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2024-06-23 02:30:20
11063文字
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蠱毒な夢術廻戦:pixivバックアップ
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E.25 悪夢の幕開け
シリーズ中第42話になります。
注意書きは1ページ目、もしくはシリーズ概要の方にあります。
このシリーズの閲覧やブックマークなど、いつもありがとうございます。お待たせしました。
今回、あんまり話が進まない上にエグめなシーン多めです。苦手な方はご注意を。
あと小説冒頭でとある映画のネタバレがあります。タイトルは書いていませんが、以前の小説内でも触れたことがある作品の物です。
次回、バリバリの戦闘になります。
二週間以内に投稿する予定で書きます。気長にお待ちいただけると幸いです。
追記:いつもより少し遅れそうです。最悪、予定最終日の午後か、その次の日になるかもしれません。
【今回の時系列について】
作中で描写した順番だと一部時系列が前後しちゃってます。
悩んだんですが、アニメの流れに合わせてます。本来なら、五条戦の合間に蝗GUY戦があってるんですけどね。
ちなみに、蝗GUY戦は「21:03 都心メトロ明治神宮前駅 B2F」です。
余談ですが、回想のときに二人が観ていた映画はⅡです。
#夢術廻戦 #オリ主 #オリキャラ #虎杖悠仁 #五条悟
2023年11月19日 01:20
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制服の袖越しに感じる生暖かい体温。腕が重なるように纏め上げられ、拘束されていた。
人目に触れないように、人に触れないようにと長くしていた袖が仇となっている。手のひらは袖の中だ。
触れることは叶わず、
呪法
拳銃
で狙いが定まるかも怪しい。扱いを間違えれば共倒れになる。
そんな状況の中で、腕から伝わってくる感覚が俺に思い出させてくる。触れたこともないのに、
――
あの日の人の姿。弟と初めて出会った日のことを。
それと同時に思い浮かぶのは、変わり果てた彼の姿と受け取り手のいない花束だった。
アイツのせいであの人は死に、順平は死にかけたんだ! 兄貴だって今まさにそうだ
…
!!
そう思えども衝動には従えず、列車はスピードを上げていく。アイツの気配が遠ざかっていく。
俺が今すべきことは、今すぐこの拘束を振り切ってあの場に戻り、
呪霊
真人
を
祓う
殺す
こと。それが最も被害を抑えられる。何度だってその答えが出てる。
それなのに、この拘束を壊して振り切るのは、ひどい裏切りのように思えて仕方なくて。その考えが一番、俺を縛って動けなくさせている。
涙は出ない。ただ、成すべきことと外付けの良心によって、板挟みになった気分だった。
「殺したくはないな」
ああ、そうだな。どうしてだろうな。俺もそう思うんだ。
でもそれは、自分以外に苦痛を押しつけてしまう。
思い返す瞼の裏で、血飛沫が舞う。血と片腕が飛ぶ。拳が血で灼けている。
……
俺はそれを見ているだけで、その光景から遠のいていくばかりだった。
弱いということは残酷だ。自覚がないままに、苦痛を他者に肩代わりしてもらっている。
助けられるほどに強ければ、なんて思い上がりだ。避けられない苦痛に耐えられるほどに、強く在りたい。そう思っていた。
でも、それでは願いを叶えられない。我を通せるほどに強くなければ、望んだ死を迎えることもできない。
いつからこういう風に考えるようになってしまったんだろうか。助からないのなら
――
「いっそ殺してやるのが慈悲ってもんだよ」
――
少し前までの俺なら、あの言い分と変わらない考え方をした。
……
違うな。変わったのは考え方だけじゃなくて、俺にできることが変わってしまったんだ。
人を助けられる範囲が広くなってしまった。だから、俺は助けずにはいられなくなっている。手を尽くして初めて、『助けられなかった』と心から言えるから。
助けられる人を見殺しにしてしまえば、俺は
……
きっとそのとき、本当に裏切者になってしまう。
「俺がソイツを助けなかったとして、それはソイツに殺されるかもしれない命を救ったことにはならない」
過去に自分の吐いた言葉が、意味を持って迫ってくる。
ここで彼らを殺したって、彼らが殺すかもしれない人たちを助けたわけじゃない。俺がこの人たちを殺したってだけなんだ。それでも、
――
殺さなきゃいけない。
“どうしようもないことだと割り切る”ことが必要だった。
真人
アイツ
を祓うことと、弟を救うこと。それを天秤にかけたとき、俺は弟を選んだ。多数のために少数を犠牲にすることを、俺は容認できなかった。
その結果が今だ。
……
今の状況はそのツケだとでも言うのか。
あのとき、俺や順平が死んでいたとしても、アイツを祓うことが正しい選択だったのか?
