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ちこと
2024-08-13 20:38:52
17525文字
Public
イベント用サンプル
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【チャレ29発行】「冒険のはじまり」サンプル
チャレ29発行の新刊サンプルです。本文全体の4割ほど。
サトシとピカチュウがエリアゼロでコライドンと出会うIFのお話です。冒頭の注意事項をご確認ください。
BOOTHでの通販受付中です→
https://momo-chicotto.booth.pm/items/6039329
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エリアゼロでサトシとピカチュウとコライドンが出会うお話です。
▼ 原作ゲームのネタバレ(特にコライドン周辺)を一部含みます。
▼ ペパーやオーリム博士など、原作の人間キャラクターは登場しません。
▼ コライドン周辺の捏造を多分に含みます。
▼ 途中でサトシのピンチ展開があります。テレビシリーズや映画で描写された範囲内かと思いますが、そういった描写が苦手な方はご注意ください。
序
そのポケモンを前にして、サトシは思わず息をのんだ。
紅い体を下から順に見上げていくと、背丈はサトシの倍ほどもある。脚も腕も太くたくましい。喉から腹にかけて見られる黒く大きな喉袋は、タイヤがくっついているかのようにすら見える。
だがサトシの目を何よりも惹いたのは、ポケモンが頭部に抱く大きなトサカだ。根元から先に向かうにつれて青紫から白に変わるグラデーションが美しく、まるで頭に大きな翼が生えているようだった。
その、翼を抱いた頭部のすぐ下。ポケモンの瞳が、じ、とサトシを見据えた。
どきん、と胸が大きく跳ねる。知らず背筋がこわばる。
オレンジ色に輝く瞳に射貫かれ、サトシの心はふるえた。
なぜだろう、
――
すこし、こわい。
「ぴかぴ」
耳もとで、相棒がちいさく囁いた。心のなかで頷き応える。ピカチュウも感じているのだ。
ポケモンから放たれる迫力に、サトシは無意識のうちで、わずかに畏れを抱いた。恐れているのではない。畏怖している。
まるで、伝説と語られるポケモンたちのような。
サトシはもう一度息をのむ。こいつは、いったいなにものなんだろう。
名前も知らないポケモンは、サトシを見つめ、ひとつまばたきをする。そして、体躯にたがわず大きな口を、ゆっくりと開き
――
「
――
あぎゃす」
こぼれたその鳴き声に、サトシは「へ」と間の抜けた声を漏らした。
あれ、なんだかずいぶんとかわいらしい。勝手ながら、もっとこう、重厚で荒々しい声色を想像していたのだ。
「あぎゃ」
腹の底にも響かないような声で、ポケモンはもう一度鳴く。
それが合図になったかのように、背筋が急に縮こまっていった。二本の足で立っていた姿が四つ足になる。喉袋の厚みが減り、胸の部分に無理なくおさまっていく。
翼と見まごう見事なトサカも、しゅるしゅるとちいさく畳まれてしまった。
サトシとピカチュウを圧倒していたはずの迫力は、すっかりとどこかへ消え失せる。
「
……
おまえ、どうしちゃったんだ?」
「あぎゃあ」
四つ足になったぶん目線も下がる。サトシの頭よりすこし下から、オレンジの瞳が見上げてきた。
その瞳が心細げに揺れる。サトシにはそう見えた。そんな目で見つめられては、思わず笑みがこぼれてしまう。
「大丈夫だって」
自然と手が動き、気づけばそのポケモンの頭を撫でていた。
「なんか困ってることがあるなら、おれたちが力になるからさ」
「ぴか、ぴかちゅう!」
ピカチュウの声も頼もしい。
お互い、さっきかれに抱いたはずの畏れは、すっかりとどこかへ消え失せてしまっていた。
ポケモン図鑑をひらいてみても、紅いポケモンの正体は知れなかった。
当然名前もわからず、なんと呼ぶべきかサトシは悩んだ。手頃なニックネームでも付けられればよいのだが、これだといった案がすぐには浮かばない。
サトシがピカチュウとああだこうだと話していると、いつのまにか、紅いポケモンはその口に何かをくわえてきていた。
「なんだこれ
……
ノート?」
「ぴーか?」
使い古されたノートを開くと、誰かの記録が記されていた。びっしりと書かれた文章は研究者のそれのようで、書かれたことの半分も理解できないまま斜めに読む。
途中にひとつ、名前のような言葉があった。ポケモンのことをこう名付けたという。
「コライドン」
読みあげると、かたわらのポケモンが「あぎゃ!」と鳴いた。
「おまえ、コライドンっていうのか?」
「あぎゃす」
大きな目を細め、ポケモンは応える。サトシの目には、かれが初めて笑ったように見えた。
「わかった」
頷いて、あらためて向きなおる。
「おれ、サトシ。こっちは、相棒のピカチュウ」
「ぴか、ぴかちゅう」
「よろしくな、コライドン」
コライドンは一度まばたき、「あぎゃす!」と頷いた。
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