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Hizuki
2018-09-16 10:10:49
6835文字
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15ふせったーログ[ノクプロ・プロノク]
【FF15】ノクプロ・プロノク。ふせったーに上げていた分のSSまとめ。
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『桜色の景色を君と』(ノクプロ)
部屋のドアを軽くノックする音がした。
何度も聞いてきたその叩き方に誰と問わなくとも、ドアの向こうにいる人物が誰なのか分かっていた。
「ノクト、少しいいか」
「んー、どうしたイグニス」
カチャリとドアは小さく音を立てて開かれる。
集中力が切れ、さっぱり内容が入ってこない本から視線を上げると、そこにイグニスが立っていた。
「お前宛てに手紙が届いている」
「
…
は?手紙?」
思わず間抜けな声が漏れた。
市民にも携帯電話が普及し、今となってはほぼそれ1台で連絡がつくこのインソムニアで、わざわざ手紙。
一部公の場でまだ紙媒体のものが使われていることもあるとはいえ、これは個人宛てのもの。
よく分からないまま、イグニスが持ってきたそれを受け取る。
薄緑色の封筒の表面には間違いなくオレの名前が書かれていた。
その文字には見覚えがあって。
受け取って初めて、その封筒の封が開けられていないことに気付く。
普段なら何が入っているか分からないからという理由で、中身は全てチェックされてからオレの手元に来る。
慌てて封筒を裏返し、差出人の名前を確認する。
「プロンプトから?」
―
プロンプト・アージェンタム。
裏面の右下、そこには確かに親友の名が記されていた。
封が開けられていなかったのはそのせいかと一人納得する。
でも、何でプロンプトから。
「確かに渡したぞ」
オレの様子を見てイグニスが口元を緩ませる。
本当に用事はそれだけだったのか、小言の一つを言うでもなく部屋を後にした。
引き出しからペーパーナイフを取り出すと、上部の隙間に差し入れ、慎重に刃を滑らせる。
中に入っていたのは3枚の写真。
1枚は青空の下、木の全体を収めたもの。
そして間近で撮られた淡いピンク色の花。
―
これは、そうだ桜の花だ。
学生時代に教科書で見た記憶がある。
休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴り、教室の面々が席に着き始めた頃。
それにやや遅れてオレの前の席のプロンプトがバタバタと戻ってきた。
「はぁー間に合ったぁ
…
」
ちらりと様子を窺えば、その手には他のクラスから借りてきた教科書を持って。
「ノクトが教科書見てるとかめっずらし!何見てんの?」
意外そうに声を上げ、プロンプトが背もたれに腕を乗せオレの方を向いて座る。
「んー、いや綺麗だなーと思って」
「あ、桜の花じゃん。キレイだよねー」
現代文の教科書の口絵として載っていた写真。
道の両側に桜の木が植えられている。
満開のそれはまるでピンク色のアーチのようだ。
「どっか見れるとこあんのか?」
「いや、この辺にはないんじゃなかったっけなぁ」
「そっか。近くにあるんなら見てみたかったけど」
ガラリと教室の扉が開き、教師が入ってきた。
そして、日直の合図で授業が始まった。
結局当時のオレ達に行けるような場所ではなく、そんなことがあったことすらすっかり忘れてしまっていた。
懐かしさを覚えながら写真を捲る。
プロンプト自身の姿と桜の木を一緒に収めた写真。
落ちた花びらが数枚、プロンプトの金糸のような髪の上に乗っている。
誰かに撮ってもらったのではなく、自分でシャッターを切ったであろうもの。
その裏側にメッセージが一言書き添えられていた。
『合宿先で見つけた!』
写真を勉強したい、と言ってプロンプトは進学した。
高3にもなれば進路の話が自然と出てくるようになった。
やりたいことが見つからない、あの学校に行きたい
―
他の生徒と同じようにプロンプトも色々悩んでいたのを覚えている。
意思に関わらず最初から将来が決まっていたオレには、迷うほど選択肢があるということが羨ましく思えたこともあった。
そして、学校の合宿でしばらくこっちにいないから、と連絡があったのは2週間ほど前の話だったか。
とはいえ何かしらメッセージはやりとりしていたせいか、いないという実感はほとんどなかった。
携帯を掴んでメッセージアプリを開いて、文字を打ち込もうとしたところで手を止める。
待つ時間すらも惜しくて、そのまま通話ボタンを押した。
数回呼び出しのコールが聞こえ、プツリと音が切れる。
『あれノクト、どしたの?』
プロンプトの声が聞こえた。
「どしたの、じゃねえよ。ったく
…
」
聞こえてきたのはどうにも気の抜けた声で、きっとぽかんと口を開けているのだろうと想像がつく。
いや、そんなことを言うために連絡したわけじゃない。
「
…
写真、ありがとな」
『あ、届いた?』
写真と言うとプロンプトもピンと来たようで、声がいつものトーンに戻る。
「おう、まさか手紙で来るとは思わなかったわ」
『へへっ、たまにはそういうのもアリかなーと思ってさ』
机の上に広げたそれを手に取る。
よくよく封筒を見れば本来押されているはずの消印がない。
恐らくイグニスに直接預けたのだろう。
帰ってきたと連絡が来たのは昨日の夕方。
一体どうやってあいつの時間を押さえたんだか。
今でこそこうやってすぐに連絡が取れるとはいえ、昔は手紙でのやり取りが主流だった頃もあるという。
見ただけで相手が分かる手書きの文字。
確かにたまにはこういうのも悪くないか、なんてぼんやりと思う。
「あーわり、今大丈夫だったか?」
『順番逆でしょーそれ。てかノクトからならいつだって大丈夫だって』
プロンプトのけらけらと笑う声が聞こえた。
続けられた、ノクトからなら、という言葉にほっとする。
『
…
ね、ノクト』
「ん?」
笑い声が消え、一呼吸置いてプロンプトが口を開く。
『次は一緒に見に行こ。高校の時、見たいって言ってたじゃん?』
あの時のこと、覚えてたのか。
忘れていたとしてもおかしくないようなこと。
言ったオレ自身すらも忘れていたというのに。
『オレさ、ノクトと一緒に見たい』
まさかそんなことを言われるなんて思ってなかった。
「
…
そっか。じゃ、案内は任せたぞ」
『もちろん!免許も取ったし、どこへでもお連れしますよ?』
「お前の運転とか不安すぎんだけど」
『あっ、ひっどー!ちゃんと安全運転だしオレ!』
「冗談だって」
からかってみせれば本気で反論される。
イグニスの運転に慣れてしまっている分、他人の運転に不安がないと言えば嘘になる。
けれどプロンプトだからこそ、安心して乗れる。
それに、オレが乗っているのならそんな無茶はしないだろう。
「急にかけて悪かったな」
『全然。むしろ嬉しいくらいだし』
「んじゃまたな」
『うん、またね』
通話を切って携帯を机に置き、もう一度写真を手に取る。
この桜色の景色を、プロンプトと。
約束が果たせるのは一体いつになるのか。
来年か、再来年か、あるいはもっと先か。
それよりまずは写真立てを探さないと。
データで送るという方法もあったのに、わざわざプロンプトが届けてくれたのだ。
いつでも目にできる場所に飾っておきたかった。
後でイグニスに聞いてみれば何か見つかるだろう。
時計に目をやれば18時を回ったところ。
晩飯の時間までもう少しだけ頑張るか、と大きく伸びをしてもう一度本に視線を戻した。
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