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浮き流し
2024-09-20 17:32:24
7918文字
Public
イチ松
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イチ松のお題より
ワン(1時間)で収まってないですが、ゆるゆる参加したもの
↓お借りしたお題たち
9月のお題
・体育祭(1P) ・秋桜(2P)
10月のお題
・文化祭 &いたずら(3P)
11月のお題
・赤(4P)
1
2
3
4
お借りしたもの「秋桜」
イチ→松 片恋イチと思わせぶり松
●別物なんだって
夕ご飯時、ちょうど前にいた松本がふと思いついたように話しかけてくる。
「イチノ、花見とか興味ないか?」
「どうしたの突然」
「コスモス祭りってイベントがあるらしいんだ」
ほら、掲示板の隅に貼ってあったやつ。雪のないスキー場だってさ。
その説明に記憶を辿ってみれば、確かにそんなポスターがあった気がする。
「バスは乗り継ぐんだけど、折角なら一緒にどうかと思って。イチノ、こういうの好きだろ」
思わぬ提案に嬉しくなる。
松本とは最近、ようやく部活以外でも話す仲になったのに。オレが花を好きなこと、覚えてくれてたんだ。
「えっ、うれしいけど
……
いいの?」
「ああ。クラスの友達が、人数多い方がいいって言ってたから」
この日なんだけどと続ける松本に、浮かれた気持ちが萎む。
……
なんだ、ついでなのか。
一瞬喜んだ分、落胆は大きい。ただそんな事おくびにも見せず、悩む素振りをする。
「うーん、どうしようかな。時間、結構かかるよね」
「そうだな、電車とバスだけで片道1時間半だって。それに待ち時間と昼ご飯が挟まるな」
「そっか。そしたらごめん、オレちょっと用事あるんだ」
誘ってくれたのにごめんね。
オレはなるべく申し訳なさそうに謝る。
「いや、先約があるなら仕方ない。イチノも行くかもって言ってしまったから、明日謝ってくる」
松本は気にした様子もなく、先これ片付けてくる、と食べ終わった食器を持って立ち上がる。
思いを寄せる相手と片道1時間半ふたりきりは心臓が保たない。他の人がいる時でよかったんじゃないかとは思う。
だけど、都合のいい友達のひとりになるのなら、行きたくはない。
後日。
コスモス祭りと言われるまで忘れていた頃、再度松本に誘われる。
「イチノ、やっぱり行く気はないか?」
「オレ、その日は用事あるって
……
」
「用事があるのは分かってる。ただ、行くと言ってた奴が目当てのキッチンカーが来なくなったからってカラオケに変えるんだ。けどオレは断ろうと思ってる。行きたかったのはコスモスを見る方だから」
勝手な事を言ってるのは分かってる。
松本は口をまごつかせながら、真剣な眼差しでオレを見る。
「昼ご飯に時間は掛けない。だから本当に行って戻るだけになってしまう。けど、イチノと一緒に行きたいんだ」
「他の友達は?カラオケ行かない人いないの?」
その人と行けばいいじゃん。
食い下がる松本に、それが普通でしょと気のない返事する。
「いやみんな一緒に盛り上がりたいみたいで
……
。だから、イチノにお願いしたいんだ」
……
そっか、ふたりきりか。
消去法だとしても、嬉しさが湧き上がる。ただそれを抑え、どうしようか悩んでる風を醸す。
「うーん、ごめんムリ
……
と言いたいけど、手が空いたから用事早めに済ましちゃったんだよね。一緒に行く?」
不安そうだった松本の顔がパッと輝く。
「ああ。来てくれると嬉しい」
コスモス祭り当日。
会場では色とりどりのコスモスが植えられている。
単にピンクと言っても白っぽいものから紫まで、種類が豊富にある。背丈も膝から腰や胸の辺りまで様々な高さで揃えられている。
こんなにも大きいのに花も枝も透き通りそうな艶感がある。至近距離で見られるから、色が違えば花の香りも違うことに気付く。松本は珍しく写真を撮っては嬉しそうに、ブレて3倍に増えたピンク色の画像を見せてくれる。
他にも、コスモスで作られた迷路に入る。女性客の顔の高さまではあったものの、流石にオレ達が入ると狭いし先はある程度見える。だけどここは傾斜が大きい場所だ、少し離れるとオレと松本の高さが縮まる。
ビヨンと伸びた花が目の前を横切ると、スマホを片手に立ち位置を調整する。すると、晴れ渡った空とオレとの間に、コスモスの服を着たり頭にくっ付けた松本が現れる。面白いもの撮れたよ、なんて茶化してしっかりとお気に入りのハートマークを押す。
時間を気にしなくてよくなったため、折角来たからと昼食を探す。ナンに惹かれ、インドカレーのキッチンカーに並ぶ。
オレは1番辛いもの、松本は1番辛くないカレーを選んだ。オレは想像以上に大きいナンとカレーの残量を計算する松本に、思っていた疑問をぶつけてみる。
「ところで、なんでオレ誘ってくれたの?」
「イチノ花に詳しいだろ。だから、こういうの好きかと思って」
確かに花は好きだけど、特別詳しいって事はないと思う。なんとなしに言った植物の名前を、松本が知らない事に驚きはしたけど。
「オレ用事あるって断ったのに?」
「ああ。このイベント今日までだろ?だから行きたくて。あとはまあ、イチノとだと居心地がいいから、一緒にいたかったってのはある」
お前を好いてる相手に向かって、なんて事を言うんだ。過剰に驚いてしまったのを落ち着け慌てて平常心を装う。
「
……
そう」
オレの顔が強張ってたのか、松本が慌てて弁明をする。
「あっべつに変な意味じゃないぞ!?花を見たいと思ったら落ち着いたヤツがいいと思っただけで
…
!」
「まあ、オレも見たかったしね。誘ってくれてありがと」
変な意味でもいいのに。
薄く緩ませたオレの目に、松本の笑顔が眩しく映る。
「オレも。イチノが来てくれてよかった。また一緒に色々出かけような」
電車の中、隣の松本を見る。
いつも頭上にある頭が、今はオレの顔の高さにある。
疲れたのかオレに体重を預け、穏やかな寝息を立てる。
まだ暑いからか、服越しに高い体温が伝わってくる。これだけ近ければ、松本の香りを吸い込んでしまう。確実に不可抗力だ。
みんな同じシャンプーや洗剤を使っているのに、自分とは違う匂いだと気付いてしまう。
役得だと思う反面、心臓が保たないから早く起きて離れてほしいとも思う。
勘違いしてしまいそうな気持ちを落ち着けようと、書いてあった花の説明を思い出す。
よく見るコスモスとキバナコスモスは同じ分類の仲間でありながら、交配しないぐらいには別物だという。
『居心地がいいから、一緒にいたかった』
『また一緒に色々出かけような』
松本の言葉を反芻する。
松本が似た気持ちでいてくれる。それが嬉しいのに、その無邪気さが胸を刺す。
(
……
その一緒に居たいは、似て非なるんだよ)
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