enoki181
2024-07-22 00:44:52
10662文字
Public リプレイ
 

【ストリテラ】イスカリオテの名に恥じぬ

俳優:守部さん、エノキ
シナリオ https://talto.cc/projects/rC6ojtunsgHDRnXTWvZrf


ファイナルチャプター

バルッダザーレ:裏切り者が見つかった。
なんてことのない、ひとりの国民だった。
理由に興味はなかったから喋る前に剣で斬った。
斬った、斬った、斬った……

「フルカ、あんたが教えてくれたヤツで正解だったみたいだ」
さっきまで命だったものを両手にとって、機嫌よく戻ってくる。
剣は珍しく身につけていなかった。

「これだけあれば、しばらくは――

フルカ:英雄様。バルッダザーレ様。
私のことを信じて、無実の人々を殺す存在になってしまった。
もう罪人でもなく――化物になってしまった。

……

フルカ:まだ温かい死体に剣が刺さっている。

両手で掴み、抜いた。重かった。

(私の罪は、私自身で決着をつけなければならない)

――最もらしい素晴らしい理由のように思えるだろう。

(それでこの人が私だけのものになるのなら!それがいい!)
(偽の裏切者を教えるとその相手だけ考えてしまうんだから!)
(私だけの存在じゃなくなってしまう!)
(最期は私だけの化物で終わって!)

――心の奥底は、こんなにも汚い。

フルカ:剣を構え、突進する。

手ごたえがあった。

刃はバルッダザーレ様の背から腹を貫いた。

「あ、ぁ……

温かい血が流れだしたのを見て、もう一度、深く刺した。

「ぁ…………

口元が弧を描く。

バルッダザーレ:腹に衝撃を感じて尻尾を揺らした。
フルカの声が短く聞こえた。
剣が、刺さっている。
そうして、何が起きたか、ようやくわかって

バルッダザーレ:フルカのもとへと歩き出した。
血が流れている。
一歩ごとに、ぼたぼたと。
俺が、自分が、流れていく。
屈んで背に腕を回し頬を寄せた。

バルッダザーレ:「こんなことさせて、ごめんな」

フルカ:「……え?」

剣の柄から手が離れる。

「なによ、それ」

反撃にあって死ぬのも覚悟していた。
だってあの英雄様なのだ。私の命なんて赤子のように軽い。一撃をくらったからって止まるような人じゃない。

「なんで、いま、普通の人みたいなこと言うの?」

血が、頬が、手が。全部温かい。
人の温度だ。

「英雄様はそんなこと言わないの!!」
「返してよ!!私の、私の……!」

肩を揺さぶろうと掴むと、体が力なく倒れる。

「バルッダザーレ様……?」

バルッダザーレ:死の間際、ヒトから最も最後に奪われる五感は聴覚だと聞いたことがある。
血が失われていって、視界も霞む中でフルカの声が叫んでいた。
”返してよ”?
そりゃあ、あげたものを戻せなんて無理な取引だ。
それに俺は最初から英雄なんかじゃない。
ぼたぼた、ぼたぼた。
因果は巡る。

フルカ:跪いて取った手がどんどん冷たくなる。

「まって……

お腹に手を当てて血を止めようとする。私が刺したのに。
でも、この人が助かれば、またやり直せると思うから。だから。

「ずっと私の傍にいて……

バルッダザーレ:「う」
「らぎり、もの」
どっちがどっちかもわからない言葉をつぶやいて、口だけで笑ってやった。

フルカ:手が止まる。

指の間から血が流れなくなり、やがて、冷えて固まった。



イスカリオテの名に恥じぬ

終幕