芹沢亀吉
2024-09-08 23:48:45
12944文字
Public 風刺
 

シン・ウヨトラマン三部作

2022年5月21日~6月5日にかけてTwitterに投稿した暴虐な軍国主義者、楠木武が恥をかく物語の通算49、50、51話目の加筆修正版をPrivatter+に投稿。


シン・ウヨトラマンⅢ

(※Twitterへの投稿は2022年6月1日~6月5日)

 牛のような顔をした者達や、魚のような顔をした者達が逃げ惑う。

「いいぞウヨトラマン!外星人をやっつけろ!この地球は俺達地球人のものだ!」

 異形の者達を威圧し大衆から喝采を浴びる細身の巨人はウヨトラマンと呼ばれ、全身は銀色一色だ。

 ウヨトラマンの全身に旭日旗を彷彿とさせる赤い模様が浮かび上がったその刹那、凄まじい閃光が異形の者達を次々と爆砕していく。ウヨトラマンが両腕を十字に交差し破壊光線を発射したのである。

「来たぞ!ウヨトラマンの必殺技だ!」

「ざまあみろ外星人!消え去れ!」

 ウヨトラマンの破壊光線は異形の者達に罵声を浴びせていた大衆の一部も灰に変えた。

「あいつらはあそこにいたから悪いんだ。自己責任だよ。」

 大衆は異形の者達を殲滅する巨人に自分をダブらせ、破壊光線の犠牲になったお仲間には冷たい。

「ウヨトラマン!また悪い外星人が現れたらやっつけてね!」

 異形の者達の全滅を喜ぶ大衆に背を向け、ウヨトラマンは皇居に一礼し飛び去って行った。何とも勤皇家な巨人である。そもそも皇室など1945年の敗戦直後に解体しておくべきだったのだが。

 高尾山中に着地した途端にウヨトラマンの身体が小さくなり、口髭を生やした中年陸上自衛官の姿になった。楠木武一等陸佐、これがウヨトラマンの普段の姿。

「よおウヨトラマン、愚かな地球人共のヒーローやってて満足か?」

 背後から楠木をおちょくったこのチャラい男、武野たけのツヨシ警視正は警視庁公安部に所属しているとはいえそれは表向きの顔、正体は楠木同様巨人に変身する能力を持つツルーヨ星人だ。

「貴様、この俺を愚弄するつもりか!そこになおれ!」

 激昂した楠木は再びウヨトラマンに変身した。

「お?俺とやるのか?いいぜやってやる。俺は元々お前が気にくわなかったからな。良い機会だ。ここで消してやる。」

 途端に武野もウヨトラマンに似た銀色の巨人に変身、ツルーヨマンデュナミスである。

「お前達、喧嘩を止めんか!このバカチンがぁ!」

 巨人2人を怒鳴りつけた長門ながとテツヤもツルーヨ星人、表の顔は都内の中学校の国語教師だ。

「ツルーヨ星人同士で争っている場合か!ただでさえ「狩り」が遅れておるのだぞ!」

 2人は慌てて小型化した。

 ツルーヨ星人は巨人になる能力を濫用し、数々の惑星を侵略、蹂躙する典型的な侵略者。今回は地球を標的にし、数十年前から地球人に化け侵略の準備を進めてきたのだ。長門ことツルーヨマンATは前線の司令官故楠木も武野も逆らえない。

