Momosei808
2024-10-27 20:36:44
10381文字
Public SD(リョ花)
 

なんかおおきくてかわいいやつ

唐突にリョータとの体格差を意識してしまった花道が悩む話。
エッチな場面は……ご想像にお任せします(??????)

「なぁー、新しく出来た彼女はどうよ」
「あーー……、まあ、順調だけどよ」
「余裕だなー、流石告白されては来るもの拒まずなだけあるわ」

ホームルームも終わり、放課後に入った教室で、桜木花道の地獄耳はとある会話をキャッチした。
ちら、と前方を見ると、クラスの中でも比較的異性に人気があると言われる男子に、友人と思わしきもう一人が声をかけていた。
クラスメイトの女子が、サッカー部のホープでそこそこ愛想が良くノリが良いので、よくモテるのだと言っていた。
これからバスケ部の部活に向かうための準備をしていた花道は、準備もそこそこに更に聞き耳を立てた。

「しっかしモテるよなーお前、高校入って彼女3人目かぁ?」
「そーだったかもな」
「ちゃんと覚えてろよ~。長続きしねーのは何でだよ」
「な~んか、付き合ってるうちに束縛しようとしてきてウザくなるんだよな~……
「そんで結局別れるのか。どっちから振るんだよ?」
「そこまで聞く? ……そんなん、どっちのパターンもあるよ」
「向こうから振ることもある?」
「ああ。あと、俺の方から言うのもあるけど」

(なななな何という不誠実でフラチな奴なんだ!!! このオレですらこれまで散々フラれまくってきたのに!!!それに、折角付き合ってるカノジョをウザったいとは何事だ!!! 告白してきた女の子の誠意を何だと思ってやがる!!!!)

これらの会話を聞いて、早速花道の心は怒髪天を衝いた。
メラメラと燃え上る怒りの炎のままに、その目はぎらりと鋭さを増し、表情が殺気を帯びる。
その剣呑な様子に、周囲のクラスメートは何事と思いながら、すかさず花道から距離を取った。
今は花道の友人で、唯一彼を止められる水戸洋平は、早々にバイトのために帰宅した。
怒りに猛った大魔神を止める術を、1年7組は持っていないのだ。

ふぬっ!と鼻息荒く、花道は立ち上がった。
そのままのっしのっし、と件の生徒の傍に歩み寄る。
狭い教室で、花道の脚の長さであれば、数歩もあれば移動できる。
周囲の学生は花道を恐れて、モーゼのように道を開いていた。
そしてその一方で、未だに会話をしているちょいモテサッカー部男子は、己の危機に気付いていない。

いざ彼の肩に掴みかかろうとした瞬間に聞こえてきた言葉に、花道の手が止まった。

「てゆーか、今のカノジョ、俺とあんま身長変わんねーし、体重は俺よか重いんだぜ? やっぱ女の子は華奢じゃなきゃダメでしょ」
「お前がガリなんだろ。彼女、ふっくらしてるけどいい子じゃん」
「いやー、俺よか重いしデカいと……、萎える」
「おま……、露骨なこと言うなよな~~~~」
「大事なことだろ。エッチのたびに疲れるし体力使うし、しんどいんだよな……


【エッチのたびに疲れるし体力使うし、しんどいんだよな】

花道の頭の中で、何度もその言葉がループする。
その言葉が頭の中で何度も復唱される。
流石に会話内容が会話内容だけに、彼らの明け透けな話は声音を抑えてひそひそとされていたため、クラス内で会話内容に気付いているのは他に花道しかいない。
花道の頭は、今、その内容に支配されていた。


──重いと、しんどい?
──デカいと、しんどい?
──そりゃ、オレ、リョーちんよかずっとデカいし、重いけど。
──リョーちんのがずっと小さくて、軽いけど。
──けど、リョーちんはこんなモヤシじゃなくて、ちゃんと鍛えてるし。
──でも、でも、万が一。

──リョーちんも、同じことを、考えてたら???

ぐるぐると、ネガティブな思考と感情が、花道の内部を駆け巡る。
そして、いきなり自分の間近で固まった巨漢の存在に、件のサッカー部男子は漸く気づいたらしい。
「うぉわっ!? さくらぎっ??? 何っっっ!?!?!?!?!?」
今にも自分に掴みかかりそうになったまま動きを止めた花道の異様さに、彼は椅子から立ち上がり、後ずさった。
その動きに、自失状態に追い込まれていた花道は、ハッと気が付いた。
そして、逃げようとした彼の肩を掴みかかって、頭を勢いよく振りかぶって、一発──、
と行きたかったところだが、咄嗟の判断で頭突きをお見舞いするのを回避した。

その代わり、ガッシリと男の両肩を掴んで、それはそれは鋭い目つきで言ってやった。

「いーか、付き合ってる女子を、ナイガシロにすんじゃねーぞ。その子がてめーみてーなクソ野郎を好きなのは事実なんだからよ」
元ヤンキーの、本気のメンチ切り。
それを、目の前数十センチという至近距離で浴びせられて、男子生徒は震え上がった。
顔面が蒼白になりながら、必死でコクコクと頷いたのを目の当たりにし、花道は手を離した。

そして、クラス中の注目の的になったまま、花道は自分の荷物を取りに自席に戻ると、そのまま教室を後にした。


廊下に出た途端、1年7組の教室が、ざわざわと再び喧噪に包まれる音が聞こえたが、それはもう花道の耳には入っていない。
今の花道の心の中は、たった一つのことに囚われていた。

──リョーちんも、オレとえっちする時、しんどい、って思ってるのかな……