MN*B
2024-06-21 01:47:26
22245文字
Public 蠱毒な夢術廻戦:pixivバックアップ
 

E.16 結び目の解き目

シリーズ中第30話になります。
注意書きは1ページ目、もしくはシリーズ概要の方にあります。

このシリーズの閲覧、ブックマーク、いいねなどを、いつもありがとうございます。
お待たせしました…!!
これは時間で考えると遅刻で、日付ならセーフってラインですね!すみません!!

 
今回、また長くなりました。
最初の頃の話の、解答編みたいな感じです。
区切ろうかとも思ったんですが、いいところがありませんでした…。

次回で、アニメ化した部分がほとんど終了する予定です。
2週間以内を目指してあげます。

 

猪野さんの口調が合ってるか、ちょっと不安ですね…。
いろいろと見直して、しれっと手直しするかもしれません。
推敲とかしても、基本的に話の流れは変わらないのでご安心を…。

 

【青嶺の、風間さんの呼び方が3種類ある件について】

彼に対しての呼び方が、オリ主の年齢(世代)によって変化しているからです。一応、使い分けてあります。
ちなみに、母親に対する呼び方も記憶と相違していますし、青嶺もあえてそうしている部分があります。



#オリ主 #夢術廻戦 #猪野琢真 #伊地知潔高 #オリキャラ
2021年9月12日 22:40



 俺たち三人は、小学校近くにある川へ来た。
川岸に造られた階段を降りた俺と猪野先輩は、借りてきた長靴を履いた足で、水をかき分けて進む。伊地知さんはといえば、緊張した面持ちをして、そんな俺たちのことを川岸から見ていた。

 涼しくなってきた風と水の気配を感じながら真っ暗な口を広げる暗渠の前に、俺たちは辿り着く。
人が入れる大きさで、人目に付かず、一般の人が出入りしないという条件だと、ここもそれに当てはまる。
その上、資料が盗まれた時点で、ほかの資料も閲覧されていておかしくはない。相手もここを知っているかもしれないのだ。
いい加減な五条さんが、この町のことをどれくらい正確に報告していたかは知らないが。


あのときは、五条さんが居たから楽だったんスけどね」

電源も入れていない懐中電灯を片手に、俺はそんなことをぼやく。
俺には必要ないし、五条さんにも必要なかったものだが、猪野先輩はそうもいかない。
その猪野先輩はといえば、俺と同じように懐中電灯を持って、恐る恐る中を覗きこんでいる。

「ホントに歩くのか?」

「走ります?」

さすがに危ないと思うが。

「そーいう問題じゃねぇって!」

そう抗議する猪野先輩の声が、暗渠の奥に反響していった。

 こちらから中央へは、大人の足なら案外早く着くことが経験上わかっている。だがこの状況で、その向こう側までとなると出るのには、二時間近くかかるだろう。
反響して聞こえてくる音も、俺らの声と微かな水音くらいだ。中に何かがいるとしても、相当奥まったところのはず。
どうせここは昼も夜も暗いのだから、昼間は山中の捜索でもいいかもしれない。なんて考えに及ぶ。
それに、なぜだかここには何もいないような気がしてならなかった。


「コラー!!お前さんら、そこで何やっとんじゃー!!」

その怒鳴り声に、俺らは揃って上を見上げた。
川沿いの道路から身を乗り出して、こちらを見てくる老人の姿がある。見覚えのあるその人に、俺は思わず額に手を当てた。

「げ風間 カザマのお爺だ

「へ?」

「とっとと上がれぃ!!なんの用があって、そんなとこにおるんか!!」

相も変わらず怒鳴っているその姿。
その近くでは、アワアワと狼狽えている伊地知さんの姿がある。あの様子では、まず伊地知さんが絡まれて、止めきれずにこっちも見つかった感じか。
それらを見た猪野先輩が、困惑した様子でこちらを窺ってくる。

「え、あどうする?」

「一旦戻ったほうがいいっスよ。面倒なのは変わんないんで」

俺はその面倒な気配を察して、深く息を吐いた。


 俺たちは渋々、元来た道を戻り、川から上がる。
その僅かな間でも、待ちきれないとばかりに険しい顔をしていた爺さんだったが近くに来た俺らを見て、彼は目を瞬かせた。

「んなんじゃ、青嶺の孫む……下の、いや、真ん中えぇい!ややこしい!!」

そう言っていきなり怒り出すと、俺の肩を掴んだ。その上で、一気に捲し立て始めた。

「お前さんか!こんのバカ者が!いつの間にかあっちにもっていかれよって!!」

「久しぶりに見たと思ったら!この儂に挨拶もナシか!!正月の挨拶すら聞いとらんぞ!」

言うだけ言ったかと思えば、彼は大きく息を吐きながら肩を落とした。ついでに、グラグラと揺らしまくっていた俺の身体から、その手を放す。
前から怒りっぽく、怒鳴り声やら大声が絶えない人だったが怒る部分がそれでいいのか。ってか、

「俺が誰だかわかってんのかよ

「まだ儂はそこまでボケとらんわ!!こんな顔と髪がほかにもおってたまるかぁ!」

「はっ!?」

俺は思わず声をあげるが、なんとかその一音だけに留めた。
それこそ本当にボケでもしたのか!?最後に会ったときから、俺も見た目が変化してるだろ!