「司令官殿、この男は私に「狩り」を押し付け自分はデスクワークで楽しております!このたるんだ男にお仕置きが必要では無いでしょうか!」

 楠木が武野の怠慢を訴えると、長門が頷く。

「もっともだ。では早速実行してくれたまえ。」

 楠木は鞄を開け菊水紋が描かれたお盆を取り出した。

「司令官に代わりこの俺が貴様に仕置きを命じる!今すぐ服を脱げ!下着も全部だ!このお盆で前を隠すがいい!そうだ、シン・ツヨシ200%だ!」

 武野は屈辱で全身が震えている。

 実はこの楠木、新人自衛官達への裸踊り強要が日常茶飯事になっていて、言うまでもなく完全なセクハラである。

「武野、いやデュナミスよ!これは命令だ。早く服を脱げ。」

 そう言った長門の笑顔は実に嫌らしく、楠木同様明らかにセクハラを楽しんでいる。

 武野は楠木、長門に対し激しい憎悪を抱きながら全裸になり、お盆で前を隠しながら何ともぎこちない踊りを披露した。

「何だその動きは!新人自衛官達の方がずっと上手いぞ!やはり「狩り」を怠けていたからだな!」

 武野を罵倒する楠木は実に楽しそうだ。

 ここで長門、楠木が言う「狩り」について解説しておこう。冒頭場面にてウヨトラマンに殲滅された異形の者達はツルーヨ星人の侵略を逃れ地球に来ていた異星人達、「狩り」とはその異星人達の殲滅に他ならない。しかもその殲滅が娯楽扱いなのだからまさしく卑劣の極み。

 実のところ武野は高圧的な上説教がましい長門を内心毛嫌いしていて、「狩り」に参加しないのは長門の命令に従いたくない思いに基づく。一方地球人を心底見下し早く大規模な侵略を開始したくてウズウズしているのもまた事実。

 服を着て公安部に戻った武野を室長の鵜殿うどの泰睦たいぼくが罵倒した。

「遅いぞ武野!どこほっつき歩いてたんだ!」

「室長、すみません。中国人の振り込め詐欺グループのアジトを発見とのタレ込みがあり、取り急ぎ調査をしておりました。」

 鵜殿が極端な「嫌韓・嫌中」であるのを利用し、武野は遅刻や単独行動を叱られる度にこのような言い訳を繰り返してきた。毎回その言い訳で鵜殿に許してもらっていたのだろう。

「武野、仕事熱心なのは良いが、報告は怠るなよ。そうそう、報告といえば、面白い動画を見つけたとの報告があったぞ。これを観てくれ。」

 ニヤニヤ顔の鵜殿が武野に見せた動画は、何と「シン・ツヨシ200%」だ。

「コイツ、顔お前にそっくりだよな。ひょっとしてお前の生き別れた双子の兄弟かもな。」

 武野は悟った、あの時長門と楠木が裸踊りを隠し撮りしネット上に流出させたことを、そして鵜殿がこの動画に映っているのが武野本人だと承知の上で嫌がらせのため見せつけてきたことを。

「どうした武野?顔真っ赤だぞ。熱でもあるの、グワーッ!」

 突然警視庁の建物が全壊したのは、鵜殿の嫌がらせに腹を立てた武野がその建物の中でいきなりツルーヨマンデュナミスに変身したからだ。鵜殿をはじめ大勢の人間が犠牲になったのは言うまでもない。

「もう我慢ならん!何もかも叩き潰してやる!」

 デュナミスが腕から発射した破壊光線により、霞ヶ関一帯が火の海と化していく。

「余の命令も待たずに始めおったかデュナミスめ!」

 皇居の一室にて忌々しげな表情の今上天皇清仁きよひとのデュナミスを前から知っていたかのような口ぶり、一体どういうことだろうか。

 何の躊躇もせず皇居に破壊光線を撃ち込むデュナミス、この光景は皇居が破壊される場面は意地でも撮らない日本の特撮ではまずお目にかかれないだろう。ちなみに皇居敷地内の動物達は本能で危険を察知し、既に避難した後だ。

 焦土と化した皇居の中から立ち上がる巨大な影、姿形はデュナミスに酷似しているとはいえ、身の丈約100mとデュナミスの身の丈約40mの比ではない。この巨人こそツルーヨ星人の親玉、ツルーヨマンドミノンである。

 侵略先の惑星の環境に適合するためまずその星の人間と融合し、しばらくその星で暮らしながらじっくりと侵略の準備を進めるのがツルーヨ星人のやり方。いきなり侵略するのはつまらないといったところか。

