芹沢亀吉
2026-04-30 11:46:12
2540文字
Public 風刺
 

皇軍の亡霊を殲滅する破壊神

2017年12月17日、私は暴虐な軍国主義者の楠木武一等陸佐が恥をかく物語を初めてTwitter上に投稿した。その時作成した物語の加筆修正版をPrivatter+にも投稿。Twitter投稿時はゴジラが吐く放射熱線を一般的な青色にしていたけど、今作のゴジラは『ゴジラ2000ミレニアム』本編に登場する個体を意識したので本家同様赤い烈火状の放射熱線を吐く設定に変更した次第。

 作家の三島由紀夫が自衛隊の決起を訴えるも結局失敗し自刃したのは読者の皆様もご存知の通り。人呼んで三島事件である。三島が率いていた政治結社「楯の会」も彼の遺言により解散と相成った。ところが世間が三島事件を忘れていく中三島に心酔する自衛官連中が秘密裏に「楯の会」を復活させ、いつしか全自衛官の過半数が加入するまでに。

 日本各地で自衛官連中が一斉蜂起し大阪市内に集結したのは楠木くすのきたけし一等陸佐の仕業。楠木は定年を迎え退官した麻生あそう孝昭たかあき陸将補から「楯の会」を任され、1954年以来のゴジラ出現に乗じ「楯の会」に属する自衛官連中に蜂起しろと檄を飛ばしたのだ。民間人右翼、警察官、在日外国人排撃を訴える排外主義者といった自衛官以外の「楯の会」会員も楠木が飛ばした檄に従い大阪市内を占拠する自衛官連中と合流し「皇国義勇軍」と称する頃には何と総勢20万人以上。

 自衛官連中を一斉蜂起させ大阪市内を占拠など本来なら到底許されることではない、本来なら。しかしながら門長かどなが内閣は国会に警官隊を突入させ野党議員を強引に排除しゴジラ打倒のため「皇国義勇軍」に全権を委ねる特別法案を強行採決という暴挙に出た。楠木は退官前の麻生の口利きにより蓑田みのだ喜徳よしのり官房長官と懇意で今回の決起も事前に内閣の了承を得ていたのである。要するに大阪市内を占拠という「皇国義勇軍」の暴挙は平然と日本国憲法を無視する門長内閣のお墨付き。

 和歌山沖を泳ぐ破壊神ゴジラに激しい砲撃を浴びせる「皇国義勇軍」、これはわざと破壊神を怒らせ大阪市内へと誘導するため。楠木ら幹部自衛官共が「皇国義勇軍」に民間人右翼をはじめ自衛官以外の会員を大勢合流させたのはゴジラ誘導時に犠牲者が大勢出るのを見越し自衛官の代わりに犠牲となる捨て石が必要だったから。自分達が捨て石扱いとは夢にも思っていない「楯の会」会員達は89式5.56mm小銃、MK3手榴弾等の扱いを教えられ興奮状態になり遊び半分で民間人を襲撃する者も大勢いたものの、いざゴジラを目の前にすると失禁する者、逃亡する者が後を絶たない。そしてゴジラへの怯えを見せた者は現場にいた自衛官共に射殺された。この自衛官共も最終的には自分達だけ安全圏に避難するのは読者の皆様のご想像通り。

 夥しい犠牲者を出し破壊神ゴジラを大阪市天王寺区へと誘導した「皇国義勇軍」はゴジラ討伐の仕上げとして地下のガス管を爆破し大規模な地盤沈下を発生させた。その地盤沈下に飲み込まれ悲鳴を上げるゴジラに追い討ちをかけるかのようにあべのハルカスをはじめ周辺のビルも爆破されゴジラめがけて倒れこむ。

 この時爆破されたビル内には「皇国義勇軍」の大阪占拠に抗議した地元住民が大勢幽閉されていて、たった今全員が爆破の犠牲に。「皇国義勇軍」の規則には臆病者並びに反逆者は皆殺しとあり、自衛官以外の「楯の会」会員達並びに地元住民達を同じ人間と見なしていないが故に楠木そして自衛官共はどこまでも非道になれる。市民を守るどころか容赦無く殺害する軍の残忍な本質を「皇国義勇軍」はものの見事に体現している、これでもかと言うほどに。

「諸君刮目せよ!大和魂を持つ日本男児が集い本気を出した結果ゴジラに勝利した!この国を憂う国士達よ!我等と共に反日分子を抹殺し東亜新秩序実現に向けて邁進しようではないか!日本人として生まれた時点で諸君は勝者だ!あとは終わらせるだけだ!占領軍憲法が大和魂を踏みにじるこの屈辱の時代を!天皇陛下ぁ万歳ぃい!」

 大勢の女性自衛官が「皇国義勇軍」の一員としてゴジラ討伐作戦に従事したにも拘らず、「日本男児が集い本気を出した結果ゴジラに勝利した!」と宣う楠木の男尊女卑思考は相当なもの。このやかましく男尊女卑、反動主義全開の演説はネット上に生配信中。ゴジラを生き埋めにした瓦礫の山に立ち演説する楠木の周囲には10式戦車、高機動車、戦闘ヘリコプターAH-64Dアパッチ・ロングボウ等がズラリと並び、上空には数多のF-2戦闘機が旋回、イージス艦こんごう等海自の艦艇が大阪湾沿岸を埋め尽くす。



 暴虐な軍国主義者の楠木が有頂天でいられるのはここまで。不意に瓦礫の山が盛り上がり巨大な背びれが突き出てきてくるや否や、生き埋めになった筈の破壊神ゴジラが地面から這い出てきたからだ。ゴジラに代わって生き埋めと相成った楠木は当然帰らぬ人に。ゴジラを打倒したと勘違いし浮かれていたら自分自身がそのゴジラに息の根を止められる瞬間を世界中に生配信する格好となり、勘違い野郎の楠木は世界に恥を晒したと言えるだろう。「皇国義勇軍」は臨戦態勢に入るも突然過ぎるゴジラ復活に加え最高司令官楠木の死により指揮系統が崩壊し同士討ちが多発。