enoki181
2024-10-13 22:27:24
12540文字
Public リプレイ
 

【ストリテラ】すみおよぐ 冬の巻

俳優:黝さん、エノキ
シナリオ https://talto.cc/projects/d5TBzmX3fM5XTPV6cWCgQ



◆メインチャプター:脱走


 ふと気がつくと、作家、もしくは金魚、どちらかがいない。ふと部屋の窓の下をみると、雪道の中、ポツンと立って手を振っている。いつの間に外へ出たのだろう。このまま外へ散歩に出ようか。それとも、天気の変わりやすい冬、見慣れない土地、雪深い道。大変そうだ。部屋へ連れ戻そうか?それとも気分転換に冒険してみようか。


三田 小一郎:しばらく机に向かって原稿を進めたので、気分転換に外へと出た。紅璃は寝ていたので声をかけずに。

ふと顔を上げて気づいたが、ここからだと部屋が見えるのだ。
あのあたり……と視線を泳がせた先、窓から顔を覗かせる紅璃と目が合った。手を振って笑う。

紅璃:ふと起きたらこいちろーがいなかった。
わたしはこいちろーがいなくなると眠気がさめてしまうのだ。

キョロキョロと辺りを見渡してふとつららのできている窓から外を見てみると、雪かきのされた道をこいちろーが散策しているのが見えた。
そしてこいちろーがこちらに手を振って笑っている。
それを見たわたしは「ずるい!」そう思った。

「こいちろーったら、わたしを置いて一人でお散歩してるのずるい!わたしも行く!」

そうしていてもたってもいられなかった私は部屋から飛び出した。
もちろん、こいちろーの元に行くために。

[ 紅璃 ] コレクト:0 → 3

三田 小一郎:「え?きをつけ」

て、まで言う前に紅璃が視界から姿を消す。

遠くから雪合戦の声が聞こえる。来る途中にかまくらも見たな、子供連れで誰か来ているのかも。

見上げた空から雪が降ってきた。
賑やかな雪に吸い込まれ、僕の周りは静かだ。世界に一人きりのような錯覚。瞳を伏せる。

さく、と雪を踏んで近づいてくる音がする。

……あかり」

瞼を上げ、近づいてくる彼女に笑いかける。

「紅璃はいつだって僕の傍に来てくれるよね、見つけてくれる」
「講義、聞きに来てくれたこともあったっけ。嬉しかった」
……でも、好きなところに行っていいよ、って言われたら。どうする、紅璃。先生のところに戻る?」

とりとめのない、ただ思いついて口をついて出ただけの質問だった。
けれど、答えを聞くのが怖い。もし紅璃が戻るというのなら、僕はひとりぼっちだから。

[ 三田 小一郎 ] コレクト:0 → 2

紅璃:着こんでいても冬ということもあり、外は冷たい。足にしもやけができるんじゃないかしら?と思うくらいには室内と外の温度差は比べ物にならない。

滑らないように足元に注意しながらこいちろーの元へとやってきたら、こいちろーがわたしに聞いてくる。

「こいちろーは見つけやすいわ。一目でわかるもの。今だってそう」
「あら、わたしのことを連れてきたこいちろーが今更そんなことを言うの?もうわたしはどこにだって行けないのに?今だってこうして寒くて凍えているのに?」

そう言ってこいちろーにひしっと抱きついてからわたしはぱくぱくと口を開く。
まるで餌をねだる金魚のように。

「こいちろーがいないと、紅璃は眠れないのよ?」

[ 紅璃 ] コレクト:3 → 6

三田 小一郎:「それは……大問題だね」

口元がゆるく弧を描く。
どんな口実だっていなくならないでくれるなら嬉しかった。
けど、こんなに欲しかった言葉なんてないよ。

「最初だって、僕が紅璃を見つけたんじゃなくて、逆だったのかもしれないな」

ああ、そうか。
自分の作品が世にでないことが嫌なのではない。僕の存在が消えたようで、それが嫌だったのだな。
紅璃の目は最初からはっきりと僕だけを見つめてくれていたんだ。

「紅璃、さいごまで僕の傍で眠って」

紅璃の背中に腕を回す。
互いに寒さで震えている。けれど、二人で熱を分け合えば、雪の中でももう少しだけ立っていられるような気がした。

[ 三田 小一郎 ] コレクト:2 → 3

[ 紅璃 ] FP:0 → 1


◆メインチャプター:部屋でくつろぐ


 せっかくの旅館なのだから、ゆっくりくつろぎたい。外の厳しい凍てつく空気とは異なり、部屋は快適だ。日常の何もかもから解放されている……作家が缶詰されている事実を抜けば。作家はすぐ原稿にとりかかろうとするだろうか?それともそんな気配はない?金魚は知らない場所は楽しいだろうか?ストレスにならないだろうか?