「顔は母さんも兄貴も大体同じだろーが!」

「お前さんが一番目立つんじゃ!たわけ!!」

言い返しても、その倍以上の勢いで怒鳴り返されてしまう。
俺が特徴的だとしても、だ。だからって家族でもないのに、同一人物だって認識できるかフツー!?視力も落ちてそうだな!?

 俺らがそんなやり取りをしていれば傍でそれを眺めていた猪野先輩が、そろ~っと声を出す。

「えーっとどちら様で?」

それを聞いた途端、猪野先輩へグルンと顔を向け、ガンを飛ばす爺。

「ぁあ?!そりゃあこっちの台詞じゃあ!なんじゃ黒尽くめが!!」

「なんでそんな喧嘩腰なんですか

あんまりな爺さんの態度に、及び腰になってしまっている伊地知さん。
知っている身としては、出た出たみたいな感じだが、この場はなんとか納めなきゃな

俺はその間に割って入り、めんどくささに力が抜けながら、話を進める。

「血圧上がるぞ、お爺。この人たちは俺の先輩と先輩。で、こっちは風間の爺ちゃん。心臓がヤバい」

「どういう紹介の仕方?!」

「君、いま説明めんどくさくなりましたよね!?」

二人の主張から目を背け、俺は爺さんのほうに向きなおった。

ヤバくて一時期、病院入りしてたんだがこの様子だと退院できたらしい。
でも、こうして来られると面倒だな。この人、余所者嫌いだし
こういう言い方はあれだがなおさら、五条さんのときって楽だったんだなと思う。

 緘口令が敷かれているため、町の人たちは何が起こったのかまでは知らない。だが、何かしらの口実をつけて、外出を控えるように言ってあるはずだ。
もっとも死体を発見したのが町の人である以上、ある程度の話は出回っているだろう。だからこの爺さんも、こうして気が立っているのかもしれない。
いや、気が立ってるのはいつもか?

「なんでお爺は外出てんだ。家に居ろよ」

れるかッ。それに探すだけ無駄じゃそんなことよりも、お前さんには用がある」

爺さんは一方的に話し終わると、着いてこいとばかりに、俺らに背を向けた。
そんな彼の背中に、猪野先輩が食い下がる。

「探すだけ無駄ってどういうことだよ、爺さん。俺たちは一応、仕事で来てて

「部外者は黙っとれ!」

爺さんは振り返って、威勢よく一喝してくる。
その剣幕に、俺と伊地知さんは揃って身体を跳ね上げた。
昔からだがこの人の、こういうとこも苦手なんだよな

 静まりかえった俺たちを見る、風間の爺さんは言葉を迷うように、ゆっくりと口を開いた。

おそらく、お前さんらが捜しとるのはおらん。山神さまとやり合うてそのまま帰っていったんじゃ」

咄嗟に俺と猪野先輩、そして伊地知さんは視線を交わした。
山神さまつまり、山中にある神社からの気配それの主のことか。

「風間のお爺。アンタ、何を知ぃッてぇ!?」

スパァン!と音を立てて、頭を叩かれる。

「その生意気な口調はどうにかならんかったんか」

「叩くことねぇだろ!」

爺さんは鼻で笑うと、知りたければついて来んか!と言い放ち、さっさか歩き出す。
見れば、伊地知さんが運転する車の傍に、爺さんの車が停めてあった。
まだ免許返納してねぇのか。

どうするかと思い、二人に目線を戻すと猪野先輩のほうは、困ったように帽子へ手をやっている。

「あの爺さん、何者だ?」

「山にある神社の管理人つってもボランティアみたいなもん。あとその山で道場開いてる師範?ってやつ、です」

「ちなみにこの町で風間という方は、あの方以外にもいらっしゃいますか?」

伊地知さんが、なぜかそんな質問をしてきた。
それを不思議に思いながら、俺は首を横に振る。

「いや、あの爺ちゃんだけ。俺も、あの人に聞きたいことあるんでとりあえずついて行っても?」

俺と伊地知さんは、この任務の最終判断をする術師猪野先輩のほうを窺う。
彼は考えるように唸ってそれから諦めたように脱力する。

「いいけどあんま長くならないといいな

本当にいないかなんて分かんないっしょと、猪野先輩はぼやいている。
その声をかき消すように俺たちを急かす大声が、向こうから響いてきていた。