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呪術廻戦の世界に飛んだ異世界人と分かったので帰ろうと思います。(仮)2

五条夢。続くか続かないか分からない。長らくお待たせしました。
名前変換機能をテストで使ってみたかった題材。
※名前変換なしだとデフォ名(藤森沙奈)になります。

今日はハロウィーンですね。
短くなったけど、元々長かったのを切りのいいところで止めました。
できる限り早めに続きを更新します。



 お昼を少し過ぎた頃。私と硝子ちゃんは区内にあるファミレスへ向かっていた。
 平日のお昼時はまぁそれなりに混んでいた。一人だったら入りづらいが、今回は二人なので臆せず入れたのだった。
「ごゆっくりどうぞ」と店員さんの言葉を軽く聞き流すと「いただきます」と手を合わせる。
 いつもは寮にある共用キッチンを借りてお弁当を作ったり、売店で買ってきたパンとかを食べる。高専はわりと自由がきくようで、校内で食べても校外で食べても構わないらしい。人によっては任務が終わってからご飯を食べに行く人もいれば、先にご飯を食べてその足で現場に向かう人がいるからだろう。
 少し食べると硝子ちゃんが何かに気づいたかのようにポケットからケータイを取り出す。
 彼女もケータイをよく利用するようで、テキパキと文字を打っている様子が窺える。
 送信したのか、パタンとケータイの上部を倒す。

「どうかしたの?」
「ん? 五条と夏油からね。二人でケータイ買いに行くって送ったら一人は『気をつけて』もう一人は『何勝手に決めてんだ』ってお怒り。どっちがどっちでしょうか?」

 突然のクイズ。なんか口調具合からして答えが出ているような気がするけど、一応答えると「正解。分かりやすいよね、二人とも」と小さく笑う。
 ちなみに、気をつけてねと返事したのが夏油君で、怒ってる方が五条君らしい。

「硝子ちゃんはさ」
「んー?」
「私なんかがこんなこと言うのもなんだけど、呪術師として呪霊を祓えないってどう思う?」
「ん? また五条にあれこれ文句言われた?」
「いや、五条君は関係なくてさ」

 呪術師は呪霊を祓う。呪術師なのに呪霊を祓えないのは、呪術師としてどうなのだろうか。覚醒した私が過ごして数週間だけど、授業とか補助監督さんからの評価とか見ていると、五条君と夏油君の活躍ははるか遠く、まるで一般庶民と遠くにいるトップアイドルや政治家のような月とすっぽんみたいな存在に見えていた。
 そうなると、高専に私がいる意味あるのかと思えてくるのも自然だと思う。元の世界に帰る方法を彼女たちに分からないように調べているけれど、何一つ見つからない。そもそも人為的なことなのか、奇跡的なことなのかさえ分からない。
 私と比べると大変失礼だけど、呪霊を祓うという点に関しては同じである硝子ちゃんはどうやって乗り越えているんだろうと疑問に思った。もちろん、患者を診るという大変な仕事を担っていることは知っている。でも、怪我を治してもまた怪我をしてやってくる呪術師を見てどう思っているのだろうか。
 事情を話せば、彼女は初めこそもぐもぐとランチを食べながら聞いていたが、一息つくとはぁ、と呆れたようなため息をついた。

「五条と夏油は世界が違うから。まずあの二人と比べること自体だめ! 比べる対象を間違えてるよ」
「でもさ……

 陰ではいろいろ言われている。低級呪霊を祓うとか回収するとか小さい任務だけどやるようになった。だけど、決まって聞こえてくるのだ。

『まだこれだけしか仕事できないの?』
『もう呪術師あってないんじゃない? 退学すればいいのに』
『気を遣うこっちの気持ちも考えてよね』

 私が呪術師らしくないことはいいとして、よくもまぁ高校生に対してそんな陰口を吐けるなぁと精神年齢大人の私は思う。もしかしたら補助監督さんよりも私の方が年上なんじゃないかと思うくらいだ。

(まぁ、職場でもパワハラやらセクハラやら問題あるもんな。元の世界線では教師が生徒に対して指導と体罰の境目はどこか、なんて特集組まれていたか)

 この時代ではそういう問題はテレビを見ている限りなさそうだった。しかし、元の世界ではそういう部分がピックアップされ、様々な問題が浮き彫りに上がっている。
 いつどの世界線でも、そういう陰口やいじめ、意見の相違などによるトラブルは現れるものであり長年の議題なのかもしれない。

「二人は二人で悩みはあると思うけどね。それは私たちじゃ分からないことだと思う。私は反転術式で相手を治癒することができるけど、ただみんなの無事を祈って見届けるだけなんて私だって辛いよ」

 食後のティーセットがやってきて、紅茶にレモンを入れてレモンティーを作っている。一口飲むと「うん、もう少しレモン入れよ」とレモン汁を絞る。

「私も最初の頃は悩んだよ。でも、帰ってくる場所を守ることはできるかもしれないって」
「え?」

 帰る場所? 硝子ちゃんは守りたいものがあるのか。

「二人共同で任務に行ったことがあったでしょ? んで、私と沙奈が高専で待機してたの。二人が予定より遅れて深夜に帰ってきてさ。私たち待ってたけど、沙奈だけは眠気に勝てなくて先に部屋に戻ってた」
「あ……うん」