紅璃:窓の外は相変わらず雪景色が続いている。
室内だというのに時折口から吐く息は白い。寒いから、冬という季節はわたしはあまり好きじゃないかもしれない、とそう少しだけ思った。

お部屋に用意されたよく知らない銘菓や、お茶を口にしながらわたしは畳にごろりとしている。

また体の芯まで冷えてしまったら温泉に入って癒されたい。そんな事を思いながら、わたしは原稿に向かっているこいちろーの方をチラリと見た。

「こいちろー、お仕事はどう?」

[ 紅璃 ] コレクト:0 → 7

三田 小一郎:ギクリと体が固まった。可愛いけど、見張りのための問いかと思うと緊張する。

「まだ、もうすこし……

進捗はよろしくない。
今まで考えもしなかったことに頭を悩ませていた。

――僕の存在を残すにはどうしたらいいのだろうか。

人の名前で世にでる話に、何を考えているのだろう。
鉛筆を握り直す気にならず、頬杖をついて紅璃を眺める。

「ごめん、つまらない?あとで旅館の中なら一緒に歩くからさ」
「せっかくの遠出だし、ほんとは観光もしたいんだけど……あんまり時間の余裕がないからね」

[ 三田 小一郎 ] コレクト:0 → 3

紅璃:なんだか申し訳なさそうに話すこいちろーにわたしは首をゆるく振った。

「ううん。違うの」
「寒いからこいちろーにくっつきたいけど、お仕事のジャマしちゃうかもって思ったから、お仕事今どうなのか聞いてみただけ」

きっとこいちろーにくっついたらあったかくて寝ちゃうからお仕事にならないかもしれない。そう考えていたわたしはちらりとこいちろーを見て、羽織る服をゆるくしゅるりと波打たせながらゆっくりと起き上がった。

三田 小一郎:「そっか……寒かったかぁ……

あまりの可愛さに言葉が詰まる。鉛筆を机の上に落としたが、こんなもの拾わずにそのままだ。
机から離れ、紅璃の方へ這って移動する。

「もう一回お風呂入る?それとも、お布団?」

くしゃくしゃの服の皺ですら愛らしい。たまらなくなって、ぎゅう、と抱きしめた。

「風呂も布団もなくても、こうしてるだけでもあったかいな。金魚なのに、不思議だ」

くすくすと笑みが零れる。

紅璃:太っ腹とはこういうことを言うのだろうか?
お風呂もお布団にも一緒に入れるなんて、なんて素敵なお誘いなのだろうか?
わたしはそんなこいちろーの言葉に嬉しくてふにゃっとだらしなく笑いながら言った。

「今こいちろーがこうしてくれるから大丈夫」
「あったかいね、こいちろー」

そう言ってわたしもこいちろーを抱きしめた。
彼のお仕事のジャマをしているかもしれないと心の隅で思いながらも、こうしてくれる彼に甘えてしまうわたしはズルイ女、っていう人なのかもしれない。

[ 紅璃 ] コレクト:7 → 8

三田 小一郎:うん、と頷いて頭を撫でた。
くっつきたいと甘えてきたのは紅璃だけど、僕が甘やかしてもらっている気分だ。

「幸せ者だなぁ、僕は」

頭を肩にもたれかけ、しみじみと言った。

「紅璃、愛してる」

この温もりを離さないように、僕は僕として踏ん張らなくてはいけない。作家を続けて行かなくてはいけない。
そのためにも、どうやって作家を続けていきたいのか、向き合わなくては。

今回の缶詰で壁に直面したわけだが、どこか心が弾んでいた。

[ 紅璃 ] FP:1 → 2