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不破
2024-07-07 20:59:40
5381文字
Public
空戦
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ブカレストにシリウス隊が配置されているとは。少しばかり予想外ではあったが、敵の主力の所在がはっきりしたのは収穫と言える。玉座の前に浮かんだ光学映像に映し出された空図。ブカレストの浮かぶ位置にシリウスの文字が浮かび、クルクスとサイードと示された矢印にバツ印が浮かんだ。
「ブカレストにロゼ・シュタインベルクが居る以上、突破は至難の業でしょう。クルクスとサイードの艦隊を退けて帝都に後退した可能性もありますが、再度攻め込むならそれなり以上の戦力を用意する必要がある」
玉座の前に立っている長身の男、シルバーピンクの長髪に赤い目。国色である赤の軍服を身に纏う人物。ウィンズレット軍の大将であり、艦隊の提督という役割を担う者、パーシヴァル・W・レヴィン。仕事モードの顔でわかりきっていることを説明する従兄弟の姿を前に、ハーティアは口を開く。
「そうね。シリウス隊を打ち破るとなると、それなり以上の戦力が必要ね。だからといってブカレスト一点にそこまでの戦力を割くわけにはいかないわ」
「もちろん。ブカレストへは第3艦隊を向かわせ、それと同時に別ルートからアムステルダムへ進軍、これを攻略してメルゼブルクへ攻め入る足掛かりにするつもりさ」
複数戦力で複数の拠点を同時に攻撃する。戦いにおける常套手段だ。基本に忠実なパーシヴァルらしい、面白くはないが確かに効果のある作戦ではあるだろう。
「良いわ、パーシー。侵攻の段取りは任せます。ラザはしばらく前線を離れるわ、別に任せることがある」
パーシヴァルにそう言い、「はっ!」と敬礼して王の間を出ていく彼の後ろ姿を見送ると、ハーティアは玉座の肘掛けに頬杖をついて深くため息をついた。
ウィンズレットの戦力は決してメルゼブルクに劣るわけではない。規律の取れた連携と物量で押し潰す戦いを得意とし、個々の能力も低いわけではない。しかし、それは相手も同じことであるし、優れているという言葉で表現するにはその域を逸脱するような者もいる。そもそも、地上に世界があった時代まで遡れば、メルゼブルクは騎士団によって成立した国を起源とする。戦いは御家芸というわけだ。
「苦戦は覚悟していたけれど、いざ本当に始まってみると難しいものね」
少し疲れたようにぼやいた言葉が空に消え、ハーティアは端末を立ち上げる。光学モニターに表示された資料の表紙には「Atar Weapon Solutions」と書かれており、ハーティアは顰め面のまま資料を開いた。
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