enoki181
2024-07-22 00:44:52
10662文字
Public リプレイ
 

【ストリテラ】イスカリオテの名に恥じぬ

俳優:守部さん、エノキ
シナリオ https://talto.cc/projects/rC6ojtunsgHDRnXTWvZrf


メインチャプター


▼或る反乱


ある日の夜中、暑さ……否、熱さで跳ね起きる。
潜んでいた宿の窓を開け放つと、眼下の街は火の海だった。

追手の仕業と身構えたが、行きかう悲鳴や怒声を聞くに、どうやらそうでもないようだ。
今は、英雄と崇められた者が処刑対象となるほどの大きな政変の直後。
――要は、国自体が揺らいでいるのだ。

どうやらこれは、現在の国の体制に不満を持つ者による凶行、つまり一種の反乱らしい。
この騒ぎに乗じて街を離れることは容易だろうが、……さて。
ふたりの胸にあるのは、どのようなざわめきか。


バルッダザーレ:おいおい、生活の保障はどうなった?
今、窓の外は炎が回り切っていた。
反乱軍でもここまで手が早いわけがないだろうが、……
牢の冷たさとは打って変わって、身を焼くような熱さが身体を苛む。
火の粉がもうここまで飛んできていた。
あいつ、フルカは?

[ バルッダザーレ ] コレクト:0 → 3

フルカ:「あっ、おはようございます」
様子見から慌てて戻った部屋の中、英雄様がすでに起きていて安心した。
「外で殺し合いが……それで、政府の制圧軍が来る前に、もっと遠くに逃げてしまいましょう」
声に迷いはなかった。宿の中でも怒声が聞こえだす中、てきぱきと荷物をまとめる。
「顔を隠すのはお忘れなく」

[ フルカ ] コレクト:0 → 2

バルッダザーレ:「わかってる。早くしないと蒸し焼きになるぞ」
間違っても今ばかりは三歩後ろとか言ってると死ぬからな、と子供の悲鳴の中を掻い潜って外へ進んでいく。
街が瓦礫の山になるのは一瞬だった。
「あ?何?……火傷、してる?放っとけ放っとけ」

[ バルッダザーレ ] コレクト:3 → 6

フルカ:「……はい」
わかっている、足を動かすのが先だ。押し黙って前に進む。
その間にも、見つめる先の体にはどんどん火傷が増える。英雄様の体は大きいから、飛んでくる火の粉がよく当たるみたいだ。

燃える街を見下ろせる場所まで出てから、英雄様の手首を掴む。
「見せてください」
軟膏を取り出した。血の出ている箇所はなさそうで安心する。
「あまり無茶をしないでください、薬にも限りがあるんです。前のようにはいきませんよ」

[ フルカ ] コレクト:2 → 3

バルッダザーレ:「チッ……従者気取りがよ……
離せ、と掴まれた手を引っ込める。
薬のおかげか痛みは既に引いていた。
この薬の在庫の分だけしか己の身体がもたないと思うと、途端に自分がちっぽけに思えてきて嫌になった。

「行くぞ」

フルカ:「……ぼくはあなたの従者です」

離れて行く背中を見つめる。

大きいのに、もういつだって私が潰してしまえる。胸の奥が熱く燃え上がった。


FP→英雄


▼或る出会い


旅の途中、見覚えのある場所にたどり着く。
『追われた英雄』が、英雄と呼ばれるよりもずっと前……
あなたと助演は、この場所で出会ったのだ。

ああ、と助演が囁いた声は、今はどんな感情を孕んでいるだろうか。
その囁きを耳に、あなたは「出会いの日」を回想する。

最初から主従であったのか。
それとも、最初は別の関係だったのか。
かつてのふたりの在りし日を、今一度思い出してみよう。


フルカ:あえて紛争が酷いらしい方へと進路を取る。混乱で追手を撒けると思ったからだ。
それは私の故郷へ近付くことも意味していた。

……あの、覚えていますか?」

焼けた家が点々とする町を通り抜けるとき、思わず英雄様の袖を引く。

「ここで昔、酷い争いがあって……あなたが武勲をたてたじゃないですか」

もちろん、私は忘れられるはずがない。運命が決まった日だったのだから。

[ フルカ ] コレクト:0 → 2

バルッダザーレ:あの日も砂粒が舞う風が吹いていた、と目を伏せてあいつが言った。
実際、よく覚えていない。
武勲は常に立てていたし、戦場に行くのもしょっちゅうだったからだ。
もう少し話を聞いてみることにする。

[ バルッダザーレ ] コレクト:0 → 2

フルカ:――数年前。突然、私の町は襲われた。
親と離れて逃げるが、子供の足では追い付かれるのも時間の問題だった。
刃が振り下ろされる瞬間、目を強く瞑る。終わりだと思った。

しかし、私に終わりは訪れない。
男の悲鳴と血の匂いに目を開く。

そこに、後の英雄様が立っていたのだった。

目が合う。冷たいような温かいような、不思議な温度の瞳だった。
全身に痺れるような感覚が走る。鼓動の脈打ちが速いのは、さっきまでの恐怖とは違う理由だとわかった。

これが、私の初恋だった。

フルカ:「ここは私の故郷なんです。結局、あれから人は逃げてしまったけれど」
「英雄様に助けていただいたから、あなたにお仕えしようと決めたんですよ」
「とはいえ、あなたにとってはたくさんの武勲のうちのひとつです。きっと忘れてしまっているでしょうね」

自然と頬が緩んでいた。
あの時からずっと、あなたのことしか考えていない。非道だったり、横暴だったり。そんな一面を知っても。

[ フルカ ] コレクト:2 → 5

バルッダザーレ:曖昧な返事を返すと微笑とともにあいつが笑った。
人を救う気持ちなんてさらさら無いどころか、そんなに面白いことはしていないはずだが。

ただ、少し思い出した。
何もない街で出会った子供。
触れた手がとても冷たかったのは、……
……いや、なんでもない」

[ バルッダザーレ ] コレクト:2 → 4

フルカ:いいんですか?と続きを促しても返事はない。

こうして軽やかに話しかけることができるようになったのは最近だ。
二人きりで逃げることになってから、距離が随分縮まった気がする。

……そういえば。あのとき、名乗らないで町を去ったそうですね」
「ぼくは未だにあなたのお名前も知らないんですよ」

拗ねた声だって出せるようになった。

バルッダザーレ:「名前なんてもんは牛の耳についてる目印とさして変わらない」
「俺は興味が無いからな」
先を歩いていく。

フルカ:「あ!お待ちください!」
慌てて背中を追う。

私の胸の高鳴りは、純粋な恋心だけではなくなってしまった。
あなたを告発して英雄から引きずり堕として、そうしてできた今の時間に、とても満足してしまっている。

だから、今、名前を聞けなくても。前のように落ち込みなどはしないのだ。
あなたとの時間は続くのだから。

バルッダザーレ:「……ふん」
この逃亡も、いつまで続く。
毎日の傷の手当てに使われる軟膏の減りに、残り僅かな時間を重ねていた。


FP→従者