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chuahaaan
2024-06-16 12:06:46
4287文字
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「私」は死んだ
バックアップのないオンリーワンのAI、チャティ・スティックが作られる前はどのようなAIがいたのか、カーラはどうしてコピーを作ろうとしなかったのか。
いまだに納得のいく答えは出ないけれどこんなことがあったのかもしれません。
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「
……
1時間前の地上観測結果から、今回もカレンのAIが先陣を切り、わが社の後続部隊を展開、制圧、本艦は地上と衛星軌道からの攻撃から諸君達を掩護する」
「なあ、相棒、なかなか笑えるだろ?」
「そうですね、マイボス・“カレン”いつもの通り笑えます」
教えたとおりに携帯端末から音声で返事をする忠実なAIの相棒とあたしは宇宙と成層圏の中間圏を飛行する機動基地に滞在している。地上から観測されにくいようエンジンを止め、薄い大気と遠心力を使いながら飛んでいる。空調とブリーフィングの声がよく聞こえる。
目的地は某企業のロケット基地。この企業は惑星封鎖機構の包囲網を潜り抜けてルビコン3の「コーラル」を入手しようと画策している。あたしらは競合社の出鼻をくじきたいライバル企業の協力会社としてここにいる。本名のカーラを隠して朝から晩まで身を粉にして企業様に尽くす目的は何かだって?
――
コーラルを焼く、その前準備だ。
あたしとこいつは秘密結社オーバーシアーの構成員だ。組織はルビコン星系全体を焼いた大災害「アイビスの火」を引き起こしたルビコン調査技研の関係者を中心に、コーラルを手に入れようと画策する企業に隠れて活動している。燃料として消費しても無限に増殖するコーラルを使い、世に広めてしまったあたしらの世代がコーラルを焼き尽くす。災禍を再び起こさず、生き延びた子ども達にこの役目を引き継がせず、星々で生きる無関係な人達を極力巻き込まずにコーラルを根絶やしにする義務がある。
笑える、あたしの人生コーラルまみれじゃないか。端から真っ赤なスパイダーリリーの花畑から出るつもりは毛頭ないけどさ。
「以上でブリーフィングを終了する、総員持ち場につけっ」
椅子をそのままに企業に忠実な奴らは小走りで部屋を出ていく。専用回線で部下たちに指示も飛ばしているだろう。あたしは腕時計型情報端末で人型機動兵器、アーマード・コアで出撃する相棒の完全コピーリアルタイム更新状況と通信中継ドローンの攻撃回避試行訓練の進行を見る。つまらないくらい順調だ。情報表示ゴーグルの片隅にあいつの「いってきます」のメッセージも入っていた。さて、中央指揮室でお祭り騒ぎを見せてもらおう。あいつが返るもう一つの機体の調整は遠隔ロボットでできる。
「カレンさん」
「なんだい?」
後ろから作戦隊長の補佐が声をかけてきた。性別が同じで年が近いこともあって親近感がわくらしい。
「ガレージで相棒さんを待ちませんか?搭乗員管理AIも緊急時に移動しながら思考をするとミスが増えると判断しています」
タブレット型端末を胸に抱えながら見上げてくる。私のゴーグルにも送ってくるしつこさだ。
「係長補佐、分析はありがたいけど、今回もあなたがいる中央指揮室で待たせてもらうよ」
「そうですか」
嘘も方便。協力企業として実績を積んでいるけど艦内全てがこのお嬢ちゃんみたいにあたしらを信頼しているわけじゃない。部外者に渡される情報は奴らにとって都合がいいものだけだ。そもそも中央指揮室の情報は中にいなくても盗み見暗はできる。ただ、ばれた時のメリットはない。ならば人間の心を利用して堂々と盗めばいい。
「一人より心が落ち着くんだ」
「そ、そうなのですねっ」
「端っこ、もらってもいいかい」
「探してきます」
作戦開始のサイレンと放送が鳴り響く艦内へ細い手足を一生懸命振って走っていった。
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