 ウヨトラマンは楠木武を、デュナミスは武野ツヨシを、ATは長門テツヤを融合対象に選んだ。ツルーヨ星人が好んで日本人を融合対象に選ぶのは個性を軽んじ組織や国家への従属を推し進める日本のやり方に共感したのが大きい。

 ドミノンは1945年の敗戦後も皇族が相変わらず特権階級であることに目を付け、侵略準備が完了するまで税金で贅沢に暮らすため当時皇太子だった清仁を融合対象に選び、その贅沢暮らしに慣れるに連れ侵略自体を先延ばしするように。

「デュナミス!余に無礼を働くとは貴様随分偉くなったものだな!」

「地球人にも、ツルーヨ星人にも、もううんざりだ!今まで貴様をドミノン陛下と呼んでいたが止めだ!くたばれ!」

 デュナミスは一向に侵略開始の下知を出さないドミノンに対し密かに苛立ちを募らせ、ついに公然と反旗を翻した。

「デュナミス、貴様のお陰で色々と台無しだ!今から貴様はダイナシと名乗れ!ツルーヨマンダイナシだ!」

 奈良時代末期、当時の天皇の怒りを買った和気清麻呂は左遷される際に別部穢麻呂と強制的に改名させられ、ドミノンがデュナミスに一方的な改名を言い渡したのも意味合いは同じ。私物化した権力を濫用し屈辱的な改名を押し付け相手を辱めるのは実に卑劣極まりない。

