイに目をとめた。
 黒とアクセントに紫。非常にシンプルで、おそらく男性が持ちそうな色合いだ。隣には女性向けだろうか、スカイブルーの色合いだ。どうやら、この二機を境に男性向けと女性向けと分けられているようだ。

(この紫と黒、〝五条先生〟みたい。んでもってスカイブルーみたいなのは〝五条君〟)

 まるで、『おまえはどっちの五条悟を取るのだ?』と神様に尋ねられているかのように見えた。もちろん、見えただけであり誰からもそう質問されたわけでもない。たまたま、そういう置き方をしていたこのケータイショップの店員さんが悪い。
 オタク気質だと、こういうの変に気にしちゃうよね。
 イメージカラーみたいな。単なる色でしかないのに、その色だけであのキャラとお揃いみたいな錯覚。

……ぃ。沙奈、機種決まったー?」
「うーん、これとこれどっちがいいと思う?」

 悩んでいるケータイを指さすと、硝子ちゃんが近づいて見比べる。

「ものすごく色合いが真逆だね。沙奈ならこっちが――

 彼女が手を出そうとする前に私はその逆の方を取った。
 私が取ったのは黒と紫のケータイ。通称〝五条先生〟カラーだ。

「私、これにする」
「そ、そうなの? ちなみになんでそれ選んだのか聞いてもいい?」
「黒の方があまり傷付かないし、かっこいいから」

 もちろん、本当はそれだけが理由じゃない。この世界には呪術廻戦の世界だけど、まだ五条先生はいない。だからせめて彼のカラー一つくらい持っておきたかった。それをケータイカラーにする必要はないのだけど。

……もしかして、好きな何かがそれに近かったりする?」

 硝子ちゃんがそう言って私は緊張が走った。

「あー、何か中学校ん時のクラスメイトにアニメキャラが好きな子がいてさ。その子、そのキャラグッズばっかり集めて『かっこいい! 一生大事にする!』って力説してたのを思い出してさ。何でもかんでもそのキャラにちなんだものを選んでたよ。ウケる」

 小さく彼女は笑う。それは嘲笑いというより、懐かしさを感じ取れる微笑みだった。

「それにさ、そのケータイ取ったとき、真剣だったしすごく嬉しそうな顔してたよ」
「え?」

 嬉しい? そんな覚えないのだけど。
 私は手のひらにあるケータイをじっと見つめる。

「こっちの方はなんか、五条に似てるな。これもウケるわー」なんて、硝子ちゃんが楽しそうに笑う。そして、「これなんか夏油っぽくない?」とか言ってラインナップしている棚を二人で楽しく見ていた。
 どれを選んでも、私は黒と紫のケータイ一択だった。理由は分からないけど、何となく元の世界に帰るきっかけのような気がしたのだ。一色しかなかったキャンバスに、初めて違う色が塗られて印象が変わった、そんな感じ。そのケータイが惹かれて仕方ないのだ。
 店員さんが「手続きしますね」と言うので、契約するケータイを差し出すと、店員さんも驚いたのかもう一度尋ねてきたが、大きく頷いた。

(まぁ、女子高生でこんなサラリーマンが好みそうな色合い選ぶ子なんてそうそういないでしょ)

 男子高校生でももうちょっと明るい色を選ぶだろう。
 まぁ、あのスカイブルーの携帯もかわいくてよかったけど、多分五条君のことばかり思い出してしまって使えなさそうだと思ったから。
 彼のことは同級生として好きだ。だけど、それ以上の感情はいらない。だって、元の世界に帰られなくなったら困るから。

「ありがとうございましたー」と店員さんが見送ってくれる中、外はもう星が空に瞬いた頃合いだった。辺りは照明が付いて夜の街へ切り替わる。
「やっとケータイ買えたね! さっそくメールと番号交換しようよ」
「あっ、うん」

 私たちは道ばたに空いたベンチに座り、先ほど買ったばかりのケータイをポケットから取り出す。蓋を開けると画面がライトアップする。

(うわー、ガラケーだ。ガラケーでも買ったばかりって胸躍るよね!)

 またガラケーを触る時が来るとは思ってもなかった。何となく触っていると、感覚が覚えているのか、ポチポチと操作していく。そして、硝子ちゃんとメールと番号を交換した。
 アドレス帳を見れば、先ほど登録した硝子ちゃんの名前があった。

「これが、ケータイ……
「これでいつでもどこでも連絡できるね!」
「うん。ありがとう、硝子ちゃん」
「どういたしまして。というか、なんかさっきすごく素早く操作してたね。実は昔持ってたことあったとか?」
「うーん、昔にケータイに夢中になりすぎて両親に取り上げられたことあったんだよね。それきりケータイ持ってなかったんだけど」

 などと言い訳しておく。しかし、彼女は「そっかー」と特に気にしていないらしい。

「じゃ、私がアドレス帳登録第一号ってわけだ! あいつらに自慢してやーろうっと」

 ニシシ、と企む笑みを浮かべる彼女。仲がいいのか悪いのか分からないけど、それが彼女のいいところなのかもしれない。その無邪気な笑みが、私たち同級生の場を緩ませてくれるのだから。