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茜屋(せんや)サナ
2024-08-24 06:38:39
17709文字
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白鴉の爪痕
8/24・25開催のアーマードコアシリーズwebオンリーイベント「無限の戦火よ、鋼鉄よ」展示作品です。
『ARMORED CORE Ⅵ FIRES OF RUBICON』のレイヴンの火ルート、カーマンライン突破主人公敗北IFです。カップリングはラスティ×621(♀)になります。
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無人洋上都市を掌握し、チャティの弔いの報告をカーラから聞いたあと、621 は恒星間入植艦ザイレムの操艦区画周辺をぼんやりと歩き回る。当て所なく歩き、やがて疲れて、廊下に座る。頭の中を占めるのはウォルターの最後の願い、エアの懇願と失望。そしてラスティの問い掛け。この三つが脳内でぐるぐると回る。答えは出ない。分からない。
ウォルターの願いは何が何でも叶えたかった。自分は彼の猟犬だから。
彼が遺した言葉が脳裏を過ぎる。
「これは ハンドラーとしての指示ではない。俺が死んでいった友人たちから受け継ぎ、お前に託さんとする
……
ひとつの依頼に過ぎない。621。火を点けろ。燃え残った全てに。
……
俺の最後の仕事としてお前を自由にしよう」
アイビスの火で焼失したはずのコーラルは生き残って集まり、ゆっくりと自己増殖を続けていたという。集積したコーラルは指数関数的に増殖を速めて、やがてはルビコンから溢れ宇宙に蔓延する汚染となる。その前にコーラルを焼き払う必要がある。かつて星系を飲み込んだアイビスの火を再現することになっても、だ。
集積コーラルを見つけ、アイビスシリーズを撃破する際のウォルターはいつもの彼ではなかった。声が上擦っていて、興奮していた。常ならぬハンドラーの様子が指摘出来れば、彼だけでもアーキバスに捕まらなかったのではないだろうか。後悔先に立たずとはよく言ったものだ。
「
……
」
エアの怒りと失望の声が忘れられない。友人と仲違いするのは辛い。
「企業はコーラルを貪ることしか考えず、観測者たちはコーラルを恐れ根絶しようとしている」
「私は
……
人とコーラルの可能性を守りたい。レイヴン。私の願いを、聞いてはくれませんか」
「レイヴン。あなたの考えは分かりました。
……
残念です」
哀切とも、憎悪とも取れる声。声に潜む感情が分かることがこんなにも辛いとは想像もしなかった。
ラスティの言う背景も理由も知らない。未踏領域探査にてアーキバスに嵌められたとお互いに気付いた。私は「お互いに不審なものは見なかった、と報告するのはどうだろうか」と至って真剣に提案した。独断で突入した機体も、それを追跡している機体もいない、と。だが彼がこだわったのは、その部分ではなかった。
「君に引き金を引かせるものは何だ?」
どうでも良い。力はただ「力」でしかない。戦うことと引き金を引くことは同義だ。何かを考える必要などない。
ただ、敢えて言うのなら。生まれも名前も年齢も過去も知らない廃品に意味を与えてくれた人がいたから。自分という人間を強化人間の独立傭兵として売り払ったのでは、という推測しかない人間を猟犬と呼び、私を望んでくれた人がいた。ウォルターの最後の言葉を、彼の願いを叶えたい。
あるいは、縋りたいのかもしれない。
自分は企業勢力を討ち払い、ルビコンのコーラルを焼き尽くすと決めた。どうしてもウォルターの望みを叶えたい。彼に対して、直接何かをすることはもう、叶わないけど。
「
……
」
感情など取り戻さなければ良かった。ただの操縦部品でいられたら、どれだけ良かっただろう。けれどもこれは、彼らが自分にくれた大切な贈り物だ。手放したくない。だが、任務遂行の障害物でもある。
これが「葛藤」という奴だろうか。感情の発露によるものだが、あまり心地良いものではない。
「
……
ター。ビジター」
カーラに呼ばれて、621 は顔を上げる。ツナギ姿の女性がいつの間にか、目の前に立っていた。心配そうにこちらを覗き込んでいる。
「ごめん。カーラ、何だろうか」
621 は視線を上げて、カーラを見返した。
「何だじゃないよ。端末で呼んだのに、さっぱり返事がないから心配で見に来たのさ」
「え、ごめん」
気まずそうに621 は謝罪する。けれども、その後の会話が続かない。少しの沈黙ののちに、621 は問う。
「
……
笑うことがカーラにとって大事なのは、なぜ」
「急になんだい。藪から棒に」
「カーラも、チャティも、よくそれを気にしてるから」
そうだねえ、とカーラは相槌を打つ。答えようとして、なぜか頭を振った。
「
……
それは、答えるべきときに答えるよ。ほら行くよ、ビジター。腹が減ってちゃ、まともに考えることも出来ない」
カーラは621 の手を取り、引く。されるがまま、彼女はついて行った。
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