「ざけんな!俺はツルーヨマンデュナミスだ!勝手に改名するんじゃねぇ!」

「この改名を受け入れるなら大目に見てやるつもりだったが、今の物言いで貴様の命運は尽きた。者共出あえ!」

 ドミノンの号令に伴い、数々の巨人達が姿を現した。

 ツルーヨマンタケル、ツルーヨマンマリーン、ツルーヨマンヒラ等、ドミノンが空中に描いた巨大な光の輪に巨人達が集う。勿論ATやウヨトラマンもいる。

「皆の者!そこにいる者は余に危害を加えた反逆者だ!地球を征する前にまずあやつを消し去れ!」

 ドミノンの檄に伴い空中のツルーヨマン達が一斉に破壊光線を撃ち込み、デュナミスの全身を爆炎が覆う。

「やったか?」

 ところが爆炎の中から姿を現したデュナミスは全く負傷していない。四方八方に破壊光線を撃ち相殺したのだ。

 デュナミスは素早く飛行し、空中のツルーヨマン達に拳や蹴りを浴びせていく。

「そう簡単にやられてたまるかぁ!」

 思いもよらぬ反撃にツルーヨマン達は動揺を隠せない。

「うわっ、コイツ強いぞ!」

「何で大人しくやられないんだ!?空気を読め!」

 ウヨトラマンは金縛りで動けなくしたヒラの身体を棒のように振り回し、デュナミスに襲い掛かった。

「この裏切り者め!ツルーヨ人精神を注入してやる!」

 ちなみにウヨトラマンは普段楠木武として精神注入棒を振るい部下達を打ちのめしている。

 デュナミス1人を攻め切れないツルーヨマン達の不甲斐なさにドミノンは苛立ちを隠せない。

「反逆者1人消せんのか!軟弱者共が!」

 するとデュナミスにぶん投げられたヒラがドミノンめがけて飛んできた。

「ええい!消え失せろ!雑魚が!」

 ドミノンは破壊光線を撃ち込みヒラの全身を消し去ると、その光線を撃ったばかりの右掌をATに向け参戦を促す。いや「参戦を強要した」と記述するべきか。

「ATよ、余はそなたの戦いが見たくなった。今すぐ出撃せよ。さもなくば。」

「ド、ドミノン陛下、今丁度出撃しようと考えていたところです!い、行って参ります!」

 ドミノンに威圧され全身をガクガク震わせる今のATはまさしく小心者。

「でっけえ顔してんじゃねぇ!この田舎もんがぁ!」

 小心者ATは精一杯の虚勢を張りながら飛び上がりデュナミスめがけて突進するも、そのデュナミスに蹴飛ばされたマリーンの左膝が顔面に直撃し赤坂御苑に墜落した。

「ATなどを前線の司令官にした余が愚かであった。」

 呆気無いATの墜落を目の当たりにし、流石のドミノンも自らの過ちを悔いずにはいられないようだ。

 すると陸自の戦車隊並びに空自の戦闘機部隊が集い、ツルーヨマン達を狙って総攻撃を開始した。

「あの巨人共を討ち滅ぼせ!天皇陛下の仇を討つのだ!」

 ドミノンが今上天皇清仁に成り代わっていたことなどつゆ知らず、自衛官達はドミノンを含むツルーヨマン達を清仁の仇と認識している。清仁以外の皇族は皇居共々灰になったためあながち間違ってもいないが。

「消え去れハエ共。余を撃った時点で大逆罪だ。」

 そう呟きながらドミノンは両腕を広げ同心円状に衝撃波を放ち、戦車隊も戦闘機部隊も瞬く間に爆散し全滅した。

「ウヨトラマン!俺1人に集団でかかってきてこのザマか!あの時高尾山中でATが止めなければこの俺の圧勝だったな!所詮貴様はヒーローごっこが関の山なんだよ!能無しめ!」

 この挑発に腹を立てたウヨトラマンの全身に旭日旗状の模様が浮かび上がる。直後にウヨトラマンの十字に交差した両腕から破壊光線が放たれ、デュナミスの破壊光線と激しくぶつかり合う。

「どうしたウヨトラマン?身体の模様が緑色になってきたぞ。もう体力限界かなぁ?」

 デュナミスの指摘通り、徐々にウヨトラマン側の破壊光線が押し負けつつある。実のところ普段のウヨトラマンとデュナミスは実力が互角とはいえ、現在デュナミスはドミノンへの反逆を決行しもう後には引けず、所謂「火事場の馬鹿力」を発揮しているのだ。

「何をしておる!?ウヨトラマンがその反逆者を釘付けにしている隙に撃たんか!」

 ツルーヨマン達はドミノンの罵声に震え上がり、再びデュナミスめがけて破壊光線を撃ち込んだ。

「残念だったな、ATフィールドだよ。」

 ツルーヨマン達の破壊光線は不可視の防御壁に阻まれた。以前からドミノンへの反逆を企てていたデュナミスはATが使う不可視の防御壁「ATフィールド」を自分も使えるよう密かに鍛錬を重ねていたのである。

「勝者はこの俺、貴様は終わりだウヨトラマン。」

 その時、ウヨトラマンの脳内に声が響き渡った。

「ウヨトラマン頑張って!」

「ウヨトラマン!そんな外星人さっさとやっつけて!」

「ウヨトラマンを信じてる!僕達の地球を外星人から守ってくれるって!」

 これらはウヨトラマンが異形の者達を殲滅するのを楽しそうに見物していた大衆の声である。

「貴様ら、その力を使わせてもらうぞ。吸魂法!」

 ツルーヨ星人が精神で繋がっている者達から体力を奪う技、吸魂法、体力を奪い尽くされた者は絶命し全身が灰と化す。

「ウヨトラマン!貴様まさかこのためにヒーローごっこを!?」

 たった今デュナミスが気付いた通り、ウヨトラマンは「狩り」を利用して大衆を自分に心酔させ、いざという時吸魂法の生贄として「活用」を企てていたのだ。かくしてウヨトラマンは世界中の心酔者達から体力を奪い尽くし、この急激な破壊光線の威力上昇はまさしくうなぎ登り。

