浮き流し
2024-09-20 17:32:24
7918文字
Public イチ松
 

イチ松のお題より

ワン(1時間)で収まってないですが、ゆるゆる参加したもの
↓お借りしたお題たち

9月のお題
・体育祭(1P)  ・秋桜(2P)
10月のお題
・文化祭 &いたずら(3P)
11月のお題
・赤(4P)


お借りしたもの「体育祭」
イチ×松成立済み、カプ色薄め

●殿堂入りの一等賞

 体育祭は縦割りの4つの団に分かれて競う。
 そんな中最後の競技、色対抗リレーが開始された。今、2年2人目の走者が競っている。コートのすぐ内側から外側の列で、現在の順位に修正しながら出番を待つ。オレは青団松本は白団、一緒に走るライバルだ。
 1番内側、一足早く交代した黄色が前を走る。オレもタスキを受け取ると姿勢を前に倒し徐々にスピードを上げる。すぐに目の前の黄色を追い抜かすと暫定1位に躍り出る。しかし安心はできない。第5走者には松本もいる。

 前の走者がバランスを崩し、やや遅れを取った松本がオレ追いかける展開だ。負けないぞと言い合った通り、お互い手を抜く気はない。
 ただ松本はバスケ部内でもスピードに定評がある。それを証明するように、まだあったと思った距離が早々に詰められる。背後から足音や圧が迫って来る。
 それに伴い歓声も大きいものになっていく。分かってはいるが少し焦る。松本の方が背丈も脚も大きく走るのに有利だからだ。
 既に全力だと思いながらリレーの練習で教わった事を思い出す。腕を肩甲骨ごと後ろに引き脚を上げる。胸を張り回転数を上げる。力みすぎないのは、なかなか難しい。
 そんな頑張りも虚しく聞き馴染みのある荒い息が頭上から降ってくる。
(もう来た!)
 視線を右に移すとすぐ後ろ、視界の隅に松本がいる。間髪入れずなくなる距離に内心悪態を吐く。
(くそっ、持久走なら負けないのに)
 松本が近付くにつれ、野太い歓喜の声と悲鳴がより大きくなる。

 カーブの先を見る。次の走者が待っている。交代のラインはすぐそこだ。カーブの内側に体を傾けややスピードを落とす。松本を追い抜かす事からスムーズなタスキの受け渡しに頭を切り替える。重心をなるべく動かさないようタスキ外す。
 受け渡しラインに入ると次の走者がスピードを合わせ前を走る。目一杯伸ばした手にタスキを押し付ける。大トリ、3年陸上部に交代だ。

 役目を終えたオレは、急ブレーキをかけるも体は慣性を伴い真っ直ぐ進む。
 部活で散々走ってはいるものの、バスケに必要なのは40分走り続ける持久戦であって、リレーは瞬間風速だ。たったの200m、だけどコートよりも断然長い。そこに全力を出す。
 いつもと違う疲れ方に、腰を折り膝に手を突いて息を整える。松本の近くへ行きハーハー途切れる事ない息の合間に言葉を交わす。
「流石……。やっぱ速いわ……
「そりゃ……イチノに、カッコ悪いところ見せらんねえ」
 流石。花を持たせてくれる、中身まで男前だ。
「はは、カッコよかったよ。あの歓声……大トリよりでかいんじゃない?」
 半周向こう、今まさに競ってる陸上部の4人を顎で指す。良かったじゃん。褒めたのに松本は微妙な表情をする。
「イチノは、カッコいいと思ったか?」
……まあ、カッコよかった。抜かされた時は悔しかったけど、走りが鮮やかだしスゲーと思った」
 悔しいけど。念を押して言うオレに、松本は途端にニコニコと満面の笑みを浮かべる。
「そうか!」

 戻ってきた走者がゴールテープを切り、まず1発ピストルが鳴る。残りの走者が団子状に雪崩れ込むと、もう1発音が鳴る。
 頑張りを讃え、味方相手共々出場選手に拍手を贈る。リレーでの優勝は青色、オレの団だ。イチノにはよかったけど悔しいな、なんて呟く松本を見つめる。
 ボールを持っていても持っていなくても、鮮やかに決めてオレの心を奪って行く。オレにとっての一等賞は松本だ。