声に出して、言の葉に乗せて

MHRウ教×ハ♀。相思相愛。
基本ハ♀視点、途中ウ視点あり。

不変なようで脆く儚い日常の中、自分の気持ちを伝えられる幸せ。



嗚呼、俺は、いつからこうしているのだろう。

頭がぼんやりとする。

目覚めなければと思うのに、どうしてか、体が言うことを聞かない。

俺は目を開くこともできず、体はまるで水中のような闇を揺蕩たゆたい、妙に、心地好い。

何も、見えない。

睡魔に襲われている時のような、このまま考えることを放棄してしまいたくなるような、手招きしてくるあまりにも甘い、闇のいざない。

──俺……俺は……

思考が蕩け始めたかと思った時、それを阻止するように、刺すように胸が痛んだ。
かと思えば続けざま、引き絞られるように苦しくなっていって、何かが、聞こえてきた。

何を言っているのか、まだ分からない。

けれど、確かに、声がした。

懐かしくて、愛おしくて、手を伸ばして抱きしめたくなる声だ。

──愛弟子……

そう思った時、俺の体が、ぶるりと震えた。

見えなくても分かる。
闇の中にいても感じる。とても遠いところからだけれど、声がする。

──愛弟子……泣い、てる……

まるで渇いた風のように切なく、掠れた声。

俺の胸が、どくんと一度大きく震え、焼けるように、ますます熱を帯びていく。

──愛弟子が、泣いてる……

何を言っているか聞こえないのがもどかしい。

けれど、泣いているのは分かる。

炎のような熱が、胸から、じわじわと体中へ広がっていく。
全身に力が満ちて、手足が、動くような気がした。

──誰だ……

──どこの、誰だ……!?

闇の中で、俺は、いつの間にかこぶしを握っていた。

脳裏に駆け巡るのは、愛しい人の、幼い頃から想いを通わせ合い、将来を誓う仲となった今までの、積み重ねてきた日々の時間。

陽射しのように眩しく、灯火のように温かく蘇る、可愛いあの子の、愛する女性の笑顔。


──誰だ……

──俺の、大切な愛弟子を……

──俺の愛する人を、泣かせたのは!!


体が動く。
目が開けられる。

待っていてくれ、愛弟子。

大切なキミを泣かせる奴は、誰であろうと許せない。
 
俺は泣いているキミを置いていったりしない。

絶対に、絶対に、何があっても助けに行くよ。

小さい頃からずっと、俺は、キミが大切だから。キミの笑顔が見たいから。
 
俺は、キミのことが大好きだから。

これからもたくさんのことを、俺の気持ちを、キミに伝えたいから。

俺は、心からキミを愛している。
ずっと、ずっと、俺はキミの傍にいる。
絶対に、キミを独りになんかさせない。

『ま……な、で……。愛、弟子……愛弟子ッ!』

闇の中で目を開いた刹那、俺の視界は、まるで世界の目覚めのような、眩いばかりの白光で満ちていった。

@acadine