「ウヨトラマン貴様ぁ!こんな汚い手を使うとか羞恥心無さ過ギャワーッ!」

 ウヨトラマンの破壊光線はATフィールドを容易く撃ち抜き、デュナミスの全身を吸魂法の生贄達同様の灰に変えた。見ての通り正義のせの字も無い勝ち方である。

「よくやったウヨトラマン!卑劣な反逆者を滅したそなたに勲章を授与せねばな。」

 デュナミスを葬り去ったウヨトラマンにドミノンが賛辞を送り、他のツルーヨマン達も一斉に「ツルーヨ星万歳!ウヨトラマン万歳!ドミノン陛下万歳!」と叫ぶ。

 突然身の丈約40mウヨトラマンの身体が巨大化し、身の丈約150mとドミノンを凌駕するまでに。

「デュナミスの次は貴様を片付ける。」

「待て!余は貴様の主君ドミノ、うわーっ!」

 ウヨトラマンにぶん殴られたドミノンの巨体が都庁に突っ込んだ。

 ウヨトラマンが楠木武と融合し地球人として暮らすようになって以来、度々楠木武がツルーヨマン達に殲滅される夢を見るように。実はこれ、別の世界線の楠木武の末路を夢という形で見ているのだ。そして徐々に楠木武もといウヨトラマンはツルーヨ星人への不信感を募らせていき、吸魂法による強大化を皮切りに反逆を決意したのである。

「者共、この反逆者を叩き潰せぇ!余に歯向かった者に恐怖と絶望を与えるのだぁ!」

 瓦礫の山と化した都庁から這い出てきたドミノンが絶叫すると、ツルーヨマン達が一斉にウヨトラマンに襲いかかった。

「有象無象共、引っ込め!まずはドミノンを片付ける!」

 そう言いながらウヨトラマンは全身から凄まじい衝撃波を放ち、襲い掛かってきたツルーヨマン達をまとめて木葉のように吹き飛ばす。

「ウ、ウヨトラマンよ、そなたが融合した楠木武は忠臣として名高い楠木正成の末裔ではないか!今上天皇と融合した余に歯向かうのは何か咎めるものを感じないのか!?」

 すっかり小物臭くなったドミノンの顔面にウヨトラマンが拳骨を叩き込んだ。

「ドミノン、貴様が融合したのは朝敵足利尊氏と結託した持明院統の末裔ではないか!そもそもこれから地球を征する俺が何故地球人の先祖に配慮せねばならんのだ!?」

 ドミノンは系譜に言及しウヨトラマンを宥めようとしたものの、余計に怒らせてしまった。

「おのれ!余の厚意を足蹴にしおって!もう許さん!貴様は余の手で葬り去る!」

 ドミノンは地面に拳を叩き込み大規模な地割れを発生させ、噴き出たマグマを念力で操り巨大な拳の形状に変形させウヨトラマンを襲う。

「反逆者よ!灼熱地獄を味わえ!」

「灼熱地獄を味わうのは貴様だドミノン!」

 ウヨトラマンは瞬く間に「マグマの手」の制御を奪い、ドミノンの全身を包み込んだ。

「グワーッ!何故だ!?何故あの反逆者の力が余を上回る!?余は最強の存在、ツルーヨマンドミノンなるぞ!」

「天皇と融合しのほほんと暮らしてきた貴様と、楠木武と融合し現役自衛官として日々の鍛錬を欠かさなかったこの俺とでは戦闘力に差があって当然だ。ドミノン、貴様の時代は終わった。」