――
違う。それは絶対に違う。
俺の答えは変わらない。
あのとき、彼を選んだことが間違いだったとは思わない。それが彼を絶望に落とすことだとしても、助けたことが彼のためにはならなくて恨まれるのだとしても、俺は手を伸ばした。
俺が望んだんだ。彼に生きていて欲しいと。
「
……
僕は、君が僕のことをどう思ってるか、知りたい」
あの日手繰り寄せた彼の手は、俺よりも冷たかった。けれど、それは俺自身が暖かったからじゃない。ほかのものから熱をもらっていたから暖かかった。それだけだ。
その温かさを彼に移すことができるのなら、俺はそうすることを選ぶ。
俺は俺のした選択を見つめ続ける。それがさらなる悲劇を生んだとしても、目を逸らさない。
それが選択することの責任だ。
仲間の死を横目に呪霊の肉を切り裂くことを、俺は選べない。呪霊を祓うことよりも、大切な人を生かすことを優先してしまう。
俺は呪術師になれない。
獣鉤手は、こちらの選択を待つかのように沈黙していた。
獣鉤手からすれば、この状況は拘束にすらなっておらず、勝手に出てきたときとも違って脅威でもないのだろう。であれば、好き好んで出てくる必要もないというわけだ。
言い訳も言い逃れもできない。彼らを生かすか殺すか、俺の意思で決まる。
分かっている。俺には彼ら全員を助けることはできない。そこまでの力はない。
それでも、残った呪力をすり減らして、試みる。越えてはならない一線だけでも守りたかった。
「
……
殺したくない」
心臓が早鐘を打つ。
手のひらではない部分であっても、魂を知覚できている。不可能ではないはずだ。
「
…
頼む」
術式が発動する。
――
俺の祈りとは真逆に、血潮が弾けた。
……
手枷になっていた子が、変化に耐えきれなかった。
腕を伝って、温かい血が下へ落ちていく。足元で見知らぬ誰かの笑顔が赤く滲んでいく。
自由になる。腕を動かせるようになる。後ろ手に回っていた手を前に戻す。
「
…
っ
……
」
子どもだった。腕に抱えられるくらいの
……
初めて見たときの、順平くらいの
…
確かな命だった。
今、俺の袖にこびりついているのは、千々になった皮膚と肉片。知らなければ、人だったとは思えないだろう。
だが、俺は知っていて、分かっていた。
両腕は自由になった。それでも俺は未だ、選択という
列車
トロッコ
の中にいる。
「
……
兄貴」
立ち上がり、向こうを見据える。ぎゅうぎゅう詰めになった改造人間たち。この中に、俺にとっての“一人”がいる。
探し出すのは現実的じゃない。それでも諦め切れなかった。
一番手前に居る人の皮膚に手のひらを当てる。伝わってくる熱と音は、それが"人であること"を緻密に教えた。
術式を発動させる。
――
弾け飛んだ。
大量の血飛沫と共に無数の血肉がばら撒かれた。俺はたたらを踏みながら、ようやく悟る。
……
ああ、そうか。
改造された人の魂に触れれば、その“刺激”で弾けてしまう。そういう改造がなされている。
これは罠だ。第三の選択肢なんて、やっぱり存在しない。
この人たちは、
――
「もう助からない命だって思えたほうが良心も痛まないでしょ」
……
助からない。絶対に。
何をやったって、アイツの思惑に嵌ってしまっている。俺に選択肢なんて最初からなかった。
人に触れていた手は、真新しい血で濡れている。
殺すことを望んでいなかったとしても、俺の行動が引き金になった。
――
俺が、引き金を引いたんだ。
「
……
ッあぁあああァあアアア!!」
爪
刃
を立てて、切り裂く。
弾け、流れ出て、体積を減らし、空間が広がる。そこに腕を身体を差し込み、すべてを切り裂いていく。全部、全部
……
すべからず、平等に。
俺の後に続くように、悲鳴が連鎖していく。
言葉にならない声すらも耳は拾う。絶叫が反響し、頭に響く。それが苦痛を帯びた怨嗟の声か、救いを望む祈りなのかは、俺だけに聞こえていた。
血溜まりが足元を埋め、絶命した人々が積み重なる。天井にも血飛沫が跳ね、車内は血で染まった。それが何両も続く。
走る。走る。揺れる車体をさらに揺らしながら、先頭を目指す。
いったい何人殺したのか分からなくなってしまいそうなほど、人波とすれ違い、切り裂いて命を奪う。
もう戻れないのだから。進むしか先はなかった。
「呪術師は時に選択を迫られる」
弱ければ選択肢すらない。そのことを俺はいつの間にか忘れていた。
あの人が最初に二択をくれたから、俺は選ぶことができたんだ。それからずっと与えられるばかりだった。
「事の次第では、家族や友達を殺さなくてはならない時もくるだろう」
箱の中の猫は死んでいる。なぜなら、死んでいる猫をいれたから。
「
……
だけど、助けることもできる」
五条さん。
俺、できなかったよ。
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