chuahaaan
2024-06-16 12:06:46
4287文字
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「私」は死んだ

バックアップのないオンリーワンのAI、チャティ・スティックが作られる前はどのようなAIがいたのか、カーラはどうしてコピーを作ろうとしなかったのか。
いまだに納得のいく答えは出ないけれどこんなことがあったのかもしれません。


 中央指揮室に用意された席は出入口の近くの立見席。無料にしては良い席を用意してもらえたね。
 あたしの頭上までそびえたつ指揮者ブースの壁のせいで肉眼だと作戦画面の半分しか見えないが、協力会社用作戦状況データと漏れ聞こえる音声を合わせれば全貌の把握はできる。
 作戦はいたって簡単。艦から無人機、有人機の混成中隊が超高高度降下して敵企業のロケット発射基地に侵入。荷物を積み込み、発射寸前の2台のロケット発射台までたどりついて作戦完了までの人質にする。先頭で道を開いて盾になる相棒は死んで死亡直前のバックアップが返ってくる。追加装甲満載の洗車じみた機体から新しい機体に乗り換えたら直前の戦闘経験を生かして後続部隊と基地を制圧、あたしらが勝つ。カーラ様謹製の多才で華麗な変身ができるAIならではの芸当だ。惚れ惚れしちまうねえ。
 中央指揮室は作戦の進行に合わせて援護をしている。砲丸満載したクラスター弾をばらまいて鉄カーテンの外に航空支援を追い出す。衛星軌道では観測と攻撃を防ぐために捕縛ミサイルを撃って重力圏に引き落とす。あの面白いミサイルの情報を少しばかし持ち帰りたいね。
「カレンの人形はまだか!」
 頭の上の指揮席で部長が叫ぶ。
「インストール中だよ!オフラインで完結しているからマスドライバーに運びな、片づけたがりの機関室長が喜ぶ」
「人形をマスドライバーへ輸送!目標変更なし」
「了解、到着地点の誤差5キロ平方メートル以内」
「再計算!精度を上げろ」
「イエッサー」
 中継ドローンがやられたのか、信号途絶169秒前のバックアップが返ってきた。死ぬかなり前のデータだけれど戦闘は記録から学習して対策をとるだろうし、これまで同様、データに抜けがなければ問題ないはず。
 通信が入る。対話機能が解凍されたらしい。回線を開くとリアルタイム映像がゴーグルに映し出される。ACの一部とマスドライバーへ続く軌道だ。
「やあ、目が覚めたかい?」
『おはよう世界、ただいまボスカレン、状況把握しました』
「相変わらず寝起きがいい子だ、あとは制圧するだけだよ」
 協力会社用戦闘情報に指揮室で拾った情報を付け加えて送る。
『突入地点は事前の打ち合わせ通りですね』
「人間にはできない足の速さで蹴散らしてやんな、現場の判断はお前に任せる」
『了解、問題ありません』
「降下中は通信が安定しないから軌道調整は自力でなんとかしな」
『了解、いってきます』
「いってらっしゃい、待ってるよ」
「発射シークエンスに移行します」