 ウヨトラマンの攻勢にツルーヨマン達は皆怯えている。

 赤坂御苑に墜落ししばらく意識を失っていたATは意識が戻るや否やドミノンがウヨトラマンに追い詰められている現状を目の当たりにし、即座に逃亡した。

「俺達も逃げよう。もうドミノンの言いなりは真っ平御免だし、あのウヨトラマンにはどう足掻いても勝てないよ。」

 ドミノンは渾身の力を振り絞り全身を覆うマグマを四散させ、己を見限り逃亡し始めたツルーヨマン達に憤激した。

「貴様ら!そんなに余を怒らせたいか!?」

 怒れるドミノンの金縛りに遭い、ツルーヨマン全員身体が動かない。

 金縛りで全身の自由を奪われた上念力でドミノンの目の前に連行され、ATは怯えきっている。

「ド、ドミノン陛下、誤解です。わ、私は一旦ツルーヨ星に戻り再起を、うげっ!」

 直後にドミノンはATの全身を素手で引き裂き、体内から光る球体を取り出した。

「ドミノン陛下、どうかお慈悲を!」

 必死の命乞いも虚しくツルーヨマン全員がドミノンに生きたまま全身を引き裂かれ、体内の光る球体、即ちエネルギーのコア全てが暴君ドミノンのものに。

「反逆者、貴様が使ったのが吸魂法なら、今から余が使うのが吸核法だ。」

 ドミノンはツルーヨマン達から奪った核全てをその場で吸収し、身の丈約300mにまで巨大化した。

「見よ!強大化した余の姿を!無論ただ巨大化しただけではない!新たな力を使えるようになった!反逆者よ、貴様を直接地獄に送ってやる!極獄開門!」

 途端にウヨトラマンの背後に巨大な時空の穴が開き、穴の奥から這い出てきた無数の亡者達がウヨトラマンの全身を抑え込む。

「驚いたか反逆者よ、フハハハハ!これで余の勝利は確定した!余の新たな力に屠られるのを誇りに思え!」

「ドミノン、この亡者達をよく見てみろ。」

 唐突なウヨトラマンの発言に促され、ドミノンは亡者達が全員楠木武であることに気付いた。夥しい数の平行世界の楠木武が皆生前の悪行により同じ地獄に落とされていたのである。

「それがどうしたのだ?今からその楠木武達が貴様を地獄に送る、それだけぞ。」

 あくまで余裕の姿勢を崩さないドミノンに対し、ウヨトラマンは高らかに叫んだ。

すさのおフュージョン!」

 途端に楠木武達全員とウヨトラマンが融合し、大魔神を彷彿とさせる鎧に身を包むウヨトラマン究極形態、ウヨトラマンスサノオが誕生した。

「刮目せよドミノン!最強はこの俺様だ!グハハハハ!」

 この下品な笑い方は楠木武の特徴だったりする。

「調子に乗るな反逆者!貴様は今から地獄に落ち、何!?穴が、時空の穴が消えた、だと?」

 スサノオは早速自身の能力により時空の穴を閉じ、先程まで勝ち誇っていたドミノンの余裕がどんどん消えていく。

「こ、こんな、こんなことが。」

 楠木武と融合したウヨトラマンは別の世界線の楠木武達が大勢地獄にいるのを知り、ドミノンを追い詰めれば必ず他のツルーヨマン全員を犠牲にして強大化し地獄の門を開くと踏んでいた。従ってこの展開は全てウヨトラマンの計画通り。

「極獄開門!極獄開門!極獄開門!何故だ!?何故地獄の門が開かない!?」

「ドミノン、そんなに地獄の門を開きたいなら開いてやろう。多連極獄開門!」

 途端にドミノンの背後に無数の小さな時空の穴が開き、ドミノンの全身を弾痕状に抉り取っていく。

「ぐはっ、小さな時空の穴で少しずつ余の身体を抉っていくつもりか!?何と卑劣な戦法!」

「さっき命乞いするAT達の全身を引き裂いていたのは何処の誰だったかな?」

 確かにAT達を生きたまま全身引き裂き核を奪うドミノンのやり方は卑劣極まりないとはいえ、それを差し引いてもこのやり方は残酷過ぎる。

「余が悪かった!そなたの奴隷にでも何でもなる!だから、だから命だけは!」

 小さな時空の穴に少しずつ全身を抉られながらスサノオに命乞いするドミノン、見ての通り最早戦意は無い。

「よしわかった。」

 途端に時空の穴全てが消えた。

「おお、余を助けてくれるのか。」

 全身に深手を負いうつ伏せ状態のまま動けないドミノンは助かったと思い安堵している。

「ドミノン、究極の絶望を知っているか?一旦偽りの希望を与え、直後に奈落の底に落とす、それが究極の絶望だよ。」

 一瞬この発言の意図が理解出来なかったドミノンではあるものの、すぐにスサノオの本心に気付いた。

「貴様!まさか余を!」

 途端にスサノオは右掌から破壊光線を撃ち、ドミノンの全身が消し飛んだ。

「よく気付いたな、ドミノン。まあもう遅い、遅過ぎる。」

 ドミノンを亡き者にし、スサノオは身体中に高揚感がみなぎった。

「デュナミスもドミノンももういない!このウヨトラマンスサノオ様が宇宙一!この宇宙はウヨトラマンスサノオ様が支配する!グハハハハ!」

 そんなスサノオの体内に無数の楠木武達の声が響き渡る。

「ドミノンなる者を滅ぼせたのはこのまほろば・すさのおのお陰。つまりこの身体は俺のものだ!」

「髭剃ったことも忘れた貴様がか?笑わせるな!轟天号を完成させた俺がこの身体を使う!」

金星人相手に果敢に戦った俺以外にこの身体を使う資格がある者はいない!」

元祖であるこの俺を差し置いて勝手なこと言うな!この身体は俺のものだ!」

 それぞれ別の世界線にて生まれ育ち生前面識など全く無かったとはいえ、同じ楠木武同士の争いは何とも醜い。

「こら貴様ら!分をわきまえろ!所詮貴様らはこのウヨトラマンスサノオの身体を構成する要素に過ぎ、ぐわっ!」

 スサノオの全身に入った無数の亀裂から一気にエネルギーが漏れ出し、直後に大爆発した。スサノオが立っていた場所にクレーターが出来ている。

 一部始終を冥府から見ていた火車が地団駄を踏んだ。

「折角美味そうな楠木武がこっちに来ると思ったのに魂ごと消滅するとは!」

 すると閻魔大王はこう言った。

「そう言うな。また他の世界の楠木武が逝けばその魂を喰らえば良いではないか。」

「しかし閻魔様、何故あのウヨトラマンスサノオとやらは大爆発したのでしょうか?」

 この獄卒の疑問に対する閻魔の返答は以下の通り。

「どの楠木武も自分勝手で欲の塊だ。融合したところで楠木武同士争い自壊は免れん。ウヨトラマンとやらも愚かなことをしたな。」

「ところで閻魔様、赤鬼に少し休暇を与えてやりませんか?あの者は今まで楠木武だらけの地獄で四苦八苦しておりました。」

 青鬼の提案に対し閻魔が頷く。

「もっともだ。地獄の楠木武達は先程全員消滅した。良い機会だ。赤鬼の休暇を許可しよう。」

「牛頭馬頭よ、これから武野ツヨシらツルーヨマン達がここにやってくる。地獄に行ったら面倒見てやってくれ。」

 閻魔の指令に牛頭と馬頭は頷いた。牛頭も馬頭も既に地獄に落ちた別世界のツルーヨマン達の扱いに慣れている。

 吸魂法の生贄となった大衆は魂自体が消滅したため冥府には来ない。ウヨトラマンによるヘイトクライムを楽しんでいたので仮に来たところで地獄行き不可避であろうが。現にヘイトクライムを楽しんでいて途中で巻き添えになった者達は皆地獄に落ちている。

 程無くして地球では異形の者達が少しずつ外に出てくるようになった。吸魂法の生贄という形で異形の者達への迫害に賛同する輩が全滅したのが大きい。異形の者達が当たり前のように地球人達と共に外を歩く日の訪れもそう遠い未来の話ではないだろう。(終)