 そんなこと、あったかな。でも、何となくそんな記憶があったような気がした。

「二人が戻ってきたときはさ、珍しく怪我しててさ。普段はひょいひょいっと任務終わらせてくるのに二人とも制服汚してくるし、何でそんなことになってんだって聞いたらさ」
「うん」
「些細なことで喧嘩になったみたいでさ。お互いに任務で切羽詰まってて、お互いの鬱憤を晴らしてたらしい。だからといって全身怪我してまでしなくてもいいだろって言ったらさ、『硝子が治してくれるでしょ』って言ったんだよね」
「うん」
「それってさ、私を信頼してるんだって思ったんだ。ただ治すだけで戦うことはできないけど、五条たちのような呪術師が安心して帰って来られる居場所を作って待つのが、私の役割なのかなって思った。だから、二人には内緒だけど、高専卒業したら――医科大学に進学しようかなって思ってるんだ」
「そう、なの?」
「ああ、呪術師を辞めるって訳じゃない。高専専属の医者になろうと思ってね。そのためには一応国家資格取らないといけないじゃん? これは夜蛾先生にも相談してて、先生にも勧められた」

 まだ一年生なのに、もう卒業後のこととか考えているんだ。いや、エリートな人はそれくらい普通のことかもしれない。やっぱり五条たち三人は最強だ。考え方も、生き方も、私には真似できない立派な人間だ。うらやましいくらい眩しい。

「だから、任務で駆り出されるのはもちろんだけど、医学の勉強もしないといけないんだ。おそらく秋くらいからカリキュラム変わると思う。五条たちも任務でいなくなるかもしれないけど、私も資格と大学進学のために勉強しないといけない。だから、沙奈が一人で過ごす時間は増えてくるかもしれないけど、私たちはずっと同期だし、友達なのは変わらない。それだけは忘れないで」
「硝子ちゃん……

 私たちが授業や任務を受けている間に、どれだけ悩んだだろう。相談できる相手も先生しかいなかったのだろう。私は自分のことばかり考えていて馬鹿みたいだ。
 私は一口ケーキを口にする。甘くておいしいけど、この気持ちをどこにぶつければいいのか分からず、甘酸っぱい味を噛みしめていた。

「私は沙奈のこと好きだよ。だから、沙奈らしく過ごしてよ」

 それは、陰口で言われていることの答えのように聞こえた。

「五条たちも分かってるよ。陰で言われてるんでしょ? そんなに言うなら自分たちが祓いに行けばいいのにね。仮にも人に祓ってもらってる身なのにさ」

 そのくせ、最強二人ではニコニコと笑っては頭を下げている。ああいう人間は自分より格下の人間しか威張れないどうしようもない人間なんだよ、と慰めるように彼女は言う。

「で、どうなのさ?」
「どうなのって?」
「そんなの分かってるでしょ。五条とはうまくいってんの?」

 あーやっぱり避けられないか。
 もちろん、私の悩みもあった。だけど、その悩みで恋バナはなしにしてくれないかなーとかすかな望みだったのだが、気づかれてしまった。

「うまくいってると言えるか分からないけど、よくしてもらってるよ。荷物とか持ってもらってるし」
「確かにねー。最初は夏油に言われて嫌々運ぶばっかりだったけど、最近は自分から関わるようになったよね」

 そう、彼が高専にいる時だけに限るけど、怪我が治るまでの間、重い物を持ってくれたり、不自由な時は彼に助けてもらっていた。この間、私の部屋で告げられたとおり、『沙奈の怪我が治るまでの間、世話してやる』を実行してくれていたのだ。
 運ぶときも私の歩幅に合わせてくれるし、会話もしてくれる。そのお礼かよく分からないけど、世話係という名目でたまに私の部屋に来ることが増えた。もちろん、買い出したものを部屋の中まで持ってくれたり、今日までケータイを持っていないため代わりの連絡係も担っていた。

(あの殺風景な部屋の何がよかったんだろう?)

 我ながら女子の部屋とは思えない部屋だと思うのだけど、それが逆に彼にとって新鮮だったのか気に入ってくれたらしい。彼曰く「この部屋にいると眼が疲れないし落ち着くから」という。

……でさ。五条を部屋に入れてるでしょ?」
「えっ?!」
「寮の壁って薄いんだよね。だから時々五条の声が聞こえてきてさ……本当に覗きたくて覗いてるわけじゃなくて、壁が薄くてね!」

 本当か嘘か分からないけど、なぜか彼女は笑ってそう答える。実は盗み聞きしてたかもしれないし、照れ隠しという名の照れ笑いなのかもしれない。

「多分大丈夫だと思うけど、何かあったら大声で叫ぶなり、私のところや寮母さんのところに逃げなよ? 一応私たち女子だし、相手はあのクズでも〝男子〟なんだからさ」
「あ……うん。そうだね」

 高校生になると好奇心旺盛も落ち着いてくる頃合いだと思うが、逆のパターンもあり得る。仮にも今の私は精神年齢大人の私だ。付き合いはしても、体の関係は御法度だ。それは高校を卒業してから……っていうか、なんで付き合うとか恋人作る前提みたいなことになってるんだろう。

……私だってまだ沙奈の部屋にお呼ばれしてないのに」
「硝子ちゃん?」
「ううん、何でもない。じゃ、そろそろケータイ買いに行こっか」
「うん」

 私たちは会計を済まし、ケータイショップへと足を運んだ。