enoki181
2024-07-22 00:44:52
10662文字
Public リプレイ
 

【ストリテラ】イスカリオテの名に恥じぬ

俳優:守部さん、エノキ
シナリオ https://talto.cc/projects/rC6ojtunsgHDRnXTWvZrf


▼或る密室


ここまで来れば、もう安心だ。
そう呟いたのは、あなたと助演、どちらだっただろうか。

久しぶりのあたたかな室内。
ふかふかの絨毯に、品の良い調度品。
ここは『英雄の従者』が作った、『追われた英雄』を匿うための隠れ部屋だ。
具体的な場所が何処なのかは、あなたたちだけが知っている。

……そう。
つまり自分がここにいることを知っているのは、自らの他には、この世界にただひとりだけ。
『追われた英雄』がふとその事実に思い当たったとき。
がちゃん、がちゃん。
――『英雄の従者』が戸締まりをする音が、今日はやけに耳に響く。


バルッダザーレ:「ここまで来れば、安心できるのか?」
見慣れない密室だった。
誰の目にも触れないようにして建っていた、廃墟の屋敷。
窓のない部屋はひときわ冷たくて、牢獄を想起させた。

「ンなわけねェだろ……
一言吐き捨てて、手頃なベッドに腰掛けた。
経年劣化の割には埃が積もってないし柔らかい。訝しむ。

[ バルッダザーレ ] コレクト:0 → 4

フルカ:「大丈夫ですよ。ここには何度も帰っていますが、すれ違う人は滅多にいません」

寂しくなってしまった町の様子を思い出して暗い顔になるが、英雄様がベッドに座るのを見て笑う。
すみません、とすぐに謝った。

「そのベッド、小さい頃に使ってたから。あなたが座るなんて思ってなくて、なんだか、夢みたいで、おかしくて」
「ここは、わた……ぼくの生まれた家なんです」

笑い声が途切れると、静寂が場を支配した。

……ごめんなさい。気を悪くさせてしまいましたか?」

バルッダザーレ:「別に。今更何か思ったところでここが快適な場になるわけでもねェし、文句は言ってられん」
寝転がる。

フルカ:肩の力が抜け、息苦しさが少し和らいだ。

「しばらくはここで身を潜めていましょう。この部屋にあるものは好きに使っていただいて構いません」

少女だった私の部屋には、ぬいぐるみや人形が多く飾られている。これを英雄様が気に入ってくださるかはわからないけれど。

……あの、それで、ですね。ご提案が、ありまして」

ぎゅっと手を握り、頬を染める。

「あなたのお名前を知らないと、不便だと思うのです。この家に……世界に、ふたりきりで暮らすみたいなものですから……

そう、私はこの人の名前を知りたかった。それだけで、この人を英雄から引きずり堕としたのだ。

「私があなたのお名前を憶えて、私の心に刻んでおきたいのです」

[ フルカ ] コレクト:0 → 2

バルッダザーレ:「……
なんだ。やっぱり女だ。面白い。
目の前の従者の襟首をぐっと掴んで引き寄せた。

「バルッダザーレ」
「あんたの前にいる、"英雄だった男"の名だ」
「忘れんなよ」
そう囁くように告げ、離してやる。
互いの息の音だけがしばらくそこに残っていた。

フルカ:「バルッダザーレ、さま……

呟いた自分の唇をなぞる。

ああ、やっと……やっと!お名前を知ることができた!

胸が高鳴っていた。
ただの英雄と従者じゃ私を見てくれなかった。名前を聞いたって答えてくれなかっただろう。
一緒に逃げてふたりきりの世界で、やっと。

私はこれで満足。もう死んだっていい
――あなたを罪人にしたのは私です――
告白したっていい。離れ離れになったっていい。切り捨てられたっていい。

フルカ:「……バルッダザーレ様」

そう、思っていたはずなのに。

どれも嫌だと心が叫ぶ。
あなたのことを、あなたに向けて呼びたいと願う。
忘れるな、とあなたが命じるからでしょうか。

新しい欲望、苦しみだった。

ここでどちらかが死んだなら、終わらせることができるのでしょうか。

そのときは――ふたりきりの世界で、どちらがどちらを殺すのでしょうか。

[ フルカ ] コレクト:2 → 3


FP→英雄



▼或る食卓


雨風を避け、人気のない猟小屋で夜を過ごした、明くる朝。
毛布の上から肌を刺す冷気に、あなたはゆるりと目を覚ます。
聞こえるのは、コトコトと何かが煮える音。
……食事の時間だ。

助演が用意してくれた食事を前に、あなたは自然と卓につく。
屋敷や城での豪奢な朝餉には似ても似つかない、粗末な食卓。

それでも、この食事も悪くないかもしれない。
今こうして、助演と並んで食事ができるのだから。

フルカ:カチャン、とまどろみの中で音を聞く。
これは食器……金属?何か硬いものが擦れる音?

「!!!!」

ハッと身を起こす。
すぐ傍に英雄様の姿はなかった。

「バルッダザーレ様!どちらに!?」

護身用の短剣を手に部屋を飛び出していく。

[ フルカ ] コレクト:0 → 3

バルッダザーレ:「いる」
足でドアを蹴って部屋に入ってくる。
そこらをうろついていた獣数匹を仕留めてきたのだ。
鳴ったのはあの、片時も身から離さない剣の音だった。
白い息をフーッと吐く。

少しして粗末な肉の塊と草の汁がテーブルの上に出た。
「家賃はこんなもんでいいだろ」

[ バルッダザーレ ] コレクト:0 → 2

[ バルッダザーレ ] コレクト:2 → 3

フルカ:「料理、できたんですか……

呆気に取られて、調理するのを見守るしかできなかった。凝ったものではなかったけれど。
美味しそうな匂いにお腹が鳴り、フォークとスプーンを用意した。バルッダザーレ様の前には、父のものを置く。もういない父のものだ。

「いただきます」

手を合わせ、自然と口にしていた。この家では食事の前に挨拶をするマナーだった。
ちょっと恥ずかしくて、慌てて口に含む。

……おいしい」

[ フルカ ] コレクト:3 → 5

バルッダザーレ:時間がゆるやかに過ぎていく。
こんな量の食事で腹が膨れるわけがない。
そう思いながら苦いだけの汁と焼いただけの獣を食べた。
二人の距離は、不思議と前よりも近くなっていた。

……俺が裏切り者を処刑したら」
「もっと美味い飯を食わせてやるよ」
食事を終える。

[ バルッダザーレ ] コレクト:3 → 5

フルカ:「バルッダザーレ様は、裏切者を処刑する気なんですか?」

胸の奥が冷えていくのを感じながら尋ねる。

「それで……英雄に戻るのが、バルッダザーレ様の願い?」

バルッダザーレ:「あ?英雄なんてもんにもう興味はねェよ」
「ただ……報復は必要だ。因果は巡る。何もないわけがない」
「殺し、殺され、また殺して……世界はそうやって成り立つものだからな」

フルカ:「……

いや。
きっとこの人はまた、英雄になる。

興味がない、とこの人自身が言ったとしても。周りが許しておかないだろう。

それならば、私は……

「見つけるお手伝いはしますね……私がお傍にいますから」

裏切者だとばれるわけには、いかない。


